政治家は万能(殿様)ではない・・・原発の安全審査を誠実に | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

政治家は万能(殿様)ではない・・・原発の安全審査を誠実に(3/24)



大飯原発の再開問題は奇々怪々の様相を呈しています。原発賛成の人と反対の人が同じテーブルに着いて議論するためには、手続きが正しくなければなりません。争いが増え、危険が増大するだけです。




まず、第一に日本政府は日本国民に対して「原子力をやる時には「自主民主公開」の原則と、「推進と安全」を別に分ける」を貫くと約束しているのに、経産省(保安院)=推進機構が安全の審査をしていることです。



さらに、本来ならやってはいけないことをしている保安院の一次審査を、安全審査を担当する安全委員会がザッと審査をして、さらに「我々は原発の安全性は審査しない」と公言するなど、あらゆる奇妙なことが起こっています。



さらに、最終的には「安全」を「政府」が「政治判断」すると言う始末です。このような発言を聞きますと、民主党は「民主主義」ではなく「お殿様のいる封建主義」を信じているのは明らかです。



日本国憲法に定められているように、政府というのは国民の厳正は信託をうけている公僕であって、法律で定められている権限委譲にはできません。大統領であれ、首相であれ「全権」を持っているわけではなく「枠内」であることが条件です。



原発の再開という多くの人の命、健康に関係することをいとも簡単に職務範囲を逸脱し、おまけにそれにほとんどの識者が異議を申し立てないというのはなんとも不思議なことです。


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「国民は経済が判らないから、ストレステストで再開する」と言う専門家も封建主義の中に生きているのでしょう。本来、原発の安全性の審査は「ストレス方式」です。つまり、「このようなことが起こったらどうなるか」という審査ですから、もともとストレス方式です。




さらにこのストレステストというのはアメリカやヨーロッパで金融や銀行に対して行われるものですが、サブプライム崩壊やギリシャ危機などが起こっているアメリカやヨーロッパのストレステストは実質的に失敗しており、それを原子力に応用すること自体、奇妙なのです。



英語(ストレス)が出てくるとひれ伏すようでは、地震と津波のないアメリカやヨーロッパとは違う日本独自の安全性を確保することはできません。原子力の原則をすべて破るのですから、経団連なども日本の健全な発展のために長期的視野にたって、政府の行動を批判して欲しいものです。




経済界は電気が欲しいから原発再開に賛成するのが当然だと思われていますが、産業界はこれまで「安全第一」によって発展してきました。だから「原発を再開したいから無理矢理、安全と言う」というのは産業界自体が反対のはずなのです。

(平成24年3月24日)



--------ここから音声内容--------



大飯原発の再開問題が、あの議論されまして、えー、安全委員長が記者会見なんかしてますけども、もう無茶苦茶なような、私は感じますね。えー、原発賛成の人と反対の人がいるのはもう現実ですが、えー、日本のためにはですね、その人たちが同じテーブルに着いて、日本の将来のために知恵を出し合うという必要がありますが、せっかくそういう気持ちになっても手続きが正しくなければダメだ、というふうに思いますね。





まず第一にですね、えー、日本の政府が原子力をやるときにですね、広島・長崎のこともあって、日本は「自主・民主・公開」だと、これを守るということと、「推進と安全」の2つに分けて、えー、原子力を推進する人は安全には口を出さないと、それによって安全を確保するんだということをですね、強く約束しました。





えー、しかし現実には、ずっと今まで違ってきたわけですね。で、保安院の委員長がですね、えー、原子力安全委員会に圧力を掛けるっていうことが具体的に公開されておりますが、過去にですね。そういうことがあって、今度の福島原発の爆発事故があったわけですよ、簡単に言えば。やっぱり日常的にですね、推進派が安全の方に圧力を掛ければですね、安全審査がゆるむのは当然であります。





しかし現在でもですね、経産省、つまり保安院の安全審査をこの使ってるってことですね。これをその、安全委員会がざっと見てですね、「いや、大丈夫じゃないんですか」と。しかもですね、えー、原子力安全委員会が「原発の安全性を審査しない」と公言してるわけですが、これにはまぁ、多くの人がビックリしました。じゃ一体、何で我々は安全を確保してたの?ということになりますね。





それから更に驚くのは、「安全」を「政府」が「政治判断」するということですね。これは全然できないことなわけですよ。民主党っていうのは「民主主義」なはずなんですが、「お殿様のいる封建主義」を好んでるように見えます。えー、つまりですね、民主主義っていうのは日本国憲法で定められてるように、政府は万能じゃないわけですね。





国民の信託を受けている公僕ですから、法律で定めている権限委譲はできないんですよ。大統領であっても首相であっても、「全権」を持ってるわけじゃないんです。「枠内」であるっていうことなんですね。法律の枠内で行動できるってことですね。しかも原発の再開っていうのは多くの人の命、健康に関わることですから、まぁこれを逸脱するのにですね、日本のほとんどの識者が異議を申し立てないっていうのも、非常に奇妙に私には感じられます。





第一ですね、ストレステストっていうのはですね、英語で言ったからみんなが参っちゃったんですけど、大体、原発の審査っていうのはストレス的なんですよ。ていうのは、「こういうことが起こったら」、「津波が来たらこうだ」とかですね、「落雷が来たらどうだ」ってこれ、ストレスなんですね。これでやるわけですね。ですから、元々「ストレス方式」なんですよ。





もう一つはですね、このストレステストっていう概念はですね、アメリカとかヨーロッパで金融の問題とか銀行に対して行ってきたんですね。しかし、現実的にはアメリカでサブプライム崩壊があり、ギリシャ危機なんてことがヨーロッパで起こってるわけですから、ストレステストは実際的に失敗してるわけですよ。この失敗してるやつを原子力に応用するってのはもう、奇妙なわけですね。





えー、ま、日本はですね、地震と津波がある、と。これはアメリカとヨーロッパで全く違う環境で原発を運転してるわけですから、日本独自の安全性の確保をしなければいけない。そのために原子力の原則を守るわけですね。ま、経団連などの機関がですね、原発再開に賛成してる。これはもう、電気が欲しい経団連だから当たり前だというふうに、よくみなさんが思ってます。私は違うと思いますね。





経団連、えー、日本の経済が発展するには、短期的にですね、原発の電気を得るってことじゃないと思いますよ。不安全だったらば、あの…原発を止めて石炭火力をどんどん建設するっていうんでも、経済発展できます。




えー、それからですね。安全か不安全かっていう審査をしっかりやらないといけないというのもですね、えー、経済界としては支持するべきですね。つまり経済界自身がですね、政府に向かって「いや、まぁそう慌てるな」と、「やはり安全性が確保されなければいけない。これは経済界も常に安全第一でやってきたからこそ、現在の繁栄がある」と。ま、経済界としても見識を一つ示してもらいたいと、まぁこういうふうに思います。





私はですね、今、経済界と実業界と関係の無い、ま、評論家的な人がですね、世論を形成するのにあまりにも力があると思います。えー、経済界を始めとしたですね、ビジネスマン、実業界、お医者さん、こういったですね、現場をつかさどってる人がですね、やはり声を上げて安全な原発でなくちゃいけない。





そのためには手続きをきちっとする。先入観を持ってですね、「原発を早く再開したいから、できるだけ安全だと言って、やろう!」なんていうですね、そういう…なんちゅうか、ケチなつったら言葉悪いんですけど、そういうんじゃなくて、もっと日本全体のことを考えてやってもらいたいと私は思います。


(文字起こし by danielle)