嘘の慣性力・・・アメリカはなぜ折り返したのか?
小学館のご厚意で「ガリレオ放談」というシリーズをネット(映像、動画)でやっています。最近のシリーズは「嘘の慣性力」というもので、ニュートンの慣性の法則を社会的なことに適応するとどうなるかという試みです(このブログの下にリンクを張ってあります)。
その第4回目に「アメリカはなぜ西に行くか」というテーマを取り扱っています.慣性力というのは、ものが動くときに「動き始めだけは力が必要」ですが、動き始めると「止めるときだけ力がいる」ということです。
このことは一般的な常識とはかなり違います。普通は「何かやるときには苦労や力がいる」と思っていますが、実は「何かやるとき」という場合、その「何か」が「今までやってきたこと」と「新しいこと」でまったく違い、「今までやってきたこと」をそのままやるには力が要らず、「それを止めて新しいこと」をするときには2倍の力がいるということです。
つまり、「今までやっていたこと」を止めるには「かつて、始めたころ」と同じ力が必要で、しかもそれに加えて新しいことを別に始めるのにまた力がいります。つまり、1+1=2が必要ということです。
これを今の原発に当てはめると、実は「事故が起こっても同じこと(原発再開)をする」には何も力がいらないので、今の政府や日本社会のように力がない社会は「原発が事故が起こってもそれを止める力がない」ということでズルズルと理屈をつけて再開しようとします。
もし、原発を止めて(力=1)、新しい石炭火力をする(力=1)という道を選ぶと2倍の力が必要だからです。原発を止めるには次が必要ですから、反対運動は力が2要りますが、そのまま継続するのは力が0というわけです。
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ところで、今、アメリカが苦しんでいるのは、このことです。アメリカは17世紀にイギリス、スウェーデン、フランスなどから逃れてきた人が作った国ですが、西にある故郷から逃れてきた「その時」にものすごい力を必要としました。なにしろ文明の発達したヨーロッパから未開のアメリカ大陸にわたり、苦心惨憺、国を作ったのですから、初期の人の苦労(力)は並大抵ではありません。
それからというもの、アメリカはこの力を使って「慣性力」でひたすら「西へ西へ」と進みます。それはまるで「逃れてきた故郷から離れたい」という一心とも言えます。1850年にはイギリス、フランス、メキシコと戦ってカリフォルニアまで進出、1900年にはロシアからアラスカを買い、ハワイを力で併合、スペインと戦ってフィリピン、グアムを奪取します。
戦ってとっていくのですから力がいるような感じですが、実は慣性力で西に行っているだけですから、意見はまとまるし、ただ最初の力のままに進んだだけです。その被害を1950年頃に受けたのが、日本、朝鮮、そしてベトナムでした。
太平洋戦争、朝鮮動乱、ベトナム戦争は一つ一つの原因はともかく、単にアメリカという慣性力で起こったものと考えられます。
その後、さらに50年後には、アフガニスタン、パキスタン、イラク、そして今はイランへと侵攻しています。現在のアメリカの苦悩は「これまで何の力もいらない方法=西に行く、ということを続けてきたが気がついてみれば地球が丸いので、逃れようとした故郷に近づいてきた」ということです。
おそらくアメリカはイラクで折り返すでしょう。その先に進むとギリシャやイタリアがあり、それはあまりに故郷に近いからです。でも困ったことがあります。それはすでにアメリカには「慣性力に抗して引き返す力がない」ということです。それをアメリカ自体にはありません。だから、なにか外的な力がそうさせるのでしょう。それはイランかも知れませんし、中国かも知れないのです。
日本政府が原発を続けるかどうか、それは日本に慣性力に抗する力が残っているかどうかにかかっていますが、私はアメリカも日本もすでに慣性力に対抗する力はなく、外部の暴動、戦争などによってその力が最終的に終わると思います。
今、「絆」などと言っている人にはすでに慣性力に抗する十分な力がないことを示しています。
(平成24年3月21日)
--------ここから音声内容--------
えーと「嘘の慣性力」というのをですね、実は「ガリレオ放談」っていう小学館のですねご好意でやっているネットの映像がありまして、ま、そこで、えー進めているわけですね。つまりこれは物理的な法則、例えばニュートンの慣性の法則というのを社会に適用すると、まぁどういうふうになるか…っていう試みなわけですね。ま、ブログの下にリンクが貼ってありますので、ま、そこを見て頂い方がいいんですが、ま、ちょっとですねリンクではなくて、私のブログにもちょっと書きました。
えー今回その4回目ですね。アメリカはなぜ西に行くか、というテーマを取り扱っておりますが、えー、まぁ、慣性力ってのはですね、ニュートンが言ったもので、物が動く時にはその時ものすごく力がいるんです。こう…動き始めるとですね、今度は止めるのに力がいるんであって、動き続けてる時は何も力がいらないっていうわけですね。で、このことは一般的な常識とはかなり違うと私は思うんですね。
っていうのは、普通は何かやる時に苦労があったり力が要ったりするというわけですが、こう、「何かやる時に」の、この「何か」がですね、今までやってきたことをそのままやるっていうのと、新しいことをやるっていうのと全く違ってですね、実は今までやってきたことをやるっていうのは力がいらないんですよ。それをやめて新しいことをする時には二倍の力がいるわけですね。止める力とやる力。
ま、こうなりますんでですね、まぁ、だいたいの人は保守主義になるんですね。保守主義っていうのは慣性力ですからね。慣性保守主義…と言わないで慣性主義といったらいいんでしょうね。そいから革新…つまり新しいことをやる時には二倍の力がいりますけど、エネルギーがいるんですね。ま、ですからまぁだいたい昔から革新的なことってのは若い人がやるんですが、えー、若い人が革新的であるっていうのは、若い人に力があるからなんですね。今みたいに若い人が元気ない時は、若い人は保守的になるっていう…まぁそういうことですね。
で、今の原発にこの問題…原発問題にあてはめますとね、実は事故が起こっても同じこと…つまり原発を再開するとかですね、被曝なんかしてもたいしたことないよっていうのはですね、何も力がいらないんですね。ですから、ずるずるとそっちに行くわけです。えー、今の政府とか日本社会のように、こう…力がない社会はですね、原発が事故が起こっても、ソレを止める力がないわけです。つまり慣性力のまま行ってしまうんですね。
慣性力のまま行ってしまうので、結局原発を再開するっていうことになります。再開するのが一番力がいらないんですね。例えば原発を止めて…ここで力が一つ要りますね。新しい火力発電所を作る…っていうので力が一つ要りますから二倍の力が必要ですね。えー、反対運動が盛り上がらないのはそこにありますね。反対運動やるにも非常に力が要るということで、現在の社会では少し難しい、と。まぁ、こういうことでなかなか面白いなぁと思ってるわけですね。
えー、ところでアメリカも今苦しんでるんですよ。っていうのはですね、アメリカっていうのは17世紀にイギリス、スウェーデン、フランスから逃れて来た人が作った国なんですが、えー、西にある自分の故郷から逃れるっていうのに力を必要としたわけです。ばーんと西の方に行ったんですね。そん時に力がいる。その、槍を投げた…槍投げで槍を投げた瞬間っていうのは、彼らが17世紀にヨーロッパを離れてアメリカ大陸に渡った時なんですよ、実は、ええ。
それで苦心惨澹、国を作ったわけですから、これはもう相当な力を発揮しました。それで一回そういう慣性力がつきましたので、それからアメリカはもう西へ西へと行くんですよ。えー1850年にはですね、えー、最初イギリス、それからフランスと戦い、メキシコと戦って、えー太平洋側のカリフォルニアまで進出します。まぁこれで慣性力が終わらないんですよ、海を前にしても。やっぱりそれ、カリフォルニアで止まるの大変ですからね。止まらないで先に行っちゃうんですね。
で、1900年にはロシアからアラスカを買い、ハワイを力で併合し…ま、だましてですね併合し、スペインと戦ってフィリピンとグァムを奪取します。えーまだそのまま西へ行くんですね。フロンティア、フロンティア。で、これはですね、見かけによると戦って取っていくんですから力が要るように感じられるんですけど、実は単なる慣性力で西に行ってるんですので、意見はまとまるし、最初のこの…えー、東の故郷から西に逃げてきたという力のまま…慣性力のまま進んでるんですね。
そして1950年ごろには日本、朝鮮、ベトナムが被害を受けます。まぁ、とにかくですね、太平洋戦争、朝鮮動乱、ベトナム戦争で、えー、日本と朝鮮とベトナムは大きな被害を受けるんですが、これは単にアメリカの慣性力じゃないかと思うんですね。しかしさらにアフガニスタン、パキスタン、イラク、と。今イランに侵攻しようとしてるわけですね。えー、ところが今アメリカは苦悩しとります。なぜかというと、今までは何の力もいらない方法…つまり慣性力で西に行くということを続けてきたんだけども、気がついてみりゃ地球が丸いので、逃れようとした故郷に近づいてきたっていうことですね。
そうするとアメリカはイラクで折り返さざるを得ないわけですよ。その先にはギリシャとかイタリアがありますから。ま、これはあまりに故郷に近いし、また故郷の元の国みたいなものですからね。で、それで、引き返したいんだけども、今のアメリカにはですね、慣性力に抗して引き返す力が実はないんですよ。どうするか…っていうことですね。これはですね、こういう時…つまり自分自身はもう衰退して慣性力に抗する力がない時は、外的な力が要るわけですから、イランが爆発するか中国が爆発するかなんかしてですね、そしてアメリカを押し返さなきゃいけない。そこで初めてアメリカは西に行くという慣性力を失うわけですね。
えー、日本の原発が続けるかどうか…これは日本に慣性力に抗する力が残ってたら、原発をやらないでしょうね。えー、まぁ、それがあります。ところがアメリカも日本もですね、すでに慣性力に対抗する力がなければ、外部の戦争だとか暴動だとか、ま、そういった、まったく別種の力で、ま、最終的に慣性が終わると思うんですね。たとえば「絆」などと言っている人はですね、私は、もう慣性力だけで動いている人なんですよ。もうあの…年取ったり、力失ったり、気力なくなったりしましてね、今までやってることをそのままやるのが自分としては楽だ、後はもう屁理屈つけるだけ、と。私にはそう見えます。