考える練習(5) 節水は良いことか?・・・環境を題材に | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

考える練習(5) 節水は良いことか?・・・環境を題材に(3/11)



「節電は良いことか?」と似ていますが、「節水は良いことか?」も頭の体操として取り上げてみたいと思います. 一口に「水」といっても「海水」と「淡水」がありますが、地球上は「海水」が圧倒的に多く、それを太陽のエネルギーで蒸発させて淡水にしたものが川や湖の水で、人間に特別に役に立ちます。



日本列島は自然に恵まれていて、降水量もその一つで年間6500億立方メートル。これは世界平均の約2倍、つまりかなりの水資源を持っているということになります。一度、地上に降った後、また蒸発するのが2300億m3ですから、およそ4000億m3が「使える水(淡水)」です。



淡水の内訳は、農業・漁業に600億m3、工業用水に150m3、そして民間の水が150m3でおよそ900億m3が有効に使用されています。つまり、淡水の利用率はわずか22%程度ということです。かつて、川は主要な交通手段でしたから「淡水の利用」ということばかりではなく、「流れる水としての用途」がありましたが、今ではむしろ洪水などの原因になっても流れる水として生活に役立つことは少なくなってきました。



このことを「日本の資源」ということで考えてみましょう。 「日本には資源がない」と言いますが、それは「石油、石炭、鉄鉱石」のような工業資源の一部だけを取り上げているであって、「太陽、海流、空気、水、石灰石、砂利、森林」などの資源を加えれば日本は決して資源が無い国ではありません。



ただし、文科省が作っている教科書は資源について狭い見方(みんなが口にしていることをそのまま)で書かれているので、「日本には資源がない」とされていて、多くの子供たちもそのように錯覚しています。



この錯覚は何をもたらしているかというと、たとえば水ですと「節水」ということになります。日本ではせっかく利用できる水の4分の1ほどしか利用していないのですから、「節水」とは「水をムダに海に流すこと」を意味しています。



つまり、(奇妙な結論ですが)日本では「せっかく山に降った淡水の多くを利用せずに、ムダに海に流して塩水と混ぜている」と言っても良いですし、淡水を作るには太陽のエネルギーを使っていますので、「水を作り出した太陽のエネルギーをムダにしている」ということもできます。



100%利用することは無理にしても、50%ぐらいは利用したいものです。そのためには「官がやっている水道事業を民に移して効率よくして、水の使用料金を2分の1にする」というところから始めるのが良いでしょう。



日本の電気料金がアメリカの2倍であることで判るように、官・独占がやると民が行う場合の2倍は経費がかかります。「民がやると衛生が心配だ」という人もいるでしょうが、食品でもなんでも民がやっても規制がしっかりしていれば衛生的な問題はありません。むしろすでにペットボトルなどすべて民がやっているのですから、水道も同じです。今ではむしろ「水道の水は危険だから、ペットボトルの水を飲む」という時代でもあります。


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今回のブログは「考える練習」ですから、結論を得たいということではありません。「水は大切なもの。節水(使わない)」というのはどのような前提ででてきたのか? まだ工業化されていない社会で貯水池を作ることができなかった時代のことを引きずっているのではないか? 川の上流により水を有効に使える施設を作って日本の資源を有効に使うことはできないか? など「節約」が見当外れになっていないかを考えるのも大切です。

このような問題は、先入観の少ない子供に課題を出して、いろいろ考えさせることによって、未来の日本の環境をさらに深く考える集団が生まれるでしょう。


(平成24年3月11日)


--------ここから音声内容--------


えー、重苦しい日も続いていますので、えー、ま、ちょっと軽い話を一つだけさせていただきたいと思いますが、えー「節水は良いことか?」と。えーとですね、みなさんもちろん節水にいそしんでおられると思うんですね。ま、お金が…水道代が高いからってのが、まぁ、これあって、この問題、あとに話しますが、節水ってほんとにいんだろうかな、と、私なんか思いますね。っていうのはですね、水っていうのは海水…塩分を含む海水と淡水があってですね、まぁ地球上は海水が非常に多いもんですから、ま、海水はですね、比較的得やすいんですけど、えー、海水を太陽のエネルギーで蒸発させて淡水にしたものが、ま、水…山に降って、川とか湖の淡水になって、これは非常に人間に役立つわけですね。ちょっと塩水飲みにくいということで。




でまぁ日本列島は非常に自然に恵まれていましてですね、ま、降水量非常に多いわけですね。ま、年間に6500億立方メートルと言われております。これは一人平均、世界の二倍、えーつまり面積平均で一人(あたり)世界の二倍ですね。えー、つまりかなりの水資源を持っているということになります。あー、で、一度降ってもですね、ま、蒸発してしまうのが、その2300億あるわけです。これはまぁ大切なことで、地面を冷やす…熱循環ですね、ま、これに使われるわけですからものすごくいいんですが、およそ4000億立方メートルが、まぁ使える水…まぁ淡水なわけですね。






えーそうしますとですね、そのうちですね、えーと漁業に600億、工業用水が150、それから民間の水が…水道とかそういうのが150、おおよそそんな感じなんですね。まあそうしますと900億立米(りゅうべい)、つまりだいたい利用率22%…1/4っちゅうか、まあそんなもんなんですね。





昔は川っていうのはかなり交通手段として重要なんで、まぁ川も淡水とはいえ、まぁ川は流れるわけですから、淡水になってしまうんですが、えー、「流れる水」としての用途ってのがあるわけですが、今、川はほとんど使っておりませんので、まぁその意味ではですね、えーすごく利用率が減ったっていうことですね。





で、実はですね、あの、教科書が悪いんですよ。あの日本の教科書を見ますとね、「日本には資源がない」と書いてあるんです。その資源っていうのは石油、石炭、鉄鉱石のような、まぁ工業資源のうちのごく一部なんですね。で、太陽とか海流とか空気、水、石灰石、砂利、まぁこういったですね、まあ森林なんかもそうですが、そういうその日本にですね、あの、多い資源てのをほとんど書いてないんですよ。つまり、日本はけっこう資源が多いんですが、日本にない資源だけを書くという…まぁ日本人的な教科書なんですね。






まぁこれ文科省だからまぁしょうがないんですけど、非常に狭い見方、つまりみんなが口にしていることをそのまま書くという、そういうその変なことがあるわけですね。で、多くの子供たちもそう思い…私なんかも実はそう思ってたんですね。で、この錯覚はですね、実は節水に繋がる。節水に繋がるから水の1/4しか使わない。そして、せっかく山に降った淡水、価値のある淡水をほとんど利用せずに無駄に海に流して塩水と混ぜいる、と。






で、まぁ逆の言い方しますと、太陽エネルギーの利用に熱心な人もいますが、水を…淡水を作り出した太陽のエネルギーを無駄にしているということもできるわけですね。ま、100%利用するというのは難しいんで、せめて50%くらい利用するかですね、もしくは水を積極的に利用しようという、そういう話ぐらいはなりたいわけですけども。






その一番の障害は水道事業を官がやってるからなんですね。それで、えーと、それが一番問題で、えー、もしも民がやればですね水道料金が1/2になりますから今の倍使えますんで、だいたいまぁ50%くらいの利用率になるってんですね。これは日本の電気料金がアメリカの二倍であることからわかるようにですね、官とか独占ですね…がやるのと、民で競争力がある場合と、二倍経費がかかるわけですよ。






「民がやると衛生が心配だ」って、またこれね、日本の電力の安定性なんかと同じように言うんですけど、んなことありません。食品でもなんでも民がやってますし、ペットボトルの水なんか全部民なんですからね。むしろ水道が危険だからペットボトルを飲むってわけですからね。ま、そこんところをよく考えなきゃいけないっていうことですね。






まぁ、もっとも今度のこのブログは考える練習ですから、まぁ、結論を得たいわけじゃないんですが、「水は大切なものだ」ってのはいいんですけど、「水は大切なものだから節水する」 「使わない」っていうのはどういうことなんでしょうかね。あのー、それ、つじつま合ってますかね。私はなんかつじつま合ってないような気がします。えー、まだ工業化されてない社会では、たぶん貯水池を作るのが難しいので、えー、水が大切だったと思うんですね。まー渇水になってしまうとか、日照りが続くとか。ところが最近ではですね、大規模なダムぐらい、いくらでもできます。







まー、僕なんか見ると、太陽電池はあまり好きじゃないんですけども。太陽光発電…太陽光発電のパネル貼るくらいだったらですね、貯水池を作ったら眺めもいいですしね、洪水も減りますしいいような気がするんですが、まー、どうでしょうかね。






ま、このような問題はですね、あの、おそらく大人が考えることもいいんですけども、小学校なんかで子供に課題を出してですね、事実をそのまま言って、そして「水はどうしたらいいんでしょうか」っていうようなことで考えさせますとね、えー、我々はほんとに高度成長(期)の時に成長したりなんかしましたから、非常に考えが狭いんですけど、私たちの子孫は、やっぱり広い考えを持った人を作りたいという点ではですね、ま、こういった問題を積極的に小学校の先生なんかが出して頂くと、まぁ、いいかなーというふうに思います。