専門職が立ち上がって欲しい(1) 医学の良心と医師の倫理 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

専門職が立ち上がって欲しい(1) 医学の良心と医師の倫理 (3/5)



(まだ子供の被曝が止まりません。場所、焼却、セシウム再飛散、給食、先生の態度などいろいろあり、事態は複雑になっています。そこで、少し厳しい内容を含みますが、各専門家の方に私の見解を示して、子供の被曝を減らすのに是非、ご協力いただきたいと思うからです。)


福島県の医師ばかりではなく、日本の多くの医師が福島の子供36万人の甲状腺の超音波検査を担当しています。もともと、医師は普段からものすごく忙しく、労働基準法違反ではないかというぐらいに働いて患者さんの命を守っています。そのなかでさらに福島の協力をするのだから、それは本当に大変なことと思います。


さらに日常的に患者さんから被曝について相談されるので、医師は個別に説明しています。給食などからの被曝についてもできるだけ被曝を防ごうとアドバイスをしているのも医師です。


一部の医師が「国際的な勧告や法律で定めた基準など関係ない。1年100ミリまで大丈夫」などと言っていますが、このように被曝を減らすことに尽力している医師がほとんどであることもまた事実です。


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このブログで私は「医師は国民の健康に関することについて、自由に発言することは許されない。医師という専門職は社会の合意を大切にしないと、医師に対する信頼性を失う」と再々、指摘してきました。特に1年1ミリと決まっている被曝限度を医師の判断で「法律違反するように」指導することは許されないと言ってきました。


これに対して多くの医師は賛同してくれましたが、「医師に辛すぎる」とのご批判もいただいています。ただ、私の子供も兄も、また甥も医師で私の身の回りには医師が多いので、医師の仕事の厳しさなどはよく知っています。でも、私のような教師、医師はやはり自らの限界を良く理解して決して社会から糾弾されるようなことをしてはいけないのです。


裁判官は人の命を左右し、医師は人の体を左右し、そして教師は人の魂を左右することがあるからです。その意味で、これらの職を持つ人は日本社会に残された「専門的な雰囲気を持った聖職」であることは間違いありません。


医療関係では医師は患者さんの被曝の限度を自分で決めてきました。それが少しルーズだったのではないでしょうか。それも含めて見解を示したいと思います。


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福島第一原発事故で、一部の医師が「被曝は危険では無い」と言ったことで、チェルノブイリでも実施した「国家のバスによる緊急避難」や「1年5ミリシーベルト以上になる地域の強制移住」などがされませんでした。


それなのに、福島36万人の子供の健康診断や、福島医大に被曝の特別治療部隊をそろえるなど、「安全だけれど危険」、「避難は不要だが、診察や治療は必要」というスタンスをとっています。


これはきわめて分かりにくく、「安全だ」といって避難させず、「患者を大量にでるのを期待している」と見えます。さらに「被曝を心配するよりストレスの方が影響が多い」ということで、「被曝させてストレスをため、さらに心理治療のチームを送る」というマッチポンプとも言うべき状態が発生しています。


医師が「レントゲンはとらないに超したことはない」という指導をしてきて、法律で「1年1ミリ」と決まっているのに、「1年400回の胸のレントゲンに相当する1年20ミリの新基準」を支持して「不安になる方が危険」というのもあまりに身勝手です。


今からでも遅くないので、医師会は「法律を早急に変えるべきという声明」と、病院のレントゲン室の標識と防護(管理区域の標識やレントゲン照射中に医師が別室にいるシステム)などを変更し、言っていることとやっていることの統一をとらなければならないと思います。


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私は逆の方向に進むべきと考えます。医師は「集団の健康維持のための予防原則」をよく勉強し、「科学的に不明な場合は、十分に安全な基準を守り、科学的に明らかになった時点で規制をゆるめる」というこれまでの人類の知恵を理解した言動に出てもらいたいと思います。


同時に、福島原発関係で「1年1ミリ以上の被曝は問題がない」という趣旨の発言をした医師は、自ら非を認めて引退してください。福島医大は放射線関係の組織を解散してください。医師が自らの意思で判断できるのは医療行為に関わる被曝に関してだけで、原発からの被曝については医師はその権限外にあるからです。


医師の倫理を破っているのは少数の医師であることは確かですが、医師は専門家集団を形成していることによって職を全うしているのですから、このような危機のときに集団としての力を発揮してください。



(平成24年3月5日)



--------ここから音声内容--------



ええと、ここ何回かですね、あの専門家に対して、少し私の見解を述べたいと思うんですが。少し厳しい内容も含んでるんですが、ま、えー、被曝する場所ですね、そいから、ま、焼却の問題、それからセシウムが再飛散してる問題、給食の問題、ま、教育現場における先生の態度の問題、と色々ありましてですね。この原発の問題の広がりは非常に深いんですね。ですからこれはね、早く無くしてしまったほうが良いんですよ。それは当たり前なんですけどね。







えー、それで私は早く無くしたいと、この子供の被曝を早く無くしたいということで、各専門家の方に私の見解をここで示しまして、ぜひご協力いただきたいと、ま、そういう意味ですね。決して批判するわけではありません。しかし、事態を改善するためには、まず批判から入らなきゃいけないので、ま、やります。









今度は第一番目、私このブログで何回か取り上げた医師の問題ですね。この医師というのは非常に大きな力を持ってます。そこで協力をお願いしたいということなんですが。現在ですね、福島の医師ばかりでなくて、全国の多くの医師がですね、福島の子供36万人という数の甲状腺の超音波検査をしてるわけですね。










元々、医師っていうのは非常に忙しい職業で、ま、労働基準法違反じゃないかと思うぐらい、夜も働くという医師が多いわけです。それに加えて、その福島の協力をするんですから、まぁ大変なことだ、と。それからもちろん、皆さんちょっと病気になったら医師に相談するし、医師としては個別の相談にアドバイスに応じなきゃいけない。一部の医師はですね、「(そ)んなの大丈夫ですよ」つって相談にも乗らない人もいますけど、多くの医師はですね、真面目に対応してるわけですね。









しかしですね、やはり一部のお医者さん、これはもう何十万人のお医者さんの一人か二人かもしれませんが、「国際的な勧告や法律で定めた基準なんかないよ」と、「1年100ミリまで大丈夫」なんて言ってる人もいるわけで。片や、被曝を減らそうと尽力している医者が多いということも事実であります。









ところで、こういった現実を良く判ったと、いうふうに思っていただいてですね、しかも私はこのブログで、「医師は国民の健康に関することについてですね、自由に発言しちゃいけないんだ」と。「医師という専門職は社会の合意を大切にしないとですね、信頼性を失うんだ」というふうに再々、指摘してきました。つまり1年に1ミリと決まってる被曝限度をですね、医師の判断で独自に、「法律違反してもいいよ」というふうに指導することは許されないんだ、ってことを言ってきました。









えー、これに対してまぁ多くの医師はですね、いろんな私のメールで賛成をしてくれましたけど、「医師に辛(から)すぎる」というご批判も頂いてます。しかし私はですね、自分のこと言うわけじゃないですが、私の子供も兄も、また甥もですね、医者で、私の身の回りにはお医者さんが多いんでありますが。そして、その人たちの仕事の厳しさっていうのは、良く知っております。しかし私も教師でありますが、医師とか教師はですね、やはり自らの限界をよく理解して、社会から糾弾されないようにしなきゃいけない。








なぜか?裁判官は死刑判決によって人の命を左右し、医師は人の体を左右し、そして私たち教師は人の魂を左右することがあるわけですね。その意味から、こういった職を持つ人はですね、今の日本に残されている非常にあの、「専門的な雰囲気を持った聖職」なんです。やっぱり、あの聖職という言葉を嫌う人あるかと思いますが、私は聖職だと思ってるんですね。えー、普通の職業では、人の命だとか人の身体だとか、人の魂に触れることはありませんが、我々はそれに触れるが故にですね、やっぱり行動は慎重でなければいけないと思ってるわけですね。








えー、福島第一原発(事故)で、一部の医師が「被曝は危険ではない」と言ったことで、結局何が起こったかったら、チェルノブイリのソ連でもやった、国家のバスを動員した緊急避難とかですね、1年5ミリシーベルト以上になる地域の強制移住がされなかったわけですよ、現実的に。これね、福島のお医者さんたちがですね、「危ない、危ない!」って言ってくれれば、おそらく国家はバスを出し、それから1年5ミリシーベルト以上のところの、ま、少なくとも子供たちは強制移住したと思います。








ところがその反面ですね、まずいのはですね、36万人の子供の健康診断をしてるってことなんですよ。これはね、危険だからしてるんですよ。お医者さんが拒否したらいいんですからね、「いや、そんなことする必要ありませんよ」と。いや、医者は健康診断のことで全権もってんですから(拒否をすればいい)。それから福島医大に特別の、被曝の特別チームができましたけど、これおかしいわけですよ。ていうのは、医師は片方で「安全だ」って言っていながら「危険である」、「避難は要らないけども、治療が必要だ」って言うんですからね。避難が不要なら、治療は不要なんですよ。








これはね、非常に分かりにくいんです。それで、こういうふうになる可能性があるわけですね。「安全だ」と言って避難させずに、「被曝した患者が大量に出るのを期待してる」と見えるんですよ。お医者さんはそういう気持ちじゃないかもしれませんよ。更に、「被曝を心配をするより、ストレスの方が影響が大きい」と言うわけですから、「被曝させてストレスを溜めて、更に心理治療チームを送る」という、こうなると完全にマッチポンプになっちゃうんですよ。








お医者さんがですね、「これまでレントゲンを撮らないに越したことない」という指導してきたし、ね、その上から言えばですね、「1年に400回の胸のレントゲン」というのは、ちょっと過酷ですよ。過酷っちゅうか、不安になるのは当然で、「それでストレスなっちゃってもいけない」って言ってもね、まずいわけですね。医師会はですね、法律を早急に変えるべきだという、ま、もしかしたら声明を出すのか、それともですね、病院のレントゲン室の標識と防護を外してですね、今日から。そして、被曝は大したことないっていう態度をハッキリ示すか、あの…そうしないとですね、自ら矛盾したことをやってることになってしまうわけですね。








私はね、もちろん逆の方向に進むべきだと思います。この際、医師会および医師はですね、日本人の「集団の健康維持のための予防原則」と…まぁいうものをもっと勉強されてですね、「科学的に不明な場合は、十分に安全な方の基準を守り、科学的に明らかになった時点で規制をゆるめる」という、これまでの人類の知恵を理解した行動に出てもらいたい、ぜひそう思います。








そして、ただちにですね、福島原発関係で「1年1ミリ以上の被曝は問題無い」という趣旨の発言をした医師はですね、自らの非を認めて引退をお願いしたいと思います。福島医大は、放射線関係の組織を解散してください。医師がですね、自らの意思で判断できるのは医療行為に関わる被曝だけでですね、原発からの被曝については医師はですね、その権限外にあるからなんですよ。治療は医師の専門事項ですが、どのくらいまで被曝していいか、原発の爆発によったら被曝は1年何ミリまで認められるのかは、医師には権限が一切ありません。医師は、万能じゃありません。私たち教師も万能じゃありません。









私がですね、全く別のことを考えて、物理的に決まってることですね、ま、例えば「地球は太陽の周りを回ってる」というふうに、ま、普通にはなってるわけですが。「いや、地球は宇宙の中心にあり、ね、こうだ、こうだ」というふうに、私が学生に教えちゃいけないんですよ。なぜいけないかって言ったら、自分がどう考えてようと、医師とか教師とか裁判官っていうのは、行動に制限があるんです、ええ。1年1ミリという法律を知らなかったのかもしれません、お医者さんが。だけど今もう知った限りはですね、やっぱり今まで言ったことを撤回して欲しい、その勇気を持って欲しいですね。








医師がなぜ、人の体を傷つけられるのか?、これは社会的合意があるからなんですよ。ま、医師免許っていうのは単に社会的合意を、国が代わりに代行してるに過ぎませんからね。ま、この医師がですね、社会から尊敬を受けた存在でいてほしいと私は思うんですよ。そうしないと、私たちが病院に行ってですね、勝手な治療を受けるってことなるんです。えー、ある医者んとこ行ったら、レントゲンは一回かぐらいで終わってくれるけども、ある医者んとこ行ったら、何回、何十回でも撮られるって危険性が生じてるわけです、今、現実に。








これはね、医者っていうのは、あの、そこんとこきっちりしてくれてですね、社会との合意をしっかりと守ってくれると、そういうことが、信頼性があるからこそ、我々は今まで安心して病院にかかったわけですから。もう、このことをもう一回思い出して、お医者さんは影響力高いんですよ。裁判官、お医者さん、教師、この辺はね、非常に影響力が高いんです。








それだけにですね、法律を守る、自分たちの行動の限界はどこかってことをハッキリ知ってですね、現にお医者さんの発言のために、福島の子供たちがずいぶん大量の被曝をして、不安におののいて、36万人の人の甲状腺の健康診断をせざるを得ない状態にある。これを一刻も早く改善してもらいたいと思います。


(文字起こし by danielle)