情報短信 原発再開・・・同じ不真面目さ | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

情報短信 原発再開・・・同じ不真面目さ



今回の福島原発事故は、これまでの原子力の安全についての政府と電力、それにマスコミの「不真面目さ」に原因しています。そしてそれが結局事故に繋がり、多くの人を苦しめています。


でも、まだ同じことが行われていて、地震も津波もなく、ほとんどが内陸にあって淡水で冷却している原発の「ストレステスト」というのを急に出してきて、それも安全審査は推進側と独立した安全委員会がやるのに、経産省の「保安院」と名前をつけた隠れ蓑でやるなど、不真面目さが目立ちます。


さらに、本日の朝日新聞には「原発防潮堤 整備進まず」という大見出しの記事が1面トップにでましたので、多くの方が見られたと思います。


お手伝いさんたちのブログ 大新聞のトップにしては実に不見識な記事で、もともと上の写真にあるように福島原発事故は「5.7メートルの防潮堤に15メートルの津波がきて、原子炉を襲った」ということに「形式的」になっているだけで、本当は、下の写真で判るように、津波は原子炉建屋の前にあるタービン建屋(高さ37メートル、標高6メートル)で完全に止まっていて、建物の隙間からわずかに原子炉の方にいった流れと、原発の南側の防潮堤の無いところから進入した海水が原子炉の後ろから回り込んだもので浸水して爆発したのです。



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つまり、「津波で破壊した」のではなく「浸水で電源が止まり、破壊した」のですから、原因を科学的に判断すれば防潮堤を高くしても安全にならないのは小学生でも判断できることです。


原発の関係者は「とにかく再開する」というのではなく、今回の事故を職業倫理として深く反省し、真なる原因を突き止め、それを改善して、正直に国民に説明し、同意を得て進めないと、さらに混乱が続くでしょう。真面目にやって欲しいものです。


しかし、政府も専門家もマスコミもないも同然なのですから、私たち自身が再開の意見交換会に出て行って、「防潮堤は関係ない」ことを表明しなければならないでしょう。


(平成24年2月23日)


--------ここから音声内容--------

ええと、今日たまたま朝日新聞を読んでおりましたらですね、2月22日ですけども、ええと一面のトップにですね、「原発防潮堤整備進まず」ということでですね、ええ、原発の再開にあたって防潮堤を高くすることが大切だ、ということを前提とした記事が一面トップに大きく出てましたですね。






この問題はですね、本当にあの…私が今まで経験したこと、つまり原子力の安全について本当に政府も電力(会社)もマスコミもですね、不真面目なんですよね。不真面目ってのはですね、もうほんとにこう…まあ、大学とか高校の授業だったら当然このくらいのレベルはいくようなですね、非常に簡単なことも議論されない、つまりそういうことを議論するともう原発が推進できないからっていった間違ったことでですね進んでるわけですね。






それはまあもちろんストレステストっていう、なんだか突然ですね…地震もない・津波もない・ほとんどの原発が内陸にあって、淡水で冷却していることを前提とした、まあヨーロッパ製のものを突然出してきて、それのストレステストをやるっていうのも、日本ではですね、政府が国民に対して、ええ…原発の安全は推進側と独立した「安全委員会」がやる、と決まっているのに、推進側の経産省の「保安院」と名づけた所…この保安院と名づけてるのはですね、これ隠れ蓑なんですよね。






ええ、つまり推進側に保安院と名前のついたものを作ってですね、何かそこが安全をチェックしているような名前にしたってことなんですね。これもほんと不真面目なんです。まあマスコミもやはりもう少し踏み込んでですね、ええ…基本的な政府のそういう不真面目さを追及するようなことで、言論の存在価値というのを示してほしいですね。







まあ、あらためてここに一度示しました写真を示しますが、福島原発には5,7メートルの防潮堤があり、そこを15メートルの津波が来て原子炉を襲ったというのが形式的にそうなっているわけですね。しかし科学はですね、そんな形式をゆったってダメなんですよね。下の写真でわかるように、津波は原子炉建屋の前にあるタービン建屋…ま、これは標高と高さで(あわせて)43メートルあるわけですが、これで完全に(津波が)止まっているわけです。まあ津波の…わずかに隙間から漏れたり、原発の南にはですね防潮堤のないところがありますからゼロメートル、そっから侵入したものが後ろから回ったりしまして、結局浸水して爆発したわけですね。






ですから津波の…津波で爆発したわけじゃないんで、水が来たらダメなわけなんですね。地下に電源があるというところに基本的な問題点があるわけですね。だからそれをどうするかっていうんじゃないと、防潮堤を高くしたからって…。私よく言うんですけど、玄関の鍵はかかっていたけれども、ええ…その玄関の鍵は今度タービン建屋になるわけですけどね、それで「(鍵は)かかってたけども、勝手口の鍵が開いていたので、そっから入った」…と言う泥棒が入ったのに、また玄関の鍵を二つにしようという議論をしているという…まあそういったレベルではですね、やはり原子力というむつかしいものの安全は守れないわけですね。






そういう意味で私はですね、原発の関係者はどうしたのかな…と思いますね。原発の関係者ってのは原子力を愛しているはずなわけですね。「しん(進or信)」原発のはずなんですよ。ってことは、原子力はもう安全に運転しなきゃですね、僕はダメなものになるわけですからね。だからこれは反原発であれ、「しん」原発であれ、まあ僕みたいに反被曝であれ、立場は同じなんですよ。原発を運転するには安全に運転しなきゃなんない。で、それを確認した後、もし思想的にそれでも原発をやめるという人もいるかもしれませんけどね。まあ本当にまじめにやってほしいと念願するところであります。