「ストレステスト」の保安院の審議は法律違反 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

「ストレステスト」の保安院の審議は法律違反 (2/8)



大飯原発3号機と4号機の再開のために経産省の原子力保安院というところが、「ストレステスト」をして「安全を審議した」とニュースは伝えています。伝える方も問題だが、政府も政府です。


日本は原子力基本法の成立と原子力政策を作るときに、「日本は被爆国であり、原子力の安全を保つために、原発を推進する方が安全を審査してはいけない」としている。つまり、原発推進は原子力委員会と経産省が行い、それとまったく違う組織(原子力安全委員会)で安全を審査することになっています。


安全の審査を独立の機関でしないと安全は保てない・・・これは原子力というものを日本でやるときに政府が国民に約束したことです。でも、現実的には保安院というのが経産省にでき、約束を実質的に反故にしてその結果として福島原発事故がおこったにも関わらず、またそれを繰り返しています。


それに加えて、ストレステストというテストは地震も津波もなく、ほとんどの原発が内陸の川で冷却しているというヨーロッパで使用されているもので、その点でも日本で無批判に使えるようなものではありません。


でも、もっと基本的なこと、原子力の安全を保つためには、原子力を現実にやっている人が絶対に安全を審査してはいけないという基本方針がこれほど無視されていても、それを政府も、専門家も、報道もなにも言わない社会は気持ちが悪いほどです。


(平成24年2月8日)


--------ここから音声内容--------


えー、先ほどテレビを見ておりましたらですね、大飯原発の3号機と4号機の再開にですね、経産省の原子力保安院というところがですね、「ストレステスト」をして、「安全を審議した」ということをニュースが伝えておりました。私はこのニュースを見てですね、ま、伝える方のマスコミも問題だし、政府も政府だなぁと、非常にこう…違和感を覚えましてね。




と言うのは、日本はですね。原子力基本法を成立させ、原子力政策の基本を作るときにですね、「日本は被曝国で、特に原子力の安全を保たなきゃいけないから、原子力を推進をする方は、安全の審査をしてはいけない」という、大きな原則を決めたわけです。つまり、原子力の推進はですね、原子力委員会と経産省とか、まぁ厚生省なんかもそうですが、そういうとこがやってですね、その安全を審査するのは全く違う組織、すなわち原子力安全委員会が独立して審査するってことになってるんですよ。





これはですね、安全の審査を独立の機関でしないと、安全を保てないんだと、やっぱり「まぁまぁ、なぁなぁ」になるんだということでですね、決めた基本原則で、これは政府が国民に約束をしました。ところが、2001年に保安院っていうのができて…経産省にですね、その約束を実質的に反故にして、まぁ今度の耐震性の問題だとか、耐津波性の問題だとか、もともと原発を海岸線に造る問題だとか、ま、いろんなことでなしくずしになって、その結果として福島原発事故は起こってるわけです。





つまり、福島原発(事故)の原因はですね、「ストレステスト」をやらなかったからっていうんじゃなくて、本来、安全審査をしてはいけない保安院…“保安院”って名前を付けてるのがまた、トリックなんですけどね。「原発推進院」と付けないけないんですけども…推進する機関ですからね。原発を推進する機関が、原発の保安院という名前を付けて、そこが安全審査をするっていうこと自身が違法なんですよ、これ。





もちろんストレステストはですね、地震も津波もなく、内陸に作られているヨーロッパで使用されてきたもんですからその点でも、もちろん地震があり津波があり、海水で冷やしてるという日本の原発には、まぁかなり慎重に構えなきゃいけないんですけども。





私はですね、ニュースを聞いてて、ニュースん中で一個も言わないんですよ。「本来、原子力の安全を保つためには、経産省の役所が安全審査してはいけないということに対して、政府はどういう立場で臨むのか」、ぐらいのコメントはですね、絶対必要ですね。と言うのは、何かニュースを見てますとね、日本は原子力の安全審査を保安院がやっていいようなことを前提に報道してるんですね。私はこれほど法治国家でありながら、もしくは政治というのがですね、その政治家の口から出たことが真義であると。ほんとの誠実なことでなくてはいけない、ということに対して、これほどにも原則が無視される社会っていうのはですね、非常に気持ち悪く思いました。





ぜひですね、専門家の皆さん。原子力の安全を保って、原子力の発展を望んでる人も含めましてね、やっぱりあなたは、原子力の安全は独立の機関で審査しなきゃいけないと思ってたのか?…私思ってました。そういうふうに、こう教育されましたしね。思ってたのか? それとも、それはウソだったのか?やっぱり態度もハッキリして、きちっとしたコメントをしてほしいもんだと思いますし、ま、マスコミはあまり勉強されてないんだと思いますが、原子力の安全を保つための審査は、原子力保安院で行なうのは実質的に違法である、と。従って、それは必ず言わなきゃいけないし、ストレステストを保安院がやったってことを、ニュースとして伝える価値の無いもんだということをですね、ここでしっかりと言ってほしいと、そういうふうに思います。


(文字起こし by danielle)