2011現代環境論本論4. (挿入編)節電は意味があるか?(12/19) | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

2011現代環境論本論4. (挿入編)節電は意味があるか?(12/19)


さて、時代をおって環境を語ろうとしているのですが、最終的にどんなことを問題にしたいかの一例として「節電」を取り上げます。日本人1.5キロワット、アメリカ人3キロワット。電力費日本16円、アメリカ8円。

(平成23年12月19日(月))


--------ここから音声内容--------



ええと、あの、「節電は良いことである」と、日本人は全員がそう考えてるんですね。全員と言ったらなんですが、ほとんどの人が「何で節電が良いことなんですか?」とこう聞きますとね、色々なお答えが返ってきます。ええと、「節約することは良いことなんだ」という答えもありますし、また、「石油が無くなるからだ」とかですね、「浪費はいけないからだ」とかですね、「地球が温暖化するからだ」と、まぁ色々ありますね。




しかしですね、こういう質問をしてみたらどうでしょうか?「アメリカ人は、日本人の倍使ってます」と、「日本人1人当たり1.5キロワットなんですが、アメリカ人は3キロワットなんです」と。「日本は電気代がキロワットアワー(kWh)あたり16円なんですが、アメリカはその半分の8円なんです」と。




「安い電気を使って、1ヶ月に8000円ぐらい払って、日本人はアメリカ人の半分なんですが、それはいいんでしょうか?」と、こう聞きますとですね、「それはアメリカ人が間違ってるんです」という答えもあるんですね。「アメリカがそんなふうに使うからいけないんです」と。




ええと、それはそれで、まぁ納得したとしましょう。それではですね、世界では日本は、人口では50分の1ぐらいの国であり、アメリカよりかずっと小さいんですね。で、もちろん電気を2倍使うということと、電気を半分ということを考えますとね、やっぱり電気を多く使った方が、まぁ楽な生活はできるでしょうね。いいかどうか、ちょっと別ですよ。そしたらアメリカ人が、まぁ8億キロワットなんですが、ものすごく膨大な電気を使って、そのために石油・石炭をボンボン燃やしてるんですが。何で日本人だけが、我慢しなきゃいけないんでしょうかね?





ええと、電力費は日本の方が倍高いんで、産業もですね、日本になかなか居れないということで、外国に出てってしまう。残された日本はですね、就職はできないし、電気は高いし、節電しろと言われて暗い生活をする、と。一方、アメリカはなんか知らないんですけど、電気は安いし、日本人の倍使ってる、と。これを道徳論だけでいいんでしょうかね?そいから、道徳っていうのは、そんなにもはっきりしたもんなんでしょうか?




私、このシリーズで、色々なことをお話しするんですが、アメリカ人の方が日本人よりか優秀だから、優れた人間だから、電気を倍使っていいのか? それともアメリカ人は馬鹿だから、倍使うのか? 日本人は世界の全員に対して、我慢しなきゃいけないのか? なぜ日本人だけが我慢しなきゃいけないのか? 





節電をしなきゃいけないって言うのは、電力会社が原子力発電所をやり、その安全を怠って事故を起こしたからじゃないのか? だったら別に、火力発電所をすぐ造ったりですね、自家発電所を動かしたりすれば、電力は足りるんですからね、今でも。別に節電しなくても。何で節電するんでしょうかね?






この前、ある名古屋のところで講演しましたら、ものすごく会場が寒いんですよ。それで結局ですね、途中でおばあちゃんとおじいちゃんが、耐えられなくなって退席しましたね、可哀相に。ほんとはそのおじいちゃんおばあちゃんはですね、講演をゆっくり聴きたいと思うんですよ。暖かいところで。別に部屋の温度が25℃ぐらいになったからといってですね、日本の電気を使うのが倍になるわけじゃないんですね。





それから、駅の待合室なんかでも最近寒いんですよ、すごく。これはね、元気な人にとってはいいでしょうね。だけども、ちょっと病気がちの人とか、肺炎になったらなかなか回復しないお年寄りには、過酷なんですよね。




だけども、その過酷なことを、元気な人が主張するっていうのも変なんですよ。やっぱり私たちですね、少しずつ日本が豊かになって、昔だったら姥捨山っていうのもあったぐらいでしたが、だんだん、老人の人もいたわりですね、皆で健康に楽しく生きていこう、と。体の弱い人は体の弱い人で保護していこう、と。みんなでいたわり合っていこうじゃないか、というふうな社会になりかけてるんですよ。エレベーターも付いたり、駅もですね。それから車椅子の人も自由に動けるようになった。




ここでね、何のために節電するの?って。東電のため?いや、これちょっとおかしいですね。電気が足りないから?って、これ違いますからね。火力発電所、動かせばいいんですから。温暖化はちょっと後でお話しますけども、これは間違った利権のことですからね。

そうすると、我々は何で節電しなきゃいけないんですか?と。今、節電がですね、本当にもう当たり前のようになっててですね。ちっとも快適じゃないですよ。




一方ですね、日本は世界でダントツに海外資産が多いんですよ。つまりお金が余ってるんですよね。で、海外の資産を買ってるんですよ。海外の資産を買うならね、例えばこんなことなんですね、個人から言えば。家はものすごく寒くて、いたたまれないぐらいなのにですね、別荘を買うっていうようなもんなんですよ。ほとんど別荘には行かないんですよね。海外資産というのは、海外に別荘があるわけですから。





日本はですね、30兆円もあるんですよ。世界でダントツなんですよ。何でそんなに海外に財産持って、国内では節電しなきゃいけないんでしょうかね?結局、お金はどうしても使わなきゃいけませんから、国民全体が節電したら、我慢したらですね、それでお金は余ります。「日本の生産力」-「使う量」ですからね、貯金ができます。その貯金は日本の国内では使えませんから、結局、海外の資産を買うわけですよ。何やってるんですかね、一体?





だから私、まぁ、節電がここで悪いと、一気に言うわけじゃないんですが、実は節電って言うのは何なんだ?と。これは電力会社の尻拭いしてんのか?と。電力費が何で2倍も高いのか?何でアメリカ人に対して、日本人は我慢しなきゃいけないのか?




ほんとに石油は足りなくないんですよ。石油はいくらでもあるわけですね。地球は温暖化するのか? だって、地球が温暖化するったら、日本だけが被害を受けるわけじゃありません。日本はむしろ被害が少なくて、アメリカや中国が被害が大きいわけですね。そう予想されてるわけですよ。にもかかわらず、すごく変でしょ?




まずはやっぱりですね。それで、私たちの子どももすごくね、節約して、将来が暗くなって、楽しくない人生を送ってるんですよ。どうしてそんなことを親がね、子どもに対して強制するんでしょうかね?



ま、私は最終結論をちょっと前にして、この「挿入編」というのを作ったのはですね、環境問題の歴史をずっと話してますと、なんかちょっと、ぼけてた感じがしたんですよ。私たちは今、どういうことが問題になっているのか。それに対して大人の責任とは一体何なのか。それをよく考えなかったから、原発事故が起こったような気がするんですよ。





被曝もよく考えてないから、「子どもに1年20ミリシーベルト」とか「食材で17ミリシーベルト」っていうふうに、浴びさしてるんではないか…っていう、私はそれがもう頭から抜けないんですね。ですからどうしても、「節電はほんとに良いんだろうか?」と、まぁ、いうことを考えたいという、そういう希望が強いのでちょっと挿入をしました。


(文字起こし by danielle)