2011原発危険論1。固有安全性はなぜ間違いだったか? | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

(文字起こしをお手伝いして下さった方からの投稿です。danielle(ダニエル)様、ありがとうございました)


2011原発危険論1。固有安全性はなぜ間違いだったか?

--------ここからブログ記事--------


軽水炉は固有安全性があると言われ、次のような図を使っていました。このことと、福島原発事故の映像とがあまりに違うことをまずは認識することが必要です。「事実を見る勇気」が求められるところです。(12/29)


--------ここから音声内容--------




原子力発電所にはいろんなタイプがあるんですけれども、日本で使ってる軽水炉、つまり普通の水で冷やすものはですね。原理は簡単なんです。



ウラン235が核分裂しましてね、その核分裂して出てくる2,4個の中性子が次の235を核分裂させる、と…いうためには、少し中性子の速度を遅くしなきゃいけないんですね。そのために減速材っていうのを使うんですが、まぁこれにはいろんな種類がありまして、黒鉛減速炉などはですね、黒鉛ってのを使うんですけれども。これはかなり効率が良いので、ウラン235の濃度が余り高くなくてもいいんですね。




これに対して、水を使いますと簡単は簡単なんですけども、ややウラン235の濃度が高くなきゃいけないので、
3%とか4%ぐらいまで高めたもの、つまり5~6倍に高めたものをですね、使うんですね。で、こうしますと非常に都合のいいことがあると思われてきたんですよ。それは、固有安全性があると、こう言われてきたんですね。



そのことで使ってた絵をですね、ちょっと示しますけれども、非常に…これを見ますとね、「自己制御性」とここでは書いてありますけども。ある状態があります。これは運転してある一番低い所にありますね。それで、反応が進まなくても進んでも、必ず後で元の状態に戻ってきて、ここに「ほうっておいても安全」て書いてありますね。ま、そういう状態になる、と。こういう風にですね、ずっといわれてきたわけですね。これを軽水炉の固有安全性といったりするんです。


ところが、福島原発の図を並べて置いときましたけど、この2つには物凄く段差がありますよね。違いがあります。つまり、固有安全性がある、どんなことしても爆発しませんよ、安全ですよ、ということと、ほうっておいても安全っていうのとですね、今回の爆発っていうのは、一体何なんだ、っていうことですね。


チェルノブイリというのは、黒煙炉なので、核反応が進み始めるとそれを制御することができないのでどんどんいっちゃう、と。ところが軽水炉の場合はですね。まず、温度が上がると水が沸騰しますね。そうすると、水が無くなっちゃうわけですよ、簡単にいえば。温度の係数もありますし、水が無くなっちゃう、と。そうすると、減速できないので結局反応は進まない。これが固有安全性なんですね。



中性子が出るのが少なければ、もちろん冷えちゃう、と。今度は中性子が出過ぎてぶつかり過ぎて、核反応がどんどん進んで爆発するかって、いえ、爆発しませんよ、と。そん時には水が蒸発しちゃいますから。ま、簡単にいえばですよ。水が蒸発して今まで減速しなきゃなんない水が無くなっちゃってるわけですから、爆発しないってことですよね。


ところが今度は爆発した、と。で、この爆発は全然違う種類だともいわれてますね。ま、3号機の爆発は核爆発かもしれませんけど、水蒸気爆発、つまり核反応は起こらなかったんだけれども、水蒸気で爆発したり、水素で爆発したりするってことですね。



で、これはですね、崩壊熱ってのは最初からあるわけで、事故が起こると崩壊熱がいうこと聞くってのは、事故の原因になるってのはよくいわれてるわけですね。でこの「固有安全性」ってのは何だったのか、ってことですね。核反応だけを取り上げれば、固有安全性がある、といってもいいですし、全然防災の意識が無かったといっても、ま、いいわけですね。


私もですね、最初の頃っていうか、ずいぶん若い頃はですね、ま、人のいったことをそのまま信じます。NHKとか朝日新聞のいうことは正しいと、こう思ってますからね。もう信じてましたから。ですからまぁ、私がNHKを批判すんのはその絶望感があるんですよね。今まであれだけNHKの言うことは正しいと思ってきたのに、ずいぶん資源についても環境についても違うことをいうということが、だんだん私が研究者になると共に判ってきたわけですね。


それでまぁ、大麻なんかのことも物凄く間違ってんですよ。良い悪いは別にしましてね、事実の報道自体が全く違うんですよ。ま、そういうことでまったくがっかりしちゃった。信頼を置いてた人に裏切られた、とがっくりきますけどね。それと同じですね。で、最初はそう思っておりました。しかし、そのうちおかしいなぁと思い始めたのは、
例えばこれからお話しますけれども、耐震性がないとか、耐津波全く考えてないとか。安全だと思われるものを採用しないとかですね、変なことが一杯あったわけですね。


軽水炉の固有安全性というのが間違いだった。これはですね、原子力発電所を実施するために、素人を騙す一つの方法だった。防災からいえば、全く見当外れのことだった。つまり防災というのは、核爆発が起こっても崩壊熱で爆発しても、水素爆発でも、水蒸気爆発でも、いずれにしても大量の放射線が爆発とか他の原因によって、原子炉から外に出るっていう危険性を、全部抑えるということですからね。それが全部あれば、固有安全性といえるわけです。しかし、この福島原発の事故で分かるように、全く固有安全ではなかった。つまりこれは、軽水炉の核反応ということだけを取り上げた、っていうことですね。


ところが、3号機は、あれ、核爆発かもしれないんですね。そうすると、その固有安全性はどうなったんだ、最近メルトして下に落ちた時は、また固有安全性が壊れる、と言ってるわけですけどね。そうなりますとね、この図を作った人は、馬鹿だったか、作為的だったか、ってことですね。



これはあの、早い時期にですね、今原子力発電所を再開するかどうかってことなので話題になってますんでね、まずは、この絵を書いた人がですね、この2つの写真と絵ですね、これはどういう関係なのか?何を間違ったのか?そしてこれから運転を再開した場合に、この矛盾は解消できるのか?ということをですね、いって欲しいですね。専門家ですから。


えーと、私はこの「原発安全論」というものをですね、少しまとめてみたい、と。それでいろんな角度から、今までいったこととダブりますとこもありますけどね、考えてみたい。つまり、あまり「原発反対」とか「原発賛成」からスタートするんではなくて、事実を見る勇気から始めたい、と。ま、そういうことです。