実は、回転しない寿司屋は、私は苦手なんです。
魚のネタの名前がわからないから、何を頼んでいいのかわからないのです。
いい大人が情けない。
いつも回転寿司屋の場合は、見た目で見て、おいしそうだなと思って手に取っているので、その魚が、なんていう魚なのかよくわからない。
ましてや、泳いている姿なんか想像もできない。
今回入った寿司屋は、回転していないので、自分で魚の名前を、ご主人に言って、握ってもらわなくてはならない。
女の子連れで行っているので、余計に緊張する。
ツウぶるためには、注文も一発で通さないといけない。
ご主人に聞き返されるなんてもってのほかだ。
タイミングを見て、勇気を出して、大きな声で叫ぶ
俺「はまちください。」
昔食べて、おいしかった記憶がある魚の名前を叫んでみた。
すると、ご主人から、とんでもない一言が返ってきた。
ご主人「はいよ。今は、ぶりでいいかい?」
パニックである。「はまち」を注文したはずなのに、違う魚の名前を言い返してきた。
しかも、聞き間違えそうもないくらいにはっきりと、「ぶり」といった。
自信たっぷりにだ。
おれは、「はまち」と叫んだのにだ。
ご主人の気迫に押されて、力なく、
俺「あー、そうですね」と答えるのが精いっぱいだった。
自分でも顔が赤くなるのがわかる。
横に座る女の子にわからないように、ビールを一口飲み。
お酒で赤くなったようなふりをする。
「出世魚」という名前を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。
まったく同じ魚が、1年、2年と成長するごとに、一回り以上大きくなり、1年目の魚と2年目の魚を同時に釣ったとしても、同じ魚とは思えないくらいに違っている魚のことだ。
同じ魚だとしても、その大きさや釣った魚の利用方法によって、別々の扱い方になるので、それぞれの状態で、名前を変えているのです。
その代表例が、今回の「ぶり」のようだ。
スズキ目アジ科に属するこの魚は、「イナダ → ワラサ → ブリ」と、名前がどんどん変わっていくらしい。
大きさによって呼び名が変わり、成長していくことから、「出世魚」と呼ばれるんですね。
あれ?ハマチは?
名前が変わっていく途中に、ハマチってないですよね
ハマチは、関西地方での呼び方です。
関東では、イナダ(35~60cm)と呼んでいる時期を、関西では、ハマチ(30~40㎝)と呼んでいます
なので、関西では、「ヤズ → ハマチ → メジロ → ブリ」と出世していきます。
え?じゃぁ、江戸前ずしには、「ハマチ」はないの?って疑問がわいてきます。
それは、関東では、「はまち」は養殖、「ぶり」は天然と分けられているようです。
で、「ブリ」の成長前の天然ものの子供は、「イナダ」って呼ばれています。
ってことは、俺の寿司屋での会話を振り返ってみると、
俺「(養殖ものの)はまちください。」
ご主人「はいよ。今は、(天然ものの)ぶりでいいかい?」
俺「あー、そうですね」
と、会話が成立していたことになる。
