【公正編】「移動式クレーン免許って国家資格ですよね?」ってよく聞く話 | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

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悪さしながら男なら 粋で優しい馬鹿でいろ

 

の続きで、昨日の衆議院国土交通委員会における参考人質疑。

 

岩田正吾(一般社団法人建設産業専門団体連合会会長)

堀田昌英(東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授)

勝野圭司(全国建設労働組合総連合書記長)

楠茂樹(上智大学法学部教授)

法案は、

建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案(213国会閣51)

である。

 

以下、四人の陳述

 

●岩田正吾 一般社団法人建設産業専門団体連合会会長

建専連は、建設業で下請業者の団体であり、地域が抱える問題と向き合ってきたので職人目線での意見陳述となった。日本の工事業界の実体は、欧米諸国に比べて日本の技能者の賃金は大幅に低く、日本国内においても全産業の平均年収よりも77万円安く、労働時間では68時間多く働いている。若い担い手も目を向けなくなっており、加速している技能者の高齢化とあわせて、技能者数の減少に歯止めがかかっていない。円安の傾向もあり、外国人労働者を確保していく上にも状況に苦慮する。なぜ処遇が改善しないのかと言えば、労務費価格が安定しないことにある。元請と下請がこれまで運営してきた総額一式契約は、費用を安くするために現場の技術を高めて生産性に貢献したことは事実としてある。仕事の量が減った時に、内訳の総額のみ気になり、「仕事が欲しいから値段を下げてくるだろう」「下げなければ仕事がもらえない」というマインドが建設業界上位から下請にまで広がっている。その結果、必要な労務費までをも削って安値競争に組み込まれるようになった。いわゆるダンピングである。ダンピングは元請だけではなく下請にもある。

 

仕事量の繁閑に左右される不安定な請負価格を背景に先を見据えた賃上げができない業界事情を説明。法改正で「標準労務費」が勧告される方向となり「(適正な賃金を)支払わなければ担い手も入ってこない。支払うための制度ができつつある。早期の実現をお願いしたい」と要望した。

 

 新たなルールの実効性を持たせる観点で、民間工事でも適正な制度運用が担保されるチェック体制や民間発注者の理解によるサプライチェーン(供給網)全体のマインド転換への働き掛け、優良企業を評価し「質の競争」を促進するような建設Gメンによる現場指導を求めた。

 

業法・入契法改正案に参考人質疑/建設市場の構造転換期待、賃上げ対応できる環境に – 日刊建設工業新聞

 

●堀田昌英 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授

法改正を「建設市場のルールに関する大きな構造転換」と評する。特に日本は欧米諸国に比べ「賃金下支えの仕組みが脆弱(ぜいじゃく)だった」と指摘。標準労務費の設定で「下から積み上がっていく」価格決定構造に転換されるとともに、競争上の制約から生産性向上のインセンティブが生まれるとした。

 

●勝野圭司 全国建設労働組合総連合書記長

建設業者に労働者の処遇確保の努力義務を課すなど「業法の体系の中で労働政策や社会政策を図り、建設業の健全な発展を目指す具体的施策が盛り込まれた」と期待を示した。「実効性が確保されなければ十分な効果は得られない」とも指摘し、早期に相当程度の職種を対象に標準労務費を設定するよう求めた。

 

●楠茂樹 上智大学法学部教授

「建設業法の趣旨に沿った、時宜にかなった改正」と評価。「著しく低い労務費」などによる見積もり・契約の禁止規定が、独禁法の不当廉売規制と異なる点として「労務環境の軽視につながる廉売、共倒れ的な廉売を防ぐことが狙いだ」と解説した。

 

これに対して、

【高木啓(自由民主党・無所属の会)委員】

が質疑を行った。

 

全体の構造が複雑であること、資材の価格変動は経済情勢であることから、入札の問題などでは常に変化しており、なかなかわからなかったが、労務費を固定することは理にかなっている。標準労務単価の設定は重要であるということだが、労務費を削るという方法はやめるべきだとして、全面的に賛成するとした。人手不足の今こそ必要である。そこでもっとも期待することは何かと質問した。

 

岩田建専連会長は、建設業の資格に関して民間事業者団体が主体としてやっているので国がもう少し助けるべきとの要望があった。

 

建設業の資格については、そのほとんどは厚生労働省が許可している国家資格である。

 

私は移動式クレーン運転士の免許を持っている。ようは小型移動式クレーンの制限付きなのではなく、ラフタークレーンなどの吊り荷制限が無制限の資格なのだが、「それって国家資格ですよね?」と言う人が圧倒的に多い。確かにそうなのだが、玉掛の技能講習はおろか、特別教育だって、グラインダー(サンダー)の刃を替える「研削砥石取り換え」資格ですら国家資格である。「刈り払い機」の特別教育だって厚生労働省に基づく国家資格なのである。小型移動式クレーン(吊り荷荷重5トン未満)の技能講習が非国家資格で、移動式クレーン免許が国家資格であるなどというのは違う。いずれも国家資格であるのだ。

 

多くの職人が勘違いしているが、「国家資格が偉い」というのは大きな間違いで、玉掛の資格とる日数は二日間くらいだろう。一方で都道府県資格である運転免許は自動車なんて一か月近くかかり学科試験もある。国家資格が偉くて、都道府県資格が下なんてことはない。

 

それはさておき、どうしてこういうことになったかと考えると、建設業の資格取得について、国家があまり関与してこなかったことがある。

 

とにかく、労働者の賃金をピンハネして、節約する手法は社会自らの損害になることを知るべきだ。

 

 




賃金引き上げについて

(国土交通省)

〇 標準的な賃金・労務費が示されることで、各段階において適切に支払われるべき労務費が確保され、経済状況に左右されず賃金水準が保たれる仕組み作りが必要ではないか。

〇 労務費の確保や賃金の行き渡りを阻害する受注者による不当な廉売行為(ダンピング)を制限していくことで、極端な安値で受注する者を減らし、出血競争による共倒れを防止する必要があるのではないか。

〇 契約は当事者間の関係を拘束するものであるため、例えば元請は下請における賃金支払い状況等について把握や強制を行うことはできないが、賃金の行き渡りを確認・担保していく措置を講ずることはできないか。

 

●労務費を原資とする廉売行為を制限するため、受注者に対し不当に低い請負代金を禁止し、違反した場合には行政から勧告等を行うことにより実効性を担保していく。

●請負契約締結の際における労務費の相場観を示すと共に、廉売行為を規制する際の基準とするため、単位施工量あたりの標準的な労務費を「標準労務費」として、中央建設業審議会が勧告を行う。(標準労務費の水準は設計労務単価×歩掛り相当と考え、直轄工事における積算に使用する単価を基準としていく)

●「標準労務費」に基づく適切な賃金の支払いを確保するため、下請約款において、適正な賃金支払いへのコミットメント(表明保証)や賃金開示への合意に関する条項を追加する。

●建設工事の請負契約の適正化にかかわる情報を調査・整理し、公表することができるよう法令上の根拠規定を措置するとともに、組織体制を整備していく。