エネルギー・環境問題はグレタ少女的思考を捨てよ | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

悪さしながら男なら 粋で優しい馬鹿でいろ

80年代に一世を風靡したレーガン米国大統領とサッチャー英国首相はそれぞれ、レーガノミクスとかサッチャリズムと呼ばれ、自由な経済を謳歌した時代、政府の介入を極力外して市場の原理主義を尊ぶなどして、税金の無駄遣いを排し、「小さな政府」を標榜して公共政策についてのものの考え方を一転させた。

 

そんな二つのイズムの時代に地球環境問題への対処というのは逆行のように見えるが、それがそうでもない。

 

その時代、地球環境はオゾン層の破壊ということが強く広まり、すでにその頃は南極の上空にオゾン層の穴が開き、紫外線が直接降り注ぐことになっていた。もう数十年後には南半球の大陸の国々が、またそこから数年後には地球全体に紫外線が降り注ぎ、皮膚がんなど多くの病気、自然作物への影響などが懸念されていた。

 

しかし、レーガンやサッチャーなどの政権はこのオゾン層破壊について対応していった。オゾン層が破壊されるのはフロンガスが要因であることはわかっていたため、電気冷蔵庫で使用される規制に乗り出した。冷蔵庫は冷却を行うため蒸発と凝縮を繰り返す作動流体として、フロン系の冷媒を使用していた。これをノンフロンに変えていったのである。これに伴い、日本では1988年に制定された「オゾン層保護法」によって1995年末に特定フロンは日本国内で製造ができなくなった。

 

この結果、地球規模のオゾン全量は1980年代から1990年代前半にかけて大きく減少した。その後減少傾向が緩和し、1990年代後半からはわずかな増加傾向がみられるものの、オゾン全量は1970年代と比べて現在も少ない状態が続いている。それであっても、国際社会が全力で取り組んで、オゾン層をある程度回復させたことは評価に値する。

 

その時代から遡ること10年前、昭和46年(1971)5月31日に日本では環境庁が設置された。その翌年は三木武夫副総理が環境庁長官を務めた。

 

私が25歳の時に三木睦子元首相夫人から直接聴いた話だが、三木武夫長官は「水曜日はノーカーデー」という、車を水曜日に走るのを控えさせる政策を推進させ、自動車の排気ガスの規制を厳しくした。

 

政治においても空気においてもクリーン三木を推進していた。ところが自動車業界からの反発が激しく、自民党のパーティなどで自動車業界の人と交流してもツンとされていたと睦子さんは言っていた。しかしそこから数年して、自動車の排気ガスを規制したことにより、日本の排気ガス効率性の技術がトップとなった。しばらくして無視されていた業界の方々は、三木武夫元首相に感謝を述べるようになり、大変うれしかったと睦子夫人は語っていたのである。

 

環境問題と言えば社会民主党がよく前面に掲げている政策だが、これも同じような話がある。土井たか子党首から福島瑞穂党首に代わったくらいの時代だったと思うが、彼女らはエネルギー政策として洋上風力発電を前面に打ち出し、ポスターなどにもそれをアピールしていた。しかし当時の自民党政権は太陽光発電にすらあまり積極的ではなく、風力発電も確かに徐々に始められていたが、海洋上に発電するという政策についての野党の意見を無視していた。

 

だが、今はどうか。どんどんと推進されている。時代と事情が変わってのである。自民党政権というのはかつて野党の吹かしていた政策をその時は反対ないし消極的であるのだが、いつのまにか自らの政策として飲み込んでしまうのである。

 

社民党にしてみれば「原子力は放射線がとんでもない」「石炭火力は大気汚染だ」と叫びたいがゆえの代替案なのだが、洋上風力が実現されてしまっては、別の文句の言い方をつけねばならなくなる。だが、日本国民にとっては彼らの存在がどうのよりも国民生活の方が大事だ。

 

エネルギー問題や環境問題というのは、そういう社民党をはじめとする野党のようなグレタ少女的思考で政府の足を引っ張りたがり、大企業にケチをつけるものであるが、それでは何も地球環境のためにも、エネルギー問題のためにも、国民生活のためにも寄与しないということである。

 

SNS上でも、地球が大変だ、環境が大変だとして、世界には闇の組織があってとか、米国で世界の食料を牛耳る大企業があってけしからんとか、そういうことを責めてばかりいる人があるが、悪をほじくりだして、正義ヅラしたところで、物事は進まない。企業が悪だと言ったって、大規模な地球環境を解決できる資力だって企業は持っているのだから、市民とともに協力して地球をなんとかすることに力を注ぐことが最善の方法なのではないか。

 

前置きが激しく長くなったが、今回の法案はこの二つである。

 

●脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(213国会閣16)

 

●二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(213国会閣17)

二酸化炭素の地中貯留はCCSと呼ばれる。日本語で言えって感じだが、それはとりあえずおいておく。具体的には土質を見極めて工事をしていくことになるだろう。

 

図のように泥岩などの遮蔽層で閉じて、砂岩などに貯留させる。

 

この2つの法律案は、鉄鋼・化学等の産業や、モビリティ、発電といった、脱炭素化が難しい分野においてGXを推進するため、こうした分野における

(1)低炭素水素等の供給・利用の促進を図るとともに、

(2)CCS(二酸化炭素の地中貯留、Carbon dioxide Capture and Storage)に関する事業環境整備を行うものであり、令和5年7月に閣議決定された「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」に基づいて、所要の措置を講じる。

 

法案は結局のところ、共産党が反対しての賛成多数で可決される。付帯決議にも共産党は賛成しなかったようである。

 

その反対理由は、原子力や石炭火力が同時に推進されていることや、経済産業大臣に権限が行き、都道府県知事の許可が無視されることなどを挙げていた。またCCSは地中に二酸化炭素を埋めるのだが、日本においては地震大国であるからそれを懸念していた。

 

しかし、長い前置きで述べたように、とにかく前に進むことにより人類は環境問題を徐々に解決しつつある。安全についての技術もそこから開発がされていく。この法案は低炭素水素などの利用を進めていくことにより、ひいては地球温暖化を食い止めることにもつながる第一歩である。この法律が成立・制定されてもすぐさまには解決しないのは当たり前だ。たしかに内容に不満があることもわかる。だが、前に進まねばならない。

 

なお、法案は4月9日 (火)に衆議院本会議で賛成多数により可決された。