独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案
まず、日本学生支援機構の奨学金には、家計を支える人の所得と本人の学力による判定があり、第一種奨学金と第二種奨学金があります。この奨学金をもらっても、日本政策金融公庫からの教育一般貸し付け(350万円まで・固定金利で原則15年返済・世帯収入制限あり)との重複利用は可能です。奨学金は学生本人が返済します。返済が遅れると遅滞金があります。
●第一種奨学金
条件が厳しい。在学中・卒業後ともに無利子。
●第二種奨学金
判定が緩やか。在学中は無利子、卒業後に有利子。
現在、この返済に困窮する卒業者が多数続出しているために叫ばれた声が政策に実現されたとしていますが、有利子返済から無利子返済への移行をしているのみであり、返済の必要のない給付型については新年度予算ではわずか2800人しか利用できません。
今回の予算で先行実施される国の予算はわずか15億円。
ところが、文部科学省の今回の予算説明では過大に見えるような書き方ばかりをしています。その手法は、「給付型奨学金制度の創設を含む大学等奨学金事業の充実 955億円」など書き、あたかも給付型奨学金がそのうちの何百億円か占めているようなイメージを与えようとしていますが、給付型奨学金は15億円のみであり、圧倒的に多いのは
●無利子の貸与型奨学金
です。
一般会計からは137億7304万6000円を日本学生支援機構に交付しますが、そのうちの22億1450万円はODAに使われるため、残りの115億5854万6000円が国内分です。
この115億円余りは、すべて奨学金になるわけではなく、機構の運営費として使われます。
政府が学生の保護者に対して直接の支払いをすれば、無用なコストはなくなると思いますが、機構を通したほうが効率がいいのでしょうか。今回の予算案では、学資支給補助金として政府からは70億円を支出するとのこと。これは育英事業費の費用となっています。
また、無利子奨学金事業費に3502億円を計上しているとのことでありますが、予算書のどこにそんな金額があるのか不明です。
○給付型奨学金制度の創設を含む大学等奨学金事業の充実 955億円( 75億円増) 【無利子奨学金事業費 3,502億円(279億円増)】
・意欲と能力のある学生等が、経済的理由により進学等を断念することがないよう、安心 して学ぶことができる環境を整備。
◇給付型奨学金制度の創設 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由により進学を断念している者の進学を後押しするため、給付型奨学金制度を創設。
・(独)日本学生支援機構に基金を造成し、制度を安定的に運用することで、学生等への支援を確実に実施(70億円)
・平成30年度からの本格実施に先立ち、平成29年度は、特に経済的に厳しい状況にある学生等を対象に、一部先行実施。
《給付人員》約2,800人
※内訳:私立・自宅外通学…約2,200人 社会的養護を必要とする学生等…約600人
◇無利子奨学金の希望者全員に対する貸与の実現
無利子奨学金の貸与人員の増員により、貸与基準を満たす希望者全員への貸与を実 現し残存適格者を解消するとともに、低所得世帯の子供たちに係る成績基準を実質的に撤廃し、必要とする全ての子供たちへの無利子奨学金の貸与の実現。
《貸与人員》 無利子奨学金 47万4千人 → 51万9千人(4万4千人増) (有利子奨学金 84万4千人 → 81万5千人(2万9千人減))
日本学生支援機構分
平成29年度一般会計予算案 文部科学省059
|
項目 |
平成29年度要求額(千円) |
前年度予算額(千円) |
比較増△減額(千円) |
独立行政法人 日本学生支援機構運営費 |
|
13,773,046 |
13,245,304 |
527,742 |
|
政府開発援助 独立行政法人 日本学生支援機構 一般勘定運営費交付金 |
2,214,500 |
1,785,098 |
429,402 |
|
独立行政法人 日本学生支援機構一般勘定運営費交付金 |
11,558,546 |
11,460,206 |
98,340 |
育英事業費 |
|
103,323,605 |
102,737,836 |
585,769 |
|
育英資金返還免除等 補助金 |
6,862,768 |
6,560,252 |
302,516 |
|
学資支給基金補助金 |
7,000,000 |
0 |
7,000,000 |
|
奨学金業務システム開発費補助金 |
0 |
2,801,651 |
△ 2,801,651 |
|
育英資金利子補給金 |
1,001,419 |
5,398,743 |
△ 4,397,324 |
|
育英資金貸付金 |
88,459,418 |
87,977,190 |
482,228 |