京都の鞍馬山の麓に位置する貴船神社は
鴨川の水源地にあたり、全国二千社を超える水神の総本宮といわれています。
御祭神はタカオカミノ神
命の源である水を司る龍神として崇敬を集めています。
水には穢れを祓う大きな力が宿ります。
いままで一度も枯れたことがないという御神水には、他にも次のような水のご神威が書かれています
1.自ら活動して他を動かしむるは水なり
2.常に自ら進路を求めて止まざるはみずなり
3.自ら清くして他の汚水を洗い 清濁併せ容るるの量あるは水なり
4.障害に遭い激しくその勢力を百倍するは水なり
5.洋々として大洋を充たし、発して蒸気となり雲となり雪と変し霰と化し
凝っては玲ろうたる鏡となる、而もその性を失わざるは水なり
貴船神社本宮から奥宮までの参道は、真夏でも涼しげな貴船川の水のせせらぎに触れることができ、
青もみじや川床料理が楽しめ、秋の紅葉や冬景色も美しく「京の奥座敷」ともいわれているそうです
また、奥宮への参道の途中にある結社ゆいやしろ には磐長姫命が祀られています。
初代天皇 神武天皇の祖父に当る 瓊瓊杵尊が、コノハナサクヤ姫を娶る時、父のオオヤマズミの命からともにすすめられたのが姉である磐長姫です。
美しくも儚い花の命である妹姫のコノハナサクヤ姫と長寿の意をもつ姉の磐長姫を共に贈ることで祝福の気持ちをあらわしたわけですが、瓊瓊杵尊はコノハナサクヤ姫だけを望まれました。そのため、人間の命は有限で儚いものとなったともいわれています。
そして、これを恥じた磐長姫は「吾 ここに留まりて人々に良縁を授けよう」と御鎮座されたといわれているそうです。
自分が得られなかった良縁を人々のために授けるということは、なかなかできることではありませんよね。
自分が得られなかったものは、相手にも与えたくない、という心理が働くものです。
自分には得られなかった分、周りの人々がそんな思いをすることのないように尽くす、ということは、すばらしく徳の高い行為です。
だからこそ、そのご神徳を慕い、神として祀られていると言えますね。
水のように清濁併せのむ大きな器と、磐長姫のような深い慈愛の心に、少しでもあやかることができればと、気持ちを新たにした京都への旅でした。