第二章 多重存在 2-9 上昇する死の櫃
102号室はこの場合、素直に10階の二号室という意味だ。
おれは、警備室で粗方監視機材を壊しまくってから、エレベーターに乗る。
当然押すのは10階のボタン。
点灯ランプがついた。
この箱がそこまで上がると確約された瞬間。
なんか、寒いな。
そうか、12月だもんな。
上がっていく・・・・。
何だ・・・いやな感じがする。
怖い感じがする。
俺は、高い所なんて怖くない。
だが、今は怖い。
今は高い所に怖いものがいる。
そう感じる。
なんだろう、この感じ・・・上に居るのは殺意だ。
殺意の塊だ。
ありゃ?
手が震えている。
胃がきりきりしてくる。
のどが渇いてくる。
瞳孔は開く。
アドレナリンが体のあちこちでレセプターに結合し警鐘を鳴らす。
Fight or fright とアドレナリンの作用を表する、この場合、本当にそれを行う予兆になってやがるとは。
エレベーターは登っていく。
8階・・恐怖が近付いている。
四角い櫃が昇っていく
9階・・闘争が近づいている。
この箱は、上がっている。
10階・・俺が見るのは一体何だ。
ドアは開く。目の前には2号室。
いや、2号室の中。
すでに、ドアノブは回されていた。
すでに、ドアは開かれていた。
まるで、腹の中身だ。
人間の腹が開かれて、その中身をのぞかしている。
そのくらい赤い。
そのくらい臓物が詰まっている。
102号室には肉が詰まっていた。
102号室に入っていく、むせかえる鉄の匂い。
血で装飾された床が足に張り付く。
この廊下で上せて死んでるご遺体はどこのどいつで、何人かなんてわからねぇ。
すべてがバラバラ、すべてがベトベト、アヘ顔で転がってる首。
「超エロチック」
そして唯一、閉じられた部屋(ハコ)を開く、肌がぴりぴりしてくる。
この死の川の源流がそこに居る。
それは確定された出来事。
「あらら、遅いですねぇ。
何してるですか、待ちくたびれたのでぱっくり喰いつくしちゃったですよ。」
少女がいた。
口コミ 回転寿司、好きですか?
ブログネタ:回転寿司、好きですか?
参加中小説 第二章 多重存在 2-8 侵入
さて、俺の通う中学校は、静欧中というのだが、
この静欧中は府立であるため、割と遠くの方からも学生は来ている。
まぁ、その中ではモノレール一本で移動がすむとなれば近い方に入るだろう。
そう言う辺りに吉野巫女は住んでいた。
ニュータウン計画の一環で乱立する高級住宅街や住宅ビルがそそり立つお山から少し降りたところ、
そこには未だにあたらしい住宅マンションが建設され続けている。
そうなると、時は2008年、
高級住宅街の時に奇抜な町並みに負けぬように
新しくできたマンションも実に近未来的なデザインとなるもので、
新しくてキレイという印象もあいまって、
全体的にカッコいいマンションが多い。
ロマンチック街道なんてシャレた呼ばれ方で地元民から愛される料理屋やショッピングセンターがずらっと並ぶ道路を見下ろす感じで立っている吉野巫女の暮らすマンションも、そう言ったものの1つだった。
15階建のそれは、真上から見れば扇状の形をしていている。
マンションの入り口は安全のために番号を知らないものには入れないようになっている上に、警備員も付いてる。
ドアもカードキー式だったりする。
「そういうのは、正直おれの管轄外、こまったねぇ。」
とさして、こまってねぇけど、いってみた。
俺は、モノレールS駅の屋根の上で呟いた。
注釈のようで悪いが、駅にいるからと言って、モノレールに乗ってきたのではない。
そもそも、俺は一文なしだ。乗れるはずねぇ。
と言う訳で、掴まってきたのだ・・・モノレールの上に。
「どこぞの映画で電車の上で歩くつーけど、ありゃできねぇな。思ったより滑るぜ、屋根の上ってさ。」
加えて風圧、もしやるのなら安全靴も必要だろうな。
「学生簿によると102号室。と、潜入つーのは結構久しぶりだな。」
別にできないとは思ってない。
ただ不測の事態でどこまでリズムに乗れるか、アドリブ効くか、・・・それだけはブランクの影響を受けるだろう。
俺は、コンビニエンスストアで買った野球帽を深めにかぶる。
「まぁ、帽子(コレ)だけありゃ、何とかなる。」
◆ ◆ ◆
マンションの近くまで来た。
入口の前には警官が二人。
背格好や年齢がばれてっからそのまま素通りはちょっとな。
殺してもいいけど、それじゃ、瑠璃の立場が悪くなっちまう。
だからこそ、俺は機会をまった。そしてそれは起きた。
◆ ◆ ◆
罪罰ユダ(オレ)は一つの決意をした。
「なら、やっぱこれだよな。」
おれは、帽子を放り投げた。
警官たちの背後に帽子が落ちる。警官のうちの一人がそれに気がついた。
「どうした?」
「いや、帽子が・・・」
警官はそれを拾い上げ、マンションを見上げる。
「上の階から落ちてきたみたいだな。」
なるほど・・と警官はうなずく。
「一階の警備員室に届けておく。ここ、任せたぞ。」
「ああ。」
警官は、帽子を持って警備員室の警備員にわたす。
なんてことはない。
ただ、それだけのこと。
警官に落ち度はない。
落とし物を届けた警官はむしろ、善良と言って差し支えはない。
ただ、相手が害悪過ぎた
・・・てことだろう。
相手が罪罰ユダじゃしょうがない。
「ご苦労様です。」
故に、警官にマンションの警備員はねぎらいの言葉をかけた。
いや、罪罰ユダ(オレ)はねぎらいの言葉をかける。
警官は、自らの仕事に帰っていく。
瞬間、警備員室は血の海になった。
「ほんと、マジごくろう。乙・・・」
血の滲んだ帽子をとり、俺は、ほくそ笑んだ。
帽子を深めにかぶる。
警備員は死んでいる。
いまや、穴のあいた肉袋。ただ、それだけの存在だ。
疑問におもうだろう?
殺さないのではなかったか?
その疑問はいずれはらす。
それまでは、仕方がないことだと諦めればいい。