第二章 多重存在 2-12 遊びの女、遊びの男 ―小説
「逃さないです!」
桃色血走りの着地と同時に再び銀色の閃光が6つ解き放たれる。
おいおい、クソやろ、見逃せビッチ。
その針をギリギリでかわす、が―
閃光は通り過ぎると同時に舞い戻ってくる、その一つが俺の右肩にぐさりと刺さった!
なんだ!どうなってやがる!
野球ボールの変化球じゃねぇんだ!
軌道が変わるなんて、そんなのありか!
つか、いってぇ!肩に埋没して、この針取れねぇぞ!
「ぬぁ!」
次に俺を襲ったのは無重力間!
まるで一本釣り!
おれは、針の刺さった肩を中心に投げ飛ばされた。
おれは、背中から道路に落とされた!
「かはっ!」
一瞬呼吸ができなくなる。
一瞬で胸郭が圧迫されたため空気が一気に押し出されたのだ。
次の瞬間、反射で大量の空気が肺に侵入する、気管が対応で切れず噎せる。
何とか立ち上がる。
俺は自分の肩を見た。肩から糸が生えている。
「が、肩!針!待針じゃねぇジャン!糸ついてやがる!」
なるほど、糸がついてりゃ、軌道も変わるって―
「納得いくか!」
おれは、手刀で糸を切る!
「はは、その糸を切りますか!しかも『おてて』で!そんなすごいのみたことないです!」
あいつも、下に降りてきた。その手に、鋏を持っている。
「なめんな!」
なにやってんだ!俺!
殺しは俺の領分だろ!殺人鬼は殺すための存在だ!
殺されるなんざ、もってのほかだ!
俺は地を蹴る。最高速で、桃色血走りに突っ込む。
相手との距離は、4メートル、ならば助走はおろか二歩目もいらない。
こんな距離は無いに等しい。
それは、もはや駆けるとは言わない。
跳躍でもない。
地面と平行に飛ぶ!
その超低空の飛行は、相手の視界をも越え一瞬で懐へ!
打ち上げるは手刀!
手にして刀、この身に秘める最高の刃物!
当てれば、心の臓を剣状突起を破壊しながら穿つ!
穿て!貫け!突きぬけろ!
高速で打ち出されるわが手は人振りの槍!
「ひゃは!」
桃色血走りは、鋏で、それを防ぐ!
だが、そんな鋏など!何の意味も果たさない!
槍はもう一振り!さらに下からせりあがるように貫く!
その一槍は、女の秘所を貫き!ダグラス窩をぶち抜き、腸を越え脊髄を破壊する!
「肩まで入れてやんよ!なぁ!」
はずだった―
止まった、手が止まった・・・その槍はあいての1ミリとて肉をかき分けることなく、外で止まる。
固い・・・なに、人間の肉とは思えないほど硬いんですけど。
まるで、そいつのそこは鉄のよう。
まさかサイボーグとかいう落ちはねぇよな。
ばっと、俺はいっきに距離をとる。
「ふふ」
わらう桃色・・。
「鉄の貞操帯です。」
「お前!いくつだ!」
そんなもん、シティハンターの主人公がつけてたやつしかしらねぇよ!
「中学1年」
「おおおお!勉強になるな!お前の人生最悪だ!」
いっそ、コスプレ趣味のロリっぽい中年女性と言ってくれたらどれだけ俺の気持ちは楽になるか・・・。
「それはそうと、いい感じじゃないですか。
さすが『人格失墜』。
やっとエンジンかかって来たんじゃないですか?
楽しい夜になりますよ!
こんなに長くなりそうな夜に、二人でイチャイチャしてたらお月さんも顔を隠してしまうですね。」
「ポエム風に、誘ってんじゃねぇよ。
変態。
一言言っとくが俺はある一人の女にぞっこんなんだ。
そうそうイチャイチャは長くできねぇよ。
お前は遊びだ。」
「うふふふ、きっとその女性は最高に幸せですね。
あなたみたいな殺人鬼に『嬲り殺される』なんて。
でも、そんなのろけ話は結構ですよ。
子供なんですから、そんなかたっ苦しいのは結構です。
一晩だけの関係もいいじゃないですか。
言っときますが、私だって一途に一人の男性を愛しているのです。
あなたの方こそ遊びです。」
ならば、互いに殺しあおう。
最高の愉悦がそこにある。
最低の背徳がそこにある。
肉で隔てたその先を求めあおう。
心の臓腑をさらけ出そう。
「死ねよ、殺り(やり)まん。」
「潰れろ、殺り(やり)ちん。」
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これは、世界の在り方を問いかける物語。
根源と呼ばれる日、
すべての世界は終りに向かって動き出す。
それは、2008年12月という寒い冬の
たった一ヵ月間のうちに起こった
六人の眼に映った世界再生の瞬間。
全六章にして一つの物語。
章ごとにジャンルと主人公が変わりすべてが交錯する。
小説 KuRU/KuRU 掲載中。

