第三章 幸福在処 焼き肉大戦争 結 ―小説
試合結果をお伝えします。
おそらく、戦況が一番よかったのがお父さん、さすがのダントツです。
そして、二番目がお母さん。後半の巻き返しでついにここまで来ました。
そして、第三位が、流さん。あの後もたたみかけるように精神攻撃で女性陣を撹乱、途中までお父さんとの一騎打ちでしたが・・・。
~かいそうシーン~
「ひどい・・・、ひどいわ・・・。さっきから太る太るって、これじゃあ私、もう一生ご飯食べられないです。」
その瞬間、お母さんの頬からほろりと涙がこぼれました。
「たのしい・・たのしい・・食事のはずだったのに。大好きな誠一さんが作ってくれるご飯なのに・・・。」
「知恵・・」
お父さんが優しい顔をして、お母さんの肩を抱き寄せます。
お母さんの頬を伝い伝い伝って
ほろりほろりほろりと
粒の涙が一滴一滴零れて行きます。
その様子を見て、自分の言ったことに後悔した流さんが、お母さんに駆け寄って。
「すまぬ・・・・楽しいはずの食事に要らぬことをした。知恵殿、俺・・・知恵殿がなくと泣きそうだ・・・もう言わぬから泣きやんでほしい。」
お母さんは、ほろりほろりと涙を流します。
「な、が・・・」
流さんは、お母さんを心配そうに見上げ・・・。
「流さんのお肉いただきます。」
ふぇ!?
はっと我に返った、私と流さんが、流さんの領地のお肉を確認します!
無い!無いです!
一つとしてありません!良く見れば根こそぎ、お母さんの小皿の上です!
カタカタと肩を震わし、口が半開きのまま絶望に顔が歪む流さん。
「ち、ち、知恵殿?こ、こ、これはぁぁぁ~」
その瞬間、涙がぴたりとやんで、眩いばかりの笑顔で。
「涙は女の最終兵器よ☆流さん☆」
に☆ぱ☆
「気をつけろよ~坊ちゃん、知恵は昔演劇やってたんだ。涙を流すのくらいお手の物だぜ」
駄目です!お父さん!もはや、流さんは何も耳に入ってません!完全に自分を見失ってます!戻ってきてください!流さん!
「酷過ぎる」
ぼそっと呟いた、流さんの最後の言葉です。
~かいそうシーン、おわり~
そんなこんなで、この一手で形勢は逆転!流さんが立ち直るまでに進軍され続け、結局のところお母さんが今の地位に昇り詰めることに。
そして、私はと言うと・・・はう、惨敗です。
くぅぅぅ!
泣かないです!涙は女の最終兵器です!
簡単には流せません!
「小羽」
そんな時、ふいに流さんがお肉を差し出してきます。
「すまぬ、調子に乗って焼き過ぎたが、この小さな身には多すぎた。」
流さんがおずおずとした表情で、こちらを見上げ、もじもじしています。
「手伝ってたもう?」
流さん・・・流さん!
はぐはぐはぐぅぅぅ!
私は思わず、流さんに抱きつきます!
「小羽、暑苦しいぞ。6歳児はそんなに頑丈ではないのだから力を緩めろ。」
「はんぶんこしましょう!はんぶんこ!もう、妹ができたみたいでうれしいです!」
「だから、俺はこんななりでも男だと・・・ああ、もう、肉がさめて固くなるぞぅぅ。」
「そうでした~」
その様子を見て、お母さんたちがくすくすと笑います。
「それじゃぁ、お母さんは流さんのお布団出してきますね~」
第三章 幸福在処 焼き肉大戦争 転 ―小説
「・・・よい」
その時、ごわっとものすごい闘気が!
その、闘気に、さすがのお父さんも、ちょっと戦慄しています!
「受けてやろうではないか?この勝負。ふふふ、小羽、これは実に面白い!」
な、なんという・・・覚醒です!
と、その問答は油断です!おはしをそ~と。
「小羽?」
「ひゃい!」
ばれましたっ!?
「さっきからバクバク肉ばっかり食べてるが・・・・」
「太るぞ?」
ビキッ!
え?・・・今・・・なんて?
その瞬間―
私とお母さんが凍りつきました。
そ、そんなの関係ないです!
おいしく食べるのが一番です!
「ついでに、今小羽が食べようとしているカルビ―」
いただきま~
「カルビ、一枚あたり57Kカロリー・・・」
ぽろ
その瞬間、私のお肉は小皿の上に戻って行きました。
「もう、小羽ちゃん。57Kカロリーなんて運動すればすぐよぉ」
「知恵殿の食べたロース10枚、カルビ2枚・・しめて384Kカロリー」
その瞬間、お母さんの顔が引きつりました。
「さ、さ・・・」
「知恵殿の年代の基礎代謝量は1180Kカロリーであるから、晩御飯に必要なカロリーは単純に五分の二して464Kカロリー、それ以上は脂肪に変わるわけで、・・・・そういえば、知恵殿、ご飯が進むようだな?」
こ、これは―
せ、
精神攻撃ッ!!!
でぇも。でぇも、今までだって大丈夫だったわけですし。
「ふ、いい手だ。ちょっと驚いたぜ。けど、あまいな。そう言うカロリー系統で、俺と言う男までも止められると思ったかい?譲ちゃん、その肉貰った!」
そうです!
お父さんに弱点などありません!最強です!
お父さんは、肉をがっしりつかむと、すぐさま―。
「誠一殿、実は俺は『男児』である、よって坊ちゃんの方が正しい。」
ゴん!?
なんだか、そんな効果音が聞こえたような気がしました、お肉がお橋からするりと抜けて、鉄板の上に戻った瞬間、すぐさま流さんの小皿の上に―。
は!?
まさか、この一瞬のためだけに、お父さんの勘違いを訂正しなかったのですか!?
孔明です!孔明がここにいます!
か、返り討ち、今度は流さんを抜いた三人が完全に沈黙します。
しかし、その時、流さんに起こった覚醒が私たちにも起こったのです。
ごわっ!
