蒸れないブログ -144ページ目

プロット  Massacre of A

数学者アルキメデスが、ヘロン王の依頼で王冠が本物の金であるかどうかを依頼されたのは、紀元前もの昔のことである。


質量と体積がわかれば、密度がわかるのであるから、真偽のほどを確かめるのは難しくはない。


ただ、ここにおいては、それは王冠だった。

ただの立方体でも、円柱でもない。

まさか、粉々に砕いて、体積を調べるわけにもいかない。


彼は、そんなことを考えながら風呂に入った。

入ると、自分の体積分だけ、風呂の水は外に漏れ出た。


それをみて彼は「ヘウレーカ!(わかったぞ!)」と

叫び

裸で走り回ったという。


彼は後日、同じ重量の金を水槽に入れてどれだけの水が漏れるかを図った。

結果、王冠の金の純度は違っていた。


これにより、王冠の職人は王をたばかったとして死罪。

アルキメデスは、その名声を得た。



この時、王冠の職人とアルキメデスの運命を違えた最大の理由は、何か?


王冠の職人がうそをつき、アルキメデスが真実を見破ったからか?




果たしてそうだろうか?

本当にそうだろうか?



では聞こう。

何故、王冠の職人が嘘つきで、アルキメデスが真実の語り部だと思ったのか?



言っている意味がわからない?

なら問いかけ方を変えよう。


アルキメデスが王冠と比較した金・・・・・それが純金だったという証拠はどこにある?

王冠のほうが本物で

用意した同じ重量のほうの金塊が偽物だったら?


そう、


当時の王冠職人にとって

自らがうそをついたのならば命がないのは常識的だ。

それだけ、人の命が軽かったし

嘘をつくには命がけだった。



今となっては解らないが


二人の命運を変えたのはただ立場の上だけだ。


疑いをかけられているものと

真実を証明しようとするもの


役割上の悪

役割上の正義



この二つでは疑いようがない。



ただ、先ほどの問いかけがまるで的外れでなく

真実であったとするのなら



これは計画的な殺人事件である。



完全犯罪と言っていい。



そう、完全犯罪を起こすのに

無駄なトリックやアリバイは要らない




正義の味方でさえ・・・・・あればいい。



そんな正義の味方が起こす

大虐殺のシナリオがあるとすれば

それを止めることができるのは


悪役であろうか?

それとも、さらなる正義の味方か?


アルキメデスの大虐殺を、止める方法はあるのだろうか?

小説 愛食家な彼女 59

まぁ、勘に頼る頼らないの話を抜きにしてもやることは変わらない。

だが、高柳としては根拠はなくてもやる気と言うものが大事だった。

所詮、刑事の最大の武器は足を使うこと。

俺たちは、被害者の家族に会うことにした。


最初の薬の事件も併せて、高柳が最初に会おうと思ったのは飯島直人の父親だった。

薬剤会社アルビノの社長。

ただし、面と向かって会うわけないはいかない。

高柳は謹慎処分中だ。

警察手帳をうかつに見せて捜査するわけにはいかない。

ようするに、会社にじかに向かって聞きこむことはできそうになかった。


「だから、まずお母さんに会うというわけですね?ケイジ君」

車は飯島宅に向かっていた。

飯島の家は京都にある。高速道路に乗ってそのまま北上。

途中、紗江のリードミスで名神から、神戸への分岐に間違って入りそうになりあわてたが、渋滞もなく車は快速で走っていた。

「いや、飯島直人の父親に奥さんはいないよ。飯島直人の出産時に感染症で亡くなってる。」

「え?じゃあ」

「平たく言えば愛人と言うことになるのかな。まぁ、内縁の妻ってやつなんだろうけど。新網智子さんというらしい」

「はぁ、それならなんで結婚しないんでしょうね?」

などと、斜め上を見上げながら、顔をしかめてそんなことを言う紗江。

本当・・・あのころのまま、子供みたいだ。

「いろいろあるってことだろ?」

俺はそう言うと、アクセルの踏みこみを深くした。



「飯島は帰っておりませんが」

途中で勝った黒い手帳をインターホン越しに、途中勝った黒い手帳をちらりと見せ警察ですと言った。

この当時の警察手帳の形は、今と違って普通の黒い手帳と形に変わりがなかったため、インターホン越しになら何とかだませた。

彼女は、「はぁ」と、一応の納得をして再起ほどのように続けた。

飯島宅は、会社社長の貫禄を十分に持った大きな家だった。飯島宅というより、飯島邸と言ったほうがしっくりくる。

いわゆる一つの洋館だった。

「いえ、お話を伺いたいのは、飯島社長ではなくあなたにです。よろしければ、少し御話しさせていただけませんか?」

そういうと、彼女は「ええ」と一言言ってインターホンからのマイク独特のちりちりとした音がプツリと切れた。

ほどなくして、ドアにかけられた電子ロックが、高いキーの音共にガシャリと開いた。


ドアを開けると、目の前に凛とした、少しきつめの印象を受ける女性が立っていた。

いかにもできる女といった感じで妙にかっこいい。けど、香水からは甘い香りがほんのり香ってきて女性らしさがそこかしこに見られる。

家だというのにスーツを着ている。中で仕事でもしているのだろうか?

外見もしっかりした家だったが、中も重厚感あふれる雰囲気のある家だった。

下は、大理石で日本では珍しく靴を履いたまま上がることになった。

絨毯の敷かれた居間に通された。

正直見たことがないほどの豪邸だ。

どうにも自分が場違いなのではないかと捜査できたくせに急に恥ずかしくなった。

ぼんやりと光る淡い光源のシャンデリアのした、映画に出てきそうな長卓が鎮座しており、それを囲むように、10もの椅子が並べられている。

「こちらへ」と、上座が二つ目の椅子をスッとひかれた。

俺はそこに、紗江はその隣に座る。

「それではしばらくお待ちください」と丁寧にお辞儀をされた。

「新網さまをお呼びしますので。」

紗江は「え?」と素っ頓狂な声を上げた。

正直、おれも彼女が新網さんだと思っていた。

その様子を見て、その女性はクスリと意外に可愛い笑顔でわらうと

「私は単なる秘書ですよ。すぐ、お茶をお持ちしますね」

といって、そのまま部屋を出ていった。

お茶より先に、この部屋に新たに女性が入ってきた。

今度は、女らしい女性。

どこか柔らかな印象のある女性だった。

「新網智子と言います。刑事さん。今日は私にお聞きしたい話があるとか・・・・」

そう言って彼女は、ゆっくりと、俺たちの正面の席に座った。


小説 愛食家な彼女 58

紗江は、笑いながらそう言った。

だが、それは言うほど簡単なことじゃない。

勘には、根拠がないからこそ勘なのだ。

『推測の域をでない』よりもさらにあやふやなもの。

それは、『もしかしたら』というレベルのものだ。


それも、長年刑事をやっている人間のものならあてになるだろう。

経験と言うデータが統計学的に機能し、脳で産出される結果と言っていい。

だが、それはあくまで熟練した業だ。

高柳はしょせんルーキー。

どうあがいたって、そんな精度の勘は手に入らない。


だから「無理だよ」と、しかめた顔をしていった。

すると、紗江はん~と考えてから、もう一度高柳を見て今度は不敵な笑みを浮かべた。

「やっぱり無理じゃありません」

それもまた、根拠のないセリフだ。

「いえ、私の勘です。」

「だから、勘て・・・・」

高柳は、ため息交じりにそう言った。

「プロの勘を信じるなら、私の感も信じるべきです。」

なおも不敵な紗江。どこからその自信が来るのか・・・・。

「私は、けいじ君に関してはプロですから」

・・・・・。

大真面目に、言われると返す言葉もない。

彼女の信頼は素直にうれしいが、それ以前に何かこっぱずかしい。

「勘ですが、根拠はありますよ。ケイジ君が言うには、経験が勘の精度を高めてくれるんですよね?要するに、必要なのは経験(データ)です。」

ああ、と俺はつぶやく。

なら!と、紗江はにんまりとした笑顔で言う。

「ケイジ君には、経験を補うだけのデータがあるじゃないですか?その立派な嗅覚です。」

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確かに、この嗅覚が一瞬で感じ取れる情報量は、常人の一生をはるかに超える。

だが、それはあくまで匂いのデータだ。

殺人事件と言う複合情報のデータではない。

「だから、匂いの勘です。」

「ん?」

「事件現場や目撃者の匂いを嗅いで、それに関連しそうな匂いを勘で当てるんです。」

一瞬目が点になった。

臭いに関連しそうな匂いを予想する―勘?

そんな発想はさすがになかった。


「どうです?」

いや、その顔はむしろ『どうだ!まいったか!』といった感じだった。

その自信あふれる彼女の笑みに連られ、いつの間にか自分の顔も笑っていた。


「いいだろう。」

やってやろうじゃん。