しゃっほ5 kokoroarika編 その2 おしまい。
◆ ◆ ◆
七夕の日の夕方――
ぼくは、あの頃の様に学校に忍び込んだ。
そして、僕らの教室へ・・・・・。
手紙の表に――学校(ここ)でしか開けちゃいけないって、そう書いてあったから。
「って、どこだっけ?」
本気で、自分の教室がどこだったか忘れた――。よわったな、と思っていると。
僕の前を天使が駆け出した。
僕は、天使を追いかけ三階へ、すると、そこで天使が一つの教室に入って行った。
僕も続く。
ぼくは、教室の扉を開いた。
かわらない――かわらない、風景。まるであの頃のままだ――。
そこには、間違いなく、僕らの教室があった。
ぼくは、あの頃僕の席だった机に腰掛け、夕焼けの明かりで手紙を読んだ――。
◆ ◆ ◆
良太君へ
なにから、話したらいいっすかね。うん、最初はちょっと恨み節。
というか、お叱りっす。
あれだけ、自分に嘘ついちゃいけないって言ったじゃないっすか?
こんな可愛い子を振るとは何事っすか!
なんちゃって・・・。
うん、ショックだったすけど。
良太君の優しさだって、ちゃんとわかってるっすよ。
わかってるっす。
良太君が、これを読んでるってことは私が死んでるってことっすから。
それは、残念なことだけど、まぁそれはいいや。
きっと、私は、臆病者っすから、
あるいは、肝心な所でミスっちゃうドジっ娘っすから、
良太君に伝えきれてないかもしれない事をここで伝えます。
私は、良太君に――ありがとうを言わなきゃいけないんすよ。
私をここまで生かしてくれた奇跡を与えてくれたのは
―――ほかならぬ、良太君、あなたなんすから。
良太君、
良太君は、馬鹿で、あほで、私にとんでもない嘘をつくようなウソつきで、
その上忘れんぼさんなので――憶えてないかもしれないっすけど。
良太君とは、以前に一度会ってるんすよ
――あの燃えるような夕焼けが照らす公園で。
あの頃の私は、人より少し早熟で、自分の生きる意味を屈折して考えてたっす。
――気づいちゃったんすよ。私が生きてるこの人生が、
世間一般で『不幸だ』っていわれる人生だってことに。
あはは、変な話っすよね。幸か不幸かなんて、自分が決めるものなのに。
他人なんて関係ないのに――でも、私は、周りのそういった目線が嫌で。
病院を抜け出して――あの公園で、一人たそがれていたッす。
そこで、そこで、出会いました。
天使だと――思ったッすよ。
私は、良太君にあったんす。
はじめて、普通に話しかけてくれる同じくらいの男の子。
それだけでも、私の人生としてはレアものだったのに――。
彼は、何をおもったか、私にお話ししてくれた。
夢のような希望の様な――そんな、やさしいやさしい、嘘のようなお話を。
生きる希望にあふれた――そんな物語を。
――ッ――
「ねぇ、君、知ってる?」
「?」
「夢をかなえる、そんなおまじないの話」
――ッ――
私は、そのお話を聞いて、この人生を、この世界の続きをもっと知りたいっと思ったッす。
生きたい!!――って、強く、強く願ったんすよ。
病気が治る事こそなかったっすけど、不思議なことに私の病気は良くなって、そして、今の今まで生きてこれたんすよ。
私は、そんな中で、また、あの公園でであった男の子にあいたいなぁって、ずっと思ってたんすよ。
その頃から恋だったんすかねぇ?
私を救ってくれた人、私に幸福を分けてくれた・・・その男の子に。
だから、ちょっと無理して高校に入って
まぁ――学生生活に憧れてたってのもあるんですけど。
偶然でもあの男の子にあえたらラッキーだなって。
あと、あそこの制服可愛いっすからね。ずっと憧れっだったし。
名前も知らないし、どんな顔だったかもあまり覚えてないから自信はなかったっすけど。
でも、そしたら、ちゃんと会えたんすよ。奇跡っすよね、良太君にちゃんと会えたんす。
良太君のノートを見てすぐに、あの時の男の子だってわかったすよ。
文章はもっとひねくれて、凝った作りになってたっすけど、まったく同じお話が、描いてあったんすから。
でも、私を救ってくれたその男の子は、私を救ってくれたモノと同じものに悩んでいたっす。
だから、今度は――私の番だと思って
私が助けるんだ――って
気づかせてあげるんだって
あなたが悩んでいたそれは――人を救えるんだって。
私を助けてくれたんだって――奇跡なんだって。
でも、そんなのただの言い訳になっちゃいました。
私は、良太君を好きになっちゃったんすよ。
大好きで、大好きで、死ぬことが、怖くて怖くてたまらなくなるほど
良太君が好きになっちゃったんすよ。
ねぇ、私の制服、良太君にちゃんとわたってるっすか?
それは、良太君が作った奇跡っす。
妄想の中で、コスプレの中でしか叶えることのできなかった私の将来。
その夢の一つ。
その学校の制服だけは、コスプレなんかじゃなくて、れっきとした、私の叶った現実だから。
あなたに、叶えてもらった奇跡だから。
夢だから。
だから、良太君。
私が死んでも、忘れちゃダメっすよ。
その制服が、あなたが私にくれた夢と希望がかなったという奇跡の証。
良太君、小説家になるの諦めないでください。
頑張ってください。応援してるっすよ。
良太君が、私に幸福をくれたように、良太君は小説家になって
もっと多くの人を、もっと多くのわたしの、希望になってください。
そして――ありがとう。
――私は、私は良太君に逢えて、好きになって、とっても、とっても
幸せ――でした・・・・・・・。
夢咲 香苗
◆ ◆ ◆
涙で、彼女の書いた文字がにじんだ。震える手で、上手く読めない、涙が邪魔で読めないよ・・・香苗。
僕は、彼女の制服をくしゃくしゃに抱きしめて、叫ぶ。
「香苗・・・・・・、香苗!香苗!香苗ぇ!
僕も大好きだ!好きだ!好きだよ!香苗のこと大好きだ!愛してる!
やっと言えた! やっと!あの時言えなくてごめん、ごめんよ。好きだ!
愛おしいよ、切ないよ、香苗がいなくて寂しいよ!
僕も香苗に――逢えてよかった!幸せだよ!
僕の人生の何を引き換えにしてもいい!香苗!おれ、また逢いたいよ!
お前に!好きだ! 好きだ! 好きだ香苗ぇえええ!!!」
――その時、天使が、僕の頭を撫でた。
「お願いだ、香苗に逢わせてくれ・・・、お前、てんしなんだろ?」
天使は、こくりとうなずいた――両手をくんで祈りをささげる。
今宵は、七夕の夜
――日本中で願いを天にささげる日。
祈りよ、願いよ――届け、届いてくれ、神様・・・・・。
天使から放たれる光が・・・・・
世界を満たしていく
その真っ白な世界に――うっすらと
――彼女だ。間違いない。
ああ――香苗、やっと会えた。
僕は、自分を抑えきれず香苗に抱きついた。
「良太君、強すぎっす、痛いっすよ」
香苗は涙を浮かべながら、微笑んだ。
「香苗、好きだ」
「はい」
「大好きだ!!」
「私も好きっすよ」
香苗――。
「良太君・・・・」
僕たちは・・・光の中でキスをした。
世界が今日も幸福でありますように・・・・・。
◆ ◆ ◆
光が消えるとともに、彼女は消えた。
僕は、気づけば、彼女の制服を抱きしめながら、教室に横になっていた。
天使はもういない。
外を見ると星空が広がっていた。
天の川の彦星と織姫も、きっと出会えたことだろう。
制服をみる――
ぼくは、決めた。
◆ ◆ ◆
僕は、学校の教師になる事を決めた。
今でも、病院のあの学校には通っている。
こんど、正式に制服を作ってやるつもりだ。
――最近、また嘘をつき始めた。
だれもが、幸せになれるような優しい嘘を僕は今もかき続けている。
最初は、子供たちのための童話を書くつもりだ。
僕は、仕事場におかれた彼女の制服に今でも語りかける。
香苗、見てるか?
僕は、ちゃんと、生きてるよ。
誰かを幸せにできたかな?
自分に嘘はついていないかな?
全部、全部、詰め込んで
今日も僕は・・・・物語を綴っていく・・・・・・・。
優しい嘘をつこう
誰かを愛せるように
自分を好きになれるように
誰かを幸せにできるように
―生きていこう
――そう、決めた。
おしまい。
◆ ◆ ◆
「河合先生のお部屋って、なんで女の子の制服飾ってるんですか?」
「さて、どうしてだろう?」
「教えて下さいよぉ。」
「そんなことより、はやく原稿もってってよ、ゆかりちゃん」
「ぬぬ、病院に来てた時は、なんだって教えてくれたのに・・・。
病気治ったら、先生優しくなくなった~」
「あのなぁ~、君、今年で16だろ?」
「ねぇ、先生、ねぇ~」
「出版社に担当はずすように言おうかな」
「横暴すぎる!ひど!じゃあ、先生、制服の理由の代わりに私と結婚して下さい」
「じゃあ、教えよう。」
「ショックだ!愛に年の差なんて関係ないっすよ!」
「ん?え?なんか、言った?」
「どっちが子供ですかっ!!」
「じゃあ、一つだけ。『ヤバいほど制服萌えってことかな』」
「なんですか、『ヤバい』って。」
「ん~、『いろんな意味で』かな」
「―――、・・・・・、ねぇ、先生。今度、あの制服着てみていいですか?」
「うん、
―――だめ」
・・・・・・HAPPY & TRUE END
浜吉さん
博さん
雪野地 霰さん
マチノスケさん
葵井(きぃ)さん
新塵碕行 さん
雨雪しずくさん
pestar(犬)さん
かな☆目指せ銀河いちっ!さん
桐原佳月さん
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らららんさん
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闇猫@ついったふぉろーみー!【チラ会秘書課課長】さん
郷里さん
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Brightさん
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75さん
服部 由宇さん
ばーくすさん
土見 誠さん
qoziqさん
入部晃さん
どうも皆様、新塵碕行です
このたびは、この拙く長い作品をTRUE ENDまで読んでいただきありがとうございます。
前回のしゃっほー4同様、今回も新塵は、二日目、三日目と小ネタ編をよういしてありますので、
よろしければ、そちらも見てやってください。より、一層楽しめるものを出せたらと思っております。
なお、当日は
一ページ目に二日目、三日目のリンクを張る予定ですw
お題を下さった方、本当にありがとうございます。
お題の枠内で、試行錯誤とアイディアをひねる日々は本当に楽しかったです。
まだ、もうひとつのルートに行っていない方は1上のリンク表から一ページめに戻れます。
では、皆様、このたびは誠に読了ありがとうございましたww

