今日は往年のメッツォ・ソプラノのクリスタ・ルートヴィヒが、1964年にベルリン・ドイツ・オペラで行ったリサイタルの録音を

オケは名匠ホルライザーが指揮するベルリン・ドイツ・オペラ管。
独EMIが東西冷戦の激化で、拠点をベルリンからケルンに移した際に、オイロディスクに移った名プロデューサー・フリッツ・ガンスによる好企画。
当時の夫であったヴァルター・ベリーがオレストを歌い、ルートヴィヒがエレクトラを歌う「エレクトラ」。
「ナクソスのアリアドネ」よりアリアドネのモノローグなどのリヒャルト・シュトラウスの作品は、彼女の本拠地ウィーン国立歌劇場では全く歌っていない役。
因みにウィーンでは、「エレクトラ」では、専らクリテムネストラ(初めて歌ったのは1975年)、「アリアドネ」では作曲家役(こちらは既に1956年から歌っている)。
興味深かったのは、「セヴィリアの理髪師」のロジーナの有名なアリア。
当時のウィーン国立歌劇場で、ほぼ唯一上演されていたベルカント・オペラですが、当時のロジーナ役はウィーンでは基本的にソプラノの持ち役で、こんにちのようにメッツォが歌うようになったのは、ルートヴィヒ辺りから。
そして締め括りは、「神々の黄昏」の「ブリュンヒルデの自己犠牲」。
もちろん、ルートヴィヒはウィーンではブリュンヒルデを歌ったことなどなく、「神々の黄昏」ではヴァルトラウテが持ち役。
この時期のウィーンのブリュンヒルデは、ビルギット・ニルソンのものでした。
しかしこの頃の彼女は、メッツォを超えた可能性に挑戦していたのか、この前年にも彼女はクナッパーツブッシュが指揮する北ドイツ放送響とこの曲に挑んでいます。
しかも一緒に「トリスタン」からイゾルデの「愛の死」まで歌っています。
(もちろんウィーンでは、「トリスタン」での彼女の持ち役はブランゲーネ)
もちろんソプラノが歌うこれらの役の鋭さや、特に高音の突き抜けた発声は期待すべくもないのですが(特にニルソンと比較したとき)、しかしやはり低いゆえにメッツォの持つふくよかさはなかなか捨てがたいものがあります。
そしてホルライザーの伴奏が手厚いのも有り難い限りです。
こういうオペラなら何でもOKという職人的な指揮者が少なくなってきたのは、ちょっと寂しいし、隔世の感を覚えます。

