昨日から気温が10℃下がり、本来の季節の寒さに戻った福岡の天皇誕生日。
他の地域も同じような感じかしら?
そして、世間は第九の季節ですね。
直前まで仕事の予定がはっきりしなかったので、九響の第九のチケットを入手し損ねたので、自宅での第九鑑賞♪
今日はベームが指揮したベートーヴェンの第九を

ゼーフリート(S)
ヘンゲン(A)
デルモータ(T)
アーラースマイアー(Bs)
ベーム&ウィーン・フィル
1944年4月18日の録音。
このレーベルは、割と最近登場してきたレーベルで、恐らくは放送音源と思われる初出の音源を次々と出してくる、ヒストリカルファンには有り難い限りのレーベルです。
ベームは、1943年のシーズンから、ドレスデン国立歌劇場の音楽総監督の地位を辞して、第一期のウィーン国立歌劇場の音楽監督を務めており、ちょうどその頃のもの。
第二期の音楽監督時代は、皆さんご存知の戦後のもので、例によって伏魔殿のこの歌劇場を巡るゴタゴタで短命に終わりました。
そして、この第一期も短命に終わりました。
というのも、1944年夏にナチスによる総力戦の宣言で、全ての劇場が閉鎖されたため。
とはいえ、この短命の第一期政権でも、オペラに関してはけっこう録音が残されていて、「フィデリオ」、「マイスタージンガー」、「ナクソスのアリアドネ」、「オテロ」の全曲録音が残されています。
大戦中ということを考えれば、オペラの全曲録音というのは、ほんとうにスゴいことだと思います。
特に「オテロ」は、ベームのヴェルディのオペラの全曲録音としては他に「マクベス」しかないので、とっても貴重。
さらに言えば、ベームの振ったイタリアオペラの全曲録音は、他に「セヴィリアの理髪師」があるのみなので、なおのこと貴重です。
なおイタリアオペラに関しては、戦後のベームはウィーン国立歌劇場において、「オテロ」、「運命の力」、「ドン・カルロス」、「トゥーランドット」、そして先述の「セヴィリアの理髪師」を振っています。
話がかなり脱線しましたが、このように大戦中のウィーンにも関わらず、オペラの全曲録音が録音されていた一方で、管弦楽曲の録音は独EMIによる商業録音も含めて意外に少なくて、戦後に膨大な数の録音をウィーン・フィル(国立歌劇場)と残すベームとしては不思議なくらい。
そんな中で今回登場した第九の録音は、その渇きを癒すもの。
彼の第九の最初の録音はドレスデン時代の1941年の独EMIへの商業録音でしたが、今回の録音はそれに次ぐもの。
歌手は、ゼーフリートとデルモータというウィーンのお馴染みの歌手に加えて、ドレスデンからベームとともにウィーンに移ってきたヘンゲン、そしてやはりドレスデンの歌手だったアーラースマイアーという布陣。
アーラースマイアーを除く3人は、戦後のいわゆるウィーンのモーツァルト・アンサンブルを築く人たちです。
演奏日にも注目で、これは4月20日のヒトラーの誕生日を祝うものでした。
フルトヴェングラーが仮病を使ったりして極力このイベントを避けてたものの、1942年だけはどうにも逃げ切れずにベルリン・フィルを振ったのは有名な話(録音も映像もあり)。
ただ面白いことに、他の年はいずれも演奏旅行に出たりして、上手いこと振らずに済ませてます(笑)
ベームのナチスに対する姿勢は、党員ではないものの、ナチスの文化政策を称揚するような一文を寄稿したり、まぁ日和見主義的なところは否めないと思います。
ダルムシュタット市立歌劇場→ハンブルク国立歌劇場→ドレスデン国立歌劇場→ウィーン国立歌劇場と順調にキャリアアップしてるのも、やはりそういう背景は否めないと思います。
ダラダラと書き連ねましたが、演奏に関しては資料としては極めて貴重ですが、音がもう少し良ければと思います。
もちろん大戦中の録音なので、相応と言えばそれまでですが、それでも大戦中のナチスドイツの放送録音は戦後の録音と比較しても遜色がないか、場合によってはそれを上回る音質のものもあるので、どうしても点が辛くなってしまいます。
普通のクラシックファンにお薦めとはいきませんが、ベームのファンやヒストリカル録音のファンの方にはお薦めのアイテムだと感じました。