金曜日は九響の定期に行って来ました。

プログラムは以下の通り。


指揮者にはドイツの中堅で、日本各地のオケにも客演しているゴロー・ベルク。
九響でも何度かお世話になっています。

そして、ハイドン兄弟のトランペット協奏曲のソリストとして、ラインホルト・フリードリヒという大物の登場。

さらに私にとって因縁浅からぬシューマンの「ライン」と、個人的には充実したプログラムでした。


パパ・ハイドンの方のトランペット協奏曲は、トランペット協奏曲の名曲として知られますし、恐らくトランペット奏者の方にとってはコンクールやオーディションや試験など様々な機会に課題曲として登場してくる作品だと思います。

モーリス・アンドレのトランペットが、王者の風格という感じならば、フリードリヒのトランペットはもっと親しみやすい街のトランペット吹きという印象でした。
(もちろんフランクフルト放送響の首席を務めたくらいの大物ですから、「街の」なんて言ったら失礼ですかね(^-^;))。

しかし、弟ハイドンの方のトランペット協奏曲は、さらに素晴らしい内容でした。
素直に「トランペットって、こんな音を出せるんだ、フルートと勝負できるんじゃないの?」と素人丸出しの感想を抱くほどに圧倒されました。


そしてシューマンの「ライン」。

曲自体は大好きですが、以前にも書いたことがあるように、この曲を学生時代に学生オケ相手に振って、悪戦苦闘した苦い記憶もあります(苦笑)

今回は1st.Vn、Va、Vc、2nd.Vnという、九響としては珍しい両翼配置。
指揮者の要望だったんでしょうね。
個人的には、ベートーヴェンとかならもっと両翼配置を取り入れていいと思うんですけどね…

さて演奏内容ですが、まずは九響の低音域が大変手厚くて、身を委ねることができるくらい。

聴いた限りでは、主な相違箇所を頭に入れていきましたが、シューマンのオリジナルのスコア通りの演奏で、マーラー改訂版のアイデアは使っていないようでした。

従って、同じ旋律を幾つもの楽器で重ねるあのシューマンの手法を改めて体感できました。
やはりシューマンのオリジナルの演奏を聴くと、厚ぼったくなるし、逆に4本あるホルンの威力を前に木管が埋もれてしまうという欠点とも取れる特徴はよく聞き取れました。
(だからこそシューマンのスコアにマーラーが手を入れて、近年に至るまでごく普通にそれで演奏されてきたわけですが)

しかしそれはあくまでも些末なことで、演奏内容とは別物ですね。

九響の低音域が手厚いと書きましたが、だからといってもたれるような演奏ではなく、むしろ特に最終楽章なんかは、前へ前へと進んでいこうという演奏でした。
まさにスコアの指示にあるように「Lebhaft」でした。

他には、第4楽章でようやく登場するトロンボーンが、この交響曲にズシッと重みを与えてくれて、改めて効果的だなぁと思いました。
ブラームスが第1交響曲の第4楽章でやった手法は、まさにその模倣とも言えるのかも知れませんね。

またこの時代の音楽としては珍しいes-mollという調性も独特の雰囲気を醸し出してますね。
もちろんEs-durの交響曲ですから、同名調のes-mollもアリでしょうが、この時代ならmollを使おうとすれば普通は平行調のc-mollですよね。


それにしても驚いたのは、「ライン」は九響の定期では初演とのこと!
(定期以外ではやったことがあるらしい)

まぁ、確かに指揮者もオケもやりにくい作品だしなぁ(笑)

次の定期は1ヶ月後で、井上さんの久々の登場。


楽しみ楽しみ((o(^∇^)o))

今日はロンドンにおけるアラウのライブ録音を


ベートーヴェンの「熱情」と「告別」。
そしてシューマンの「謝肉祭」。


ベートーヴェンは1985年の録音ですから、82歳の年の録音ということになります。

ちょっとタイトルはキツい書き方でしたが、「告別」の方はそこまで感じないんですが、「熱情」の方は所々でミスが散見されます。

一番痛いのは、第1楽章の再現部の第1主題を思いっきり外してしまっていること。

アラウがもともとメカニックに関してはバリバリ弾くタイプではなく、構成をしっかりと把握した上で訥々と弾くタイプなので(私のアラウ観)、アルペッジョが連発する展開部のミスタッチなどは個人的にはさほど気になりません。

むしろ、楽譜にはないちょっとした間を置いて息継ぎして次のパッセージに移るあたりは、「うん、そうそう」と合点してしまいます。

しかしこの再現部の第1主題は、申し訳ないけど決して難しくないというか、むしろ簡単。
提示部との違いで言えば、提示部は両手で2オクターヴを奏でるのに体して、再現部は右手だけでオクターヴで弾くことくらい。

これを思いっきり外してしまうのは、かなりの痛恨事です。


彼の先輩のケンプには、ままこういうことがありましたが、アラウにもやっぱりこういうことはあるんだなぁと、ちょっとニヤリとしてしまいました(^ー^)


なおシューマンの方は1961年の録音ですが、年代の水準を下回る録音レベルなので、あまりお勧めはできないかもです。

昨年発売されたギーレン指揮によるブルックナーの交響曲全集


以前からヘンスラー社から出ていたものや、初出の音源も含まれています。

オケはギーレンが長らく率いた南西ドイツ放送響で、第2番のみザールブリュッケン放送響です。

録音年代はその第2番だけが1968年と古く、あとは1980年代末から、最新の第9番は2013年となってます。


興味深いのは版の選択。

第3番は以前にヘンスラー社から出ていたものとおなじで、クーベリックやハイティンクと同じく比較的使用頻度の少ないエーザー版を使っています。

また第4番は第1稿を使用。

さらに興味深いのは第8番。
以前ヘンスラー社から出ていた1990年の録音は一般によく使用される第2稿(但しノヴァーク版ではなくハース版)を使用していたのに、今回の全集に含まれた2007年の録音ではなんと第1稿を使用しています。

最近でこそ第1稿を使う指揮者も出てきましたが、80歳になった巨匠が敢えて版を変えたのか不思議です。


最新の録音である第9番は、テンポがだいぶ遅くなりました。
ヴァントの晩年の第9番と同じく、ややダレた感じを私は受けました。

それにしても、ギーレンは2014年に健康上の理由で引退を表明し、さらに南西ドイツ放送響もシュトゥットガルト放送響と統合されるそうですね。
ある意味、「レガシー」的な全集かもしれません。

ともあれ、ブルックナー好きなかたや、ギーレンのファンの方にはお勧めです。