新興勢力の中国は凄まじい勢いで、艦艇をはじめ軍事増強を強めている。すでに大型空母は3隻目が完成しようとし、日米でいうイージス艦相当の軍艦は50隻に迫る建造ペースです。
言わずと知れた従来の大国はアメリカ。強大な軍事力は、今なお中国より強い者のその地位は脅かされつつある。アメリカは何を思っているだろうか・・・
〔予備知識:トゥキディデスの罠〕
紀元前ギリシャで、覇権国家「スパルタ」と新興国家「アテナイ」が衝突(ペロポネソス戦争)した事例から、旧来からの大国と台頭してきた新興国とは武力を用いた戦いになりやすいという概念のこと。トゥキディデスは、アテナイの歴史家でペロポネソス戦争について「戦史」という書籍を記しており、客観的な記述の中からこの概念が浮かび上がってくる。「トゥキディデスの罠」という単語は、後世になってアメリカの学者が作ったといわれる。
〖覇権に係わる理論は投資と無関係ではない〗
中国と米国は西太平洋(日本を含む一帯)で、パワーバランス的な国境を接しました。具体的には南シナ海、東シナ海、台湾です。支配権をめぐり、米中が小競り合いを続けています。尖閣諸島問題も、その一部と捉えることができます。
中国は、東シナ海と南シナ海から米軍の影響を排除したい(第1列島線)、次いでグアム周辺までの西太平洋を我が物にしたい(第2列島線)を設定しています。それらを実現するには、パワー(軍事力)が必須。そのため軍事費は毎年6%以上増えており、力を背景に実現しようという姿勢を明瞭にしつつあります。
こうした対立は、トランプ大統領による貿易関税制裁や中国企業の締め出しといった形で、経済・ファンダメンタルにも影響を及ぼしつつあります。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、中国を締め出すためにつくられた経済圏構想であり、中国を関税の恩恵外に置くことになります。当然、大きな視点で投資に影響を及ぼすでしょう。
地政学的リスクは、ファンダメンタル分析(投資)の中で重要な位置を占めます。その中で覇権を争う動きは、特に大きな影響があります。地政学的リスクの言葉として出てくる「トゥキディデスの罠」ですが、今後は頻繁に聞く可能性があるので覚えておくと良いでしょう。
〖米中関係はどうなっていくだろうか?〗
本質的に述べるなら「両国の距離はどんどん離れていく」と言えるでしょう。トゥキディデスの罠として考えれば、米国は自分が優位なうちに仕掛けることになります。英系銀行HSBCが2018年に出した試算だと、2030年までに中国は米国を追い抜きます。優位なうちに叩くのなら「それまでに中国を叩く」でしょう。手段が武力に訴えたものになるか?経済戦争(経済封鎖)を用いた方法になるかは分かりませんが…
現状では、後者(経済戦争)により中国を屈服させようと考えているようです。
世界経済から切り離して鎖国状態にして、経済力を鈍らせる。旧ソ連を屈服させた方法とよく似た戦略になるではないでしょうか?すでに対中輸出禁止品目が増えています。留学生や技術者、学者などの人的交流にも制約が出てきています。知的財産を中国へ流出させない方向へ舵を切ったのではないか?そのように受け止めることができるでしょう。
一方、軍事的にもグアッド4(米国・日本・豪州・インド)の4カ国が中心となった軍事同盟が意味を持ち始めています。ここに英国、台湾が加わる姿勢を見せ、ASEANでもベトナム・フィリピン・インドネシアなどが好意的姿勢をとっているようです。逆に、韓国は距離を置こうとしているようです(諸説あり)。
中国も、味方づくりに奔走している姿が見え、経済援助の見返りに支持を求めるなど活動があるようです。
つまり実質的に、戦争になった場合の準備をそれぞれの陣営がしていて、歩み寄る姿勢も見えてきません。それは、潜在的に米中を中心にした戦争が勃発するリスクがあることを意味します。
〖歴史的視点から考える〗
相場を考える時、歴史的な視点から考えることも必要だと思います。少し前の記事に「大局的に捉えることが重要」というのも書きました。これと同じことが言えると思います。
覇権国と新興国が対立して衝突するのは、歴史的に何度も起こったことです。太平洋戦争の日米もそうでした。紀元前のローマとカルタゴの戦いもそうでしょう。戦国期でも、関ケ原の戦いや逢坂の陣は、豊臣と徳川で新旧を入れ替える戦いでした。
覇権国側は「今ある栄華を守れないかもしれないという恐怖心」が芽生えます。実際、米国民はこの種の不安感を抱いているでしょう。民間の世論調査でも、中国に脅威を感じる米国民は多いと統計が出ています。
〖蝦夷守の意見〗
FXでの相場観も、この視点も含めて考えるべきではないでしょうか?
このような地政学リスクを織り込むとき、為替相場は大きな値動きを見せることが多々あるからです。ファンダメンタル分析が、FXに必要な理由の1つでもあります。なお、下記の記事linkは、ファンダメンタル投資に関わるものを無作為に選択したものです。宜しければ、目を通してください。
初稿 2020/3/7
お読みいただきありがとうございました。FX投資の参考になれば幸いです!
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