2018『舞台友情』初日マチネVol.2 予想外の2人! | 電卓男の友情日記

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白血病になった女の子とクラスメイトとの絆の舞台『友情〜秋桜のバラード〜』について書いています。



後ろ姿のあゆみしかいない教室に、一人の男子が入ってくる。




あゆみは、気づかない。



少しの間見ていた彼は、ふと、カバンをドサッ!と放り投げる。




振り向くあゆみ。


と、
この驚き方が、今一つ。
稽古を重ねて一連の流れがわかるからかもしれないが、シチュエーションとして、体育の授業で誰もいないはずの教室に、自分の知らぬ間に誰かが入ってきて、いきなりドサッと音がしたら、普通はどうなるか。

びっくりするはず。
ただふつうに振り向いて、「私は島崎あゆみ」と決められた台詞を流れで言っているだけに見える。
驚きが、今一つです。




「こんにちは」

「…だれだお前は」

「わたし?私は、島崎あゆみ」




「……知らねえ顔だな」

「そうよ。だって今日転校してきたばかりだもん」

「転校?」

「そう。北海道の、滝川ってところから」


「……知らねえな。………札幌とか、小樽なら知ってっけどよ」

「そうねぇ。北海道の、ちょうど真ん中あたりかな!」




ーーーーーーー
記念すべき最初の2人のやりとり。





今年のあゆみ役の天満 綺実(てんま あやみ)さんは、なんと今回初舞台。



初舞台で初ヒロインを射止めたシンデレラ・ガールである。





1公演めのこの冒頭は、毎年あゆみ役の子の緊張感が伝わってくる場面。


だが、意外と緊張は見えず、むしろ好奇心旺盛でワクワクした印象を受けた。
信一の顔もよく見てる。

名前を告げ、信一が名字を反復した時にうんうんとうなずいたり、終始リラックスしているように見えた。


「名前」
「転校」
「滝川」



この3つをしっかりと観客に伝えることが大切。

特に、滝川に関してはやや強めに「タ・キ・カ・ワ」と発音していたのがとても良かった。
しっかりとこちらまで聞こえた。



対する信一。

まず入ってきてここまでのやりとりの中での印象。
正直に言って、すごく恐い不良の雰囲気ではなかった。
顔も、不良というよりも、優しい、優等生のキャラの方が合うような人物。




だがーーー




ちがう。
何かを覆された感じがした。


彼は独自の空気感を持っている。


森山信一というキャラクター。
私は今まで、手がつけられないほど不良で(不良という言葉も古いかもしれないけどね)学校はサボる、暴力を振るう、ふつうの中学生から見たら関わりたくもないような恐いクラスメートというイメージだった。


このあとに出てくる教室の場面でも、ほかの生徒たちと比べてはっきりと浮いた存在感を出すために、この冒頭からガンガンと不良キャラを際立たせることが大事だと思っていた。



しかし、それよりも大事なことがあった。




それは、
その場を支配すること。



自身がいる場では、自分が一番偉い。
誰にも文句を言わせない。
何をするにも、自分の思うようになる。


そんな存在感でいることが最も大事であるということに、彼を見て気付かされた。


そのためのツールの一つとして、今までは「恐い」ということが慣例になっていたのだ。




彼のツールは、そうではなかった。
歴代の中で、初である、
【間】を重視している。




上記の2人のやりとりをもう一度見てほしい。

スペースや「…」が、あゆみにくらべて多いのがわかるだろう。



彼は、信一だけの「間」を持っており、相手が誰であろうとどんな状況であろうとも、話す速度を乱さない。あくまで自分のペースでその場を進める。



そのこと自体が、「その場の支配」につながっているのだ。




ゆえに、彼の発する一言一言に重みが生まれ、加えて怒鳴り声や物を叩きつけたり人を投げ飛ばしたりする物腰も積み重なって、今までにない、オリジナルな「森山信一」を作り上げている。




このあとも出てくるが、絶妙な「間」が、今回の彼の大きな特徴。


そんな森山信一役の松永 涼吾(まつなが りょうご)くんは、今までも役者活動をしている経験者のようだ。







うん、もうすでに長く書いてしまっているので(笑)ここまで。






続きは、次回。













(やべぇ、まだ開始5分も経ってない  この先が心配)







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*読者の方へ*

このブログは、『友情』という舞台を行う意義、全体のストーリーや流れを熟知した上で、よりよくほかのお客様に観ていただけるよう、個人的な感想を書いているものです。

1人でも多くの方にこの舞台の存在を知っていただき、また実際にお越しいただいて、「白血病」という病気のこと、ドナー登録や献血の重要性を理解していただけることを第一に考えております。

そのためには、舞台の中心となる生徒役の役者さんたちが、もっともっと良い演技をすることが大事です。

私はそこに主眼を置き、生徒役の方々の演技の良し悪しをお伝えしています。

加えて、生徒さんたちが全力で稽古した成果も評価してあげたいと思っています。

「泣く」「叫ぶ」などといった演技を、「すばらしい」「リアリティがある」などと評価しているのは、すべて、上述のためです。

決して、現在病気と闘っている方々のことを憂慮していないわけではございません。

そのことをご理解いただいた上で、今後とも【電卓男の友情日記】をどうぞ宜しくお願い致します。