pineapple jelly rolls | First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 先日、私立高校で英語を教えている現役教員の知人から、高校の図書館に置かれている英語多読教材のうちの1冊を見せてもらった。それがこちら、Mr. Putter & Tabby See the Stars

 

 

 Mr. Putter & Tabbyシリーズの中の1冊で、全25作もあるらしい。40ページほどの長さだが、フルカラーイラスト満載で英語の文章はすごく少ないから、1冊あたり10分もあれば余裕で読了できる。イマドキの高校生はこういう本をがんがん読み捨てにして英語読解力を伸ばしていくそうで、学校では教科書と副読本くらいしか英文に接する機会のなかった昭和な私とはえらい違いだ。

 

 せっかくなのでためしに読ませてもらったところ、さすがにこの程度なら私でも10分もかからず読み終わった——のみならず、この作品で描かれている独居老人プッター氏と飼い猫タビーの生活があまりに私の理想の老後そのもので、あまりに羨ましくて思わず天を仰いでしまった。

 

 だって、おとなしい猫のタビーと毎日家で一緒に寝て暮らす毎日だよ? 寝付けない夜には、猫を抱っこして近所を散歩できちゃうんだよ? タビーはおとなしく抱っこされているから家の外に連れ出しても猫用ハーネスもリードも不要って、飼ってもいないくせにネコ好きが高じて『ネコ全史』などという雑誌を眺めてヨダレを流している私に言わせれば究極の夢小説なんですけど!

 

 と、完全に明後日の方向に妄想が暴走してしまったが、もとを正せばこの本、アメリカ人の作家がアメリカ人の子供に向けて書いたものであり、日本人が英語の多読教材として読むとイマイチ馴染みのない単語や事柄が混ざっている。そういう意味では、英文の多読が目的なら、こういうネイティヴ読者向けではなく、最初から英語学習教材として書かれたラダーシリーズとかのほうが量をこなしやすいじゃないかなと思った。

 

 もちろん、「ネイティヴ読者向け」を読むからこそ、単に英文の読解速度をあげるだけでなく外国の風俗や文化を直接的に知ることができるという利点もある——というか、私は目下、この本の中でプッター氏が世話焼きの隣人ティーベリー夫人からご馳走になったという、'pineapple jelly rolls'のことが気になってしようがない。何そのお菓子、私は全く馴染みがないんですけど?!

 

 ググってみると、「パイナップル・ジャムをはさんだロールケーキ」みたいな画像やレシピが上がってくる。

 

 

 でもこの本の挿絵で見る限り、全然ロールケーキっぽくない。むしろ、イチゴジャムを入れたドーナツみたいだ。

 

 

 日本では「パイナップル・ジャム」自体そんなにメジャーじゃないと思うが、アメリカでは一般的によく食べられているものなのだろうか。ネットのレシピには「できればパイナップル・ジャムから手作りしましょう」とか何とか書いてあったけど、ティーベリー夫人はジャムも生地もすべて一から作ったのだろうか。それとも、市販のジャムと冷凍の生地をオーブンで焼くのがアメリカ流の「手作り」なのだろうか。

 

 考えれば考えるほど、疑問が膨らんでいく。よくあるアップルパイやブルーベリーマフィンではなく、敢えて'pineapple jelly rolls'としたのには、別のニュアンスが込められているのではないか。つまり、イマドキの若者はまず選ばないけれどある世代の老人なら好んで焼きそうなお菓子、というニュアンス、とか?

 

 くうう、気になる。気になりすぎて、もはや英語の多読なんか完全にそっちのけだ。だから言わんこっちゃない、こういう本は英文の多読には向かないんだよ。おもしろいけど。おもしろいからこそ!