The Pursuit of Love | First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 ナンシー・ミットフォードの自伝的小説『愛の追跡』(1945年)のテレビドラマ化。裕福な貴族の家に生まれ、教育らしい教育も受けないまま自宅の屋敷で育った美しくも自由奔放なロマンチスト、リンダの人生を、従姉妹であり無二の親友でもあるファニーの語りで描く。

 

 

 原作小説については、2009年に日本語訳が出たアラン・ベネットの小説『やんごとなき読者』に出てきたので知っていた。やんごとなき読者、つまりイギリスの女王陛下がひょんなことから読書の楽しみに目覚めてどんどんのめり込む、というストーリーで、イギリス好き、本好きには堪えられない内容だが、この小説の中で女王陛下が「本を読むっておもしろい」と感じる最初のきっかけとなったのが、他でもない、ナンシー・ミットフォードの『愛の追跡』だったのだ。

 

 「『愛の追跡』を選んだのは幸運であり、きわめて重要な決定であったことが明らかになった。陛下が今度もまたつまらない本を、たとえば初期のジョージ・エリオットや後期のヘンリー・ジェイムズなどを選んだりしたら、彼女のような新米の読者は、すっかり読書がいやになり、話はそこで終わりだったかもしれない。本を読むのは骨が折れると思いこんでしまっただろう。

 しかし、この本にはすぐに夢中になり、その夜、湯たんぽを抱えて女王の寝室の前を通りかかった公爵は彼女の笑い声を聞いた。」

 

 読書に不慣れな女王陛下をそこまで夢中にさせるなんて、一体どんな小説なんだろう、と思いません? 勿論、正確には「著者アラン・ベネットが、エリザベス二世ならきっとおもしろがるだろうなと想像して選んだ小説」なんだけど、ともあれ普段の私なら直ちに『愛の追跡』も読んでみる——はずなのに今日までそうしなかったのは、日本語訳が出ていないと思い込んでいたから。実は1991年に彩流社から出版されていたのに!

 

 

 我ながら愚かなり……。

 

 ともあれ、結果として、イギリス女王陛下をも魅了した(?)ナンシー・ミットフォードの『愛の追跡』とは如何なるものか、今回のテレビドラマで初めて知ることとなり、リリー・ジェイムズ扮する愛の狩人リンダの波乱万丈で暴走特急な人生に楽しくハラハラしつつ「やっぱり美人は得だよな」と思ったり、登場と同時に圧巻の存在感で場を攫うアンドリュー・スコットに爆笑したり(ここまで徹底してやられると良い意味で笑うしかない)、登場と同時に圧巻の美貌で場を攫うフレディー・フォックスに爆笑したり(ここまで徹底してやられると以下略)、話の続きが気になって仮病を使って翌日の公務をサボった女王陛下と同様に、私も話の続きが気になって全3話を最後まで一気に観てしまった。といっても、私は女王陛下と違い正々堂々の振替休日だったから仮病は使ってないけどね。

 

 あと、ドラマを観ていて気になったのは、語り手である従姉妹のファニーとリンダの関係。顔立ちも行動もとにかく派手なリンダと、そんなリンダに翻弄され続ける地味でおとなしいファニーの組み合わせは、イマドキの言葉を使えば「シスターフッド」っぽいというか、ほとんど同性愛一歩手前というか、とにかくかなり意図的に「女性同士の友情」が描かれているように感じた。これが原作通りなのか、それとも味付けを濃くして脚色したのか、そこのところがどうにも気になるので、今更ではあるもののミットフォードの原作小説のほうも読んでみようかしら……?