踊るように走る白い馬 | First Chance to See...

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 Netflixでティーン向けドラマシリーズ「レイヴン〜少女とポニーの物語」(第1・第2シリーズ)を観た。

 

 

 主人公のゾーイは15歳。夏休みを母親の実家で過ごすべく、母親や妹と一緒にLAからイギリスの島へとやってきた。今回のイギリス旅行の背後には両親の離婚の危機があるのだが、聡くて明るいゾーイは情緒不安定気味な母親やファッショニスタもどきな妹を上手にフォローすることができるし、実家の隣の厩舎で乗馬を習っている島のイモ娘たちともすぐに打ち解けて仲良くなる。

 

 そんなゾーイの運命の相手レイヴンは、大きな黒馬。隣の厩舎で調教中の若い馬(サイズからいって多分ポニーじゃない)だが、神経質なんだか気が強いんだかで、鞍を置くことさえままならない。挙げ句、調教師を振り切って浜辺で大暴走するレイヴンを、ゾーイは初対面であっさりなつかせてしまう——これまで馬に触れたことすらなかったのに!

 

 このドラマの原題は、「Free Rein」。直訳すると「手綱なし」※。隣の厩舎での体験乗馬でまたもや天賦の才を発揮したゾーイに、引き綱を持っていた指導員は、「鎧から足を離し、手綱から手を離して目をつぶり、馬の動きに身をゆだねなさい」という指示を出す。私だったら20秒以内に落馬するところだが、ゾーイはその指示を楽々とクリアして早くも人馬一体の境地を味わう。

 

 初めての乗馬でここまでやれるなら、クライマックスではレイヴンを鞍なしで乗りこなすにちがいない。まさに手綱要らず、ティーン向けドラマの話とは言え羨ましい限りである。

 

 と、思ったら、残念ながら「Free Rein」なエピソードはそれっきり。ゾーイは相変わらず天才騎手ぶりをたびたび発揮する(初めての外乗でいきなり襲歩とか。私だったら落馬して首の骨を折って死んでる)ものの、乗馬の話だけでなく、イモ娘たちとの友情やら、意地悪なお金持ちのワガママお嬢様との対決やら、厩舎のイケメン君とツンデレ君との恋のさやあてやら、いかにもローティーン向けなエピソードがいっぱい入っていて、ついつい続きが気になる作りになっている。

 

 その中でとりわけ私の注意を引いたのが、ゾーイに「世界中どこでも好きなところに行けるとしたら、どこに行ってみたい?」と訊かれた主要キャラクターの一人が、「ウィーン」と答えたこと。なぜかというと、ウィーンには「踊るように走る白い馬がいるって聞いてね」。

 

 ウィーンの「踊るように走る白い馬」! これってつまり、スペイン乗馬学校のパフォーマンス公演のことだよね? 馬が好きなら、そりゃ死ぬまでに一度は観てみたいよねっ!!!

 

 ……しかし、いくらスペイン乗馬学校の訓練された馬でも「踊るように走る」ことはないと思う。日本語字幕でそう書かれているが、実際の英語のセリフでは、どうやら"pure white horses called Lipizzans and their moves looks like dancing"とか何とか言っているらしい。直訳すれば、「(ウィーンには)リピッツァー種と呼ばれる真っ白な馬がいて、踊っているみたいな動きをする」てなところか。うん、これならスペイン乗馬学校のことで間違いない。

 

 このドラマシリーズ、正直言って大人の視聴者としては、「ご都合主義にも程がある」と苦笑いせずには観てられない。第2シリーズに入るとプロットの無茶振りは一段と激しくなり、せっかくのいい題材が台無しだよ、と何度思ったことか。IMDbによると来月から第3シリーズが始まるそうで、でもNetflixにこの新シリーズが追加されたら文句たらたら言いながらもきっと観ちゃうんだろうなあ、私……。

 

※ 2018年10月5日 追記

 このドラマのネット評を探そうとして、「free rein」は「手綱なし」が転じて「手綱を緩めて好きにさせる」とか「思い通りに行動する」とかいう意味のイディオムだと知りました…………。