『パレーズ・エンド第1巻 為さざる者あり』発売を祝う | First Chance to See...

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 つ、ついに出た、フォード・マドックス・フォード著『パレーズ・エンド』第1巻の日本語訳!
 
為さざる者あり

 日本語訳、出るらしいよ——という噂を耳にしたことはあった。が、この出版氷河期、とりわけ海外文学の氷河期においては、何が起こるか分からない。実際、私が噂をきいたのは数年前のことだったしね。正直、あきらめかけていただけに、喜びもひとしおというもの。やったーーー!

 昨日買ったばかりでまだほんの数ページしか読んでいないけれど、それでもテレビドラマ版「パレーズ・エンド」 の脚本を書いたトム・ストッパードのご尽力には改めて頭が下がる。フォードの小説は時系列が複雑で、読んでいる最中はナラティブに引きずられてすらすら読めるのに、さて実際に何がどう起こったのかを整理するとなると途端に頭がこんがらがるという、非常にやっかいな代物なのだ。それだけに、先にあのドラマを観た人にとっては、冒頭のほんの数ページだけで、あのシーンやらあのシーンやらあのシーンやらを、ストッパードがいかに巧みに脚本に織り込んでいったかがすごくよく分かる。というか、テレビドラマ版「パレーズ・エンド」の大ファンとしては、あのシーンやらあのシーンやらあのシーンやら、いちいち映像が頭に甦ってきて楽しいの何の♡

 詳しい感想は最後まで読み終えてからまた書くとして、今はまず宣伝——ベネディクト・カンバーバッチが自分の息子をクリストファーと名付けた理由は、熱心なコレクティヴならとっくにご存知ですよね? だったら、どうして彼がそこまで強い思い入れを抱いたのかを知るためにも、この本を読まないという手はないですよね?!

 確かに、小説を読み慣れない人にはフォード・マドックス・フォードは読みづらいかもしれない。でも、先にドラマを観てストーリーとキャラクターを掴んでいれば大丈夫。あと、「どうせなら全巻揃ってからでいいんじゃない?」と呑気に構えている人、昨今の恐るべき出版事情を鑑みれば、第4巻が出る頃には第1巻が既に絶版とかいうおぞましい事態も十分ありえるから、先に買うだけ買って積んでおいたほうが絶対いいって!

 それに、もともとこの小説は『パレーズ・エンド』四部作として書かれたものではなく、

 Some Do Not (1924)
 No More Parades (1925)
 A Man Could Stand Up (1926)
 The Last Post (1928)

それぞれ独立した本として個別に出版されている。だから、当時の読者は、Some Do Notを四部作の1作目だと思って読んでないんですな。

 クリストファー・ティージェンスが主人公の小説四冊をまとめて「Parade's End」というタイトルを付け、全1巻本として発売されたのは、何と1950年のことだった。ちなみに、著者のフォードは、「Parade's End」というタイトルは提案したものの1939年に死去したため、実際の全1巻本は目にしていない。そういう経緯を踏まえれば、700ページ越えの分厚いペーパーバック1冊で読むより、第1巻から順次刊行される本を1冊ずつ読んでいくほうが、この小説本来のあり方に近い、とも言える。

 という訳で。

 さあ、売り切れる前に『パレーズ・エンド第1巻 為さざる者あり』をゲットしようぜ!