『BBC EARTH 2012 ナチュラル・ワールド〜特集 動物と生きる〜』(全4回) | First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 現在、WOWOWで放送中のBBC製作によるドキュメンタリー・シリーズ『ナチュラル・ワールド』。第1回の「僕と七面鳥の日々」もおもしろかった(卵から孵ったばかりの七面鳥のヒナたちに「刷り込み」をして自分を親だと思い込ませ、成鳥になるまで徹底的に一緒に暮らすというもの)が、何といっても私の目当ては第2回放送の「伝説のドラゴン コモドオオトカゲの真実」である。

 私は、基本的にふわふわしてかわいらしい哺乳類が好きだ。言い換えると、ふわふわしてない上にかわいくもない爬虫類とか両生類はたいして好きじゃない。なのにどうしてコモドオオトカゲが気になるのかと言えば、私のブログの名前の由来にもなっている、ダグラス・アダムスとマーク・カーワディンの共著 Last Chance to See (邦題『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』)に出てくるからだ。あれを読めば、誰だってコモドオオトカゲのことは忘れられない、はず。

 という訳で、先程、録画しておいた番組を観たのだが。

 オーストラリアの生物学者ブライアン・フライ博士が、コモドオオトカゲの狩りの秘密に迫る。これまで、コモドオオトカゲが獲物に噛み付くと、コモドオオトカゲの口内にいる細菌のせいで獲物が感染症にかかって死ぬと考えられていたが、それは間違いだった。コモドオオトカゲの下顎には血液を凝固しにくくする毒があり、コモドオオトカゲに噛まれた生き物はこの毒のせいで出血多量で動けなくなるのだ、と。

 たいした発見だ。私もずっと口内の細菌のせいだと思ってたもんな。どうしてそう思っていたかというと、勿論、『これが見納め』にそう書いてあったからだ。マーク・カーワディンいわく、

「オオトカゲの唾液内に存在する微生物はすごく毒性が強いんで、咬まれると傷が治らないんだ。そのせいでたいてい数日後には敗血症で死ぬから、それまで待ってからゆっくり食えばいい。(略)
 有名な話なんだけど、あるフランス人がオオトカゲに咬まれて、二年後にパリで亡くなった例があるんだ。傷口が化膿して、どうしても治らなかったんだって。」

 そうか、これは間違いだったのか。『これが見納め』が出版されたのは1990年、今から約20年前のこと。20年経てば、動物学上のいろいろな新発見も出てくるんだな。

 が、しかし。「伝説のドラゴン コモドオオトカゲの真実」を観て、私がそんな風に素直に受け止められたと言ったら嘘になる。別に、この新発見を疑ってる訳じゃない。きっと、コモドオオトカゲにはそういう毒があるのだろう。私が素直になれないのは、この番組が『これが見納め』について一切触れていないからだ。

 別に触れなくてもいいけどさ。でも、コモドオオトカゲを観に島までやってきた観光客に質問して、「何かで読んだ。コモドオオトカゲの口の中の細菌が獲物をゆっくりと殺すって」という返事を引き出した後、生物学者ブライアン・フライ博士が、「まったく謎です。どうしてこんなにも信じられているんだろう。コモドオオトカゲが、細菌の助けを借りて狩りをしてるなんて。そんなこと、一度も証明されたことがない。ただの憶測なのに」と語るのはあまりに白々しい。

 ったく、どこが謎なのよ。イマドキわざわざインドネシアの離島くんだりまで野生のコモドオオトカゲに会いに行くようなイギリス人やアメリカ人の多くは、Last Chance to See を読んだことがあるからに決まっているじゃん。あるいは、同じBBC2で2009年に放送されたスティーヴン・フライとマーク・カーワディンによるテレビ番組 Last Chance to See: In the Footsteps of Douglas Adams (全6回)を観たことがあるからに決まってるじゃん!

 特定の個人や作品を非難するのは憚られる、という気持ちは分からないでもない。でも、だったら「まったく謎」とか嘘くさいことを言うんじゃないよ、と思うのは、ダグラス・アダムス・マニアの私だけ? やっぱり、私だけなの??