First Chance to See...

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エコ生活、まずは最初の一歩から。

 前回の『義とされた罪人の手記と告白』から約2ヶ月、またまた多摩南読書会にオンライン参加させていただいた。最高気温35度の時期だけに、炎天下の中を出かけることなくこういった機会が持てるのはすごくありがたい。

 

 今回の課題本は、デイモン・ガルガットのブッカー賞受賞作、『約束』。ある白人一家の数十年を「葬儀」に集約して描いていて、あくまで一家族の物語でありながら、その背後に1980年代から2010年代までの南アフリカ共和国の現代史が薄く透けて見える仕組みになっている。

 

 

 ……と書くと何だかすごくとっつきにくそうだが、実際に本を手にとって読んでみると意外なくらい「すらすら」読める。三人称の小説だが、語りの視点が一人の人からまた別の人へとスライドし、結果として一家族を取り巻く大勢の人間の内面にするりと潜り込んで内面の声を届けてくれる。南アフリカという、日本からはかなり遠い国の話なのに、どの声にも妙に得心できて、「いるいる、こういう人」と思わずにいられない。

 

 そういうところがこの小説の思いがけない読みやすさの一因でもあるのだが、それでいて時折、わざと語り手の声を強く出してスムーズなスライドを遮るような箇所もある。のめり込んで読んでいる読者に、これが「ただのフィクション」であることを強引に思い出させる、とでも言おうか。そういう語りの仕掛けも、私にはすごくおもしろかった。

 

 今回の読書会は参加人数こそ少なかったものの、その少ない人数の中にアフリカ在住経験を持つ方がいらっしゃって、その方自身の体験談に加え、その方のお知り合いで南アフリカ共和国に10年以上暮らしたことのある人の話を聞くこともできた。おかげで、この小説の解析度が一気に上がったと思う。

 

 ほんと、こういう機会が持ててありがたいったらない。

 スティーヴン・キングの小説は割と好きだけど、ボリューム満点な長編小説が毎年のように出版されるため、フォローしきれなくなっているフシもある。そんな中、キングの長編小説にしては割と短めで、かつ、とても評判のいい作品の日本語訳が最初から文庫本として出版されるとあって私も注目していたのだが、

 

 

 350ページかそこらの文庫本で、販売価格はまさかの1650円。マジかーーー!

 

 キングの小説は、おもしろくて読み出したら止まらない。それ自体はもちろん良いことなんだけど、350ページ程度の長さならそれこそ2時間もあれば読み終わってしまう。それで1650円はさすがにコスパ悪すぎだろう。

 

 ためしに原著の電子書籍の価格をググってみたら、円安の煽りを受けつつも今なら1050円で買える。ためしに無料サンプルをダウンロードしてみたら、死んだばかりの人の姿が見えて話もできるという特殊能力を持つ22歳の主人公が子ども時代から現在までを振り返る、という設定の一人称小説なので、凝った言い回しもレアなスラングもなく、何だかえらく読みやすい。というか、冒頭のさわりを読んだだけでも"Later"という原題がすごく効いていることがわかり、これなら原著に挑戦する価値ありだな、と踏んでポチることに。

 

 

 ……いやあ、予想たがわずめっちゃおもしろかった。もたもたと原著で読んでなお、続きが気になって気になって仕方ない。もちろん、日本語訳で読むよりはるかに時間はかかるのだが、「続きが気になるーーー!」というワクワクをより長く楽しめるという意味では、むしろ時間がかかればかかるほどお得と言える。

 

 イマドキのタイパやコスパの考え方とは正反対なんだろうな、という自覚はあるけれど、でも楽しい時間は長く続くほうがいいじゃない? そもそも「小説を読む」とは楽しい時間を過ごすことであって、効率よく情報を収集することではないはすだもの。

 

 ただし、この小説を最後まで読んで「死者は嘘をつかない」という邦題の良さに舌を巻いたことは付け加えておく。キングの小説の日本語訳っていつもハズレがないんだよなあ、文庫本の値段が原著の電子書籍と同じくらいだったら、私も日本語訳で読んだんだけどなあ(ん、ちょっと待て、前段で言ってることと真逆の結論になってないか、結局最後は金の問題か?!)

 大根のリボベジから一歩進んで(?)、ミントの水耕栽培に挑戦してみることにした。でも、種から始めるにはいささかハードルが高すぎ/時期的に遅すぎ、ということで、近所の園芸店でミントの苗を買ってくる。

 

 

 ハッカホクトという名前の、「日本のミント」とのこと。正直ミントの種類なんて全然意識してなかったが、説明書きによると食用としても使えるらしいのでまあいいや。

 

 ミントの水耕栽培についてネットで検索してみると、苗で買ってきたなら土をきれいに洗い流して栽培せよ、というものもあれば、土をきれいに洗い流しそびれると厄介だからばっさりカットして挿し木で根っこを一から育てよ、というものもある。どちらがより素人向けなのかよくわからないが、土をきれいに洗い切る自信がなかったので挿し木ヴァージョンを試してみることに。

 

 

 中央の茎の部分の他に、脇で育っていたものもダメ元で水に挿してみた。正しくできている自信は全然ないけど、ま、今回は何もかもダメ元の挑戦ということで、よりにもよってこんな私に選ばれて買われてしまったミントの苗、ごめん!

 

追伸/挿し木にするため毟ったミントの葉は、まとめてソーダ水につっこんで飲んでみた。ミントの爽快感より妙なオイル風味があってあまりいただけなかったが、多分私がミントの葉の使い方を間違ったんだと思う(というか、思いたい)。