アメリカに戻った私は、2つ年上の先輩に恋心を抱くようになった。


Tのことを意識した矢先のことなので、まぁ、軽いっちゃ軽いし、ふらふらしてるっちゃふらふらしていた。Tのことを忘れようとした反動ということにしておくと綺麗に言い訳ができるのでそういうことにしておく。


その先輩は抜群に頭が良くて、顔も良く見えて、ドSで、かっこよく見えた。


一緒に勉強したり、徹夜で卓球をしたり。私は最高に楽しい時間をすごしていた。



2月、私の先輩への恋心がMaxになった頃、闘病中だった父が危篤状態になった。


私は急いで帰国し、2週間ほど病院で寝泊まりをして集中治療室の父のそばにいたが、意識は戻らなかった。


初めは最悪な雰囲気だった病室も、元気付けてくれる看護師さんたちのお陰で少しずつ明るくなってきて、私の恋バナを聞いてくれる看護師さんもいた。


2週間後、主治医の助言もあって私は意識不明のままの父を残してアメリカに戻った。


不安な気持ちの私を精神的に支えてくれたのは先輩の存在だった。バレンタインの時期だったので、私は思い切って告白ともとれるようなラブレターを書いて渡した。


父が危篤だというのに呑気なものだと思われるかもしれない。たしかにどうかしていた。だが、こんな状況で、どうかしていないほうがおかしいかもしれない。とにかく私はひどく混乱し、とにかく何かしらの安らぎを求めて先輩にラブレターを渡す運びとなったのである。



しかし、返事どころか、何のリアクションもない。少し失礼なのではないかと毒づいていた矢先、先輩に遠距離恋愛中の彼女がいることが発覚した。彼はそれを隠していた。まぁ、ここには恋敵を交えたさまざまなスキャンダルが絡むのだが、とにかく、彼の身辺は綺麗じゃなさそうなことだけはわかった。私はスパッと諦めることにした。1ヶ月後のホワイトデー直前に、私は先輩に、やっぱりこの前の告白取り消します的なメッセージを送った。

そして、次は誠実な人を好きになろうと決めた。

同窓会の帰り道。

私は別れ際、彼に、手紙を手渡そうとしていた。


この同窓会が終わったらもう会うことはないと思ったし、同窓会でもうまく喋れないだろうと思ったので、何回も書き直した手紙を準備していたのだ。


高校のとき、すごくひどい別れ方をした申し訳なさ、そしてやはり友達に戻りたいこと、これからも仲良くしてほしいことなどをつらつらと書いた、すごくセンチメンタルな手紙だったように思う。


しかし、案外楽しく喋れたのと、渡すタイミングを逃したのとで、結局彼に手渡すことはなかった。


家に帰ったあと、彼にラインをした。

「今日はありがとー!

喋れなかった時用にメモ書いててんけど必要なかったです笑


高校のときは、ずっと仲良くしたいと思いながらもあからさまに避けるとかひどい態度を取ってたことを後悔してて、本当にごめん!

あと、そんなんやのに大学入学のときメールくれてありがとう!嬉しかったのと、救われた気持ちになりました。

今後とも仲良くしてくれればなと思います。」


当時は出来るだけ軽く書こうと思ったのに、今から見ると重さがにじみ出ている。



「こちらこそ今日はありがとう

ったくお前はなんでそう直ぐ深刻そうにメモとかにするんかねぇ

もう俺も前みたいに意地を張ってお前を避けることは辞めようと思ってたし

改まって「今後も仲良く」とか言うのも野暮やろ笑

また遊びに行けたら良いな笑」


彼の返信は、彼っぽかった。

ったく、の書き方、お前、という呼び方、野暮、という難しい言葉遣い。全てが、彼だった。


きゅんとした。とても好きだと思った。

でも、叶うことはない。

あんな振り方をしてしまったから、もう付き合うことはない。


気持ちを封印して、私はアメリカに戻った。

別れて一年ほど経った彼を含めての同窓会。

焼肉屋さんで、若干彼のことがかっこいいなと思いつつも、いや、付き合ったら苦労するからアカン、などと自分に言い聞かせているうちにボウリングが始まった。


Tは、フォームはとても上手そうなのだが、呆れるほど下手だった。本当に上手そうなのだが、驚くほど下手だった。


途中で、罰ゲームつきの対抗戦をやろうということになって、グッパでチーム分けをすることになった。5人なので、23に分かれる。


そしてあろうことか、私とT2人のチームができてしまった。私は一瞬顔が引きつり、彼も一瞬動きが止まり、他の3人も、あ、みたいな顔をしていた。



私もボウリングが上手いわけではなく、どちらかというと下手な部類に入るので、私と彼のチームは確実に負けそうだった。そして実際、綺麗に負けた。だが、お互いの下手さを笑いあったり、「頑張れ」「頑張る」などの言葉を交わしたり、ストライクを取ったらハイタッチしたり、付き合っていた時には一度もしたことがないボウリングデートが、皮肉にも実現したような形になった。


罰ゲームは、ラジオ体操か、2人でプリクラか、だったので(他の3人も、私たちの関係性を知っていたので、おそらくすごく面白がっていたのだろう)、私たちは迷いつつも後者を選んだ。


まずは全員でプリクラに入り、何枚か撮る。そして、最後の一枚のときに、3人がハケて、カーテンの中は私とT2人になった。


「ポーズを決めてね!」 

というプリクラ機の声に指示され、私たちはうさ耳のポーズを取った。付き合っていた時の硬派な彼とはイメージが全く違うもので、少しきゅんとしてしまった。