9月から、アメリカのプリンストン大学での生活を始めた私は、12月、冬休みを日本で過ごすため、一時帰国した。


1月には、小学生の時の塾の同窓会が行われた。そこで私は、卒業してから初めてTの顔を見ることとなった。


そして、別れてから初めて、まともに口を利いた。


集まったのは5人。女子2人と男子3人。

まずは焼肉を食べに行った。


私の向かいの席に座った彼は、楽しい楽しい同窓会だというのに何故か疲れ果てており、すごく不機嫌に見えた。


そして、私と目を合わせようとせず、話そうともしてくれなかった。


あー、尖っている性格はやはり何も変わっていないな、まだ完全に無視なのか。別れてよかったかも。


と思ったものの、彼がしている話を聞いてみると、彼のご家族が急に体調を崩した(?)か何かで前日全く寝ていなかった、という事情があったみたいだ。


そして、私がタン塩をトングで彼の皿に乗せていくのに対し、ありがとう、くらいのお礼の言葉は言ってくれた。


そしてさらに、よくよく彼を見てみると、高校の時よりもかっこよくなっているし、少し尖っているのもなくなったかのように思えたのだ。


焼肉屋を後にして、私たちはボウリングをしに行くことになった。もう1人の女の子がコンビニにお金を下ろしに行くというので、私もついていった。


T、思ったよりかっこよかったから焦ってるw」とその子に告げてみると、「うそやん」と言ってその子はウケていた。


「男を操る心理術」的な本が売られていたので、友達と、「これT相手に使ってみよかな」などと冗談を言いつつ、コンビニを後にしてボウリングへ向かった。

東大の一年生の女子はちやほやされる、と私は個人的に思っている。

少なくとも私がいた半年間、女子はみんなとても大事にしてもらっていたと思う。


先輩からは「一女(イチジョ)」と呼ばれ、38人クラスのうち7人しかいない女子はかなり重宝された。


男子校出身者も多く、彼らは驚くほどの優しさを発揮していた。学園祭の時には、箸より重いものを持とうとすると「俺持ちます」、チャイナドレスを着てみたら手放しで「似合うー!!」と褒めてくれる感じであった。


お陰で私は若干自分がモテているのではないかという勘違いをした。


実際、1人に告白してもらった。


勉強の話で相談に乗ってもらった先輩と親しくなり、その人と何回か、国会や公園や記念館にお出かけに行った。

私はそれをデートとは思っていなかったのだが、今から思うと完全に思わせぶりな態度をしてしまっていた。


彼はすごく優しく、頭も良くて話も面白かったのだが、恋愛感情を持つことはできなかった。いい先輩、という感じであった。


私がアメリカに行く前に最後に会う時には、彼は私をキャンパス内のお洒落なレストランに連れて行ってくれた。その帰りに、ストレートな告白をしてくれた。


恋愛の相手として見られなかったのと、遠距離は無理、ということでお断りをした。


彼は、テレビのバラエティ番組にも時々出るような人だったのだが、その番組で私のことを若干話してくれて、私たちのことを知っている友達から一斉にラインが来たのが楽しい思い出だ。


1ヶ月考えた結果、私は東大を辞め、プリンストン大学に進学することに決めた。


その直後のゴールデンウィーク、私とTが小学校の時に行っていた塾の同窓会が京都であった。


Tは来なかった。家族旅行中だったらしい。


小さい塾だったので、集まったのは4人だけ。それでも私たちは公園でキャッチボールをしたり走り回ったりして子供のようにはしゃぎまくった。


Tと私が付き合っていた頃の話、別れた話を、彼らはとても興味深く聞いてくれて、その話の流れでライン電話をかけてみることにした。


かなり勇気のいる電話だった。


しかし、彼はそれには出ず、「ごめん今無理」とだけ文字が送られてきた。


みんな残念がっていたが、私もかなり悲しかった。


しかしいきなり電話するのも無理やりすぎたのでやむを得ない。