今日は、Tとは全く関係ないが、人生初のナンパについて書こうと思う。(された側である。)


413日、東大の入学式は武道館で行われた。


式の前、クラスで集合写真を撮っていると、少しクネクネした感じの、不気味な感じの男が近づいてきた。


スーツを着ている。入学式にスーツを着ている人は東大生。その思い込みに上手いこと付け込まれた。


「あの、何学部ですか?」


ここで気づくべきだった。この男は東大生ではない、東大生相手にナンパしに来ているやつだと。

東大生は、科類は?と聞くはずだ。しかし、私はまともに答えてしまった。


「文科一類です。」


私の目の前には私の両親もいる。友達もみんないる。そんな状況でいきなり声をかけてくるこの男を、両親も友達も私も、ナンパだとは思っていない。


しかし。


「将来は何になるんですか?」と聞かれ、


「政治家になれたらなと思います。」と答えると、


「握手してください」と言われ、少し気持ち悪いなと思っていながらも握手したら、


「未来の総理大臣の旦那になれるように頑張ります。」と言われた。

側で見ていた私の父親は目を丸くしていた。

私は軽く吐き気がしていた。

クラスのみんなが私を囲んでくれて、私はその気味の悪い男から逃れて入学式会場に入った。


入学式中はその男のことをすっかり忘れていたが、会場から出たら再度アタックされた。


「あのかわいいなと思って。」


さっきナンパしたことを忘れているようである。そのことに多少腹が立ちつつ、気持ち悪すぎると思っていると、クラスの女の子たちが私を助けてくれた。「どっか行けやっ!」と言いながら。


後からクラスメイトが調べてみると、その男は、あらゆる入学式でナンパを繰りかえしているらしく、私はまんまと標的になった。



しかし、その1ヶ月後くらいには、どうやらキャンパスから渋谷まであとをつけられていたらしく、渋谷駅を降りたところで同じ男に声をかけられた。


震え上がっていると、たまたま通りかかったクラスの男の子が助けてくれたので助かったが、3度も声をかけられるとは、よほどタイプなのか、私がいいカモなのか。


軽い男の暇つぶしのナンパの標的になった大学一年生の春であった。



412日。

入学式の前の夜、メールが届いた。

Tからだった。


「遅くなった。申し訳ない。

あと、入学おめでとう。 


また機会があったら連絡してくれ。それでは。」


すぐに、「ありがとう!メール嬉しい」と返信したが、それへの返信はなかった。


機会があったから連絡したのにその返信がないとは。などと思いつつ、とても嬉しかった。


あとから、なぜメールをくれたのか聞いたところ、私が2日連続で夢に出てきたらしい。それで、やっぱり俺はアイツのことがまだ好きなのかなと考えてメールをくれたらしい。



彼のことだから、入学式に合わせて送ってきてくれたのかと思ったが、そういうことではなく、本当に偶然、夢に出てきた日と入学式の前日が一緒だったらしく、完璧なタイミングでのメールであった。


また、彼は彼で京大の入学式があり、その写真はなぜか私の元へ回ってきた。とても嬉しそうな笑顔をしており、あまりにも平和な表情だったので思わず保存した。

331日早朝。

アメリカの大学の合格発表がネット上で行われた。


私は、前日から一睡もできなかった。東京の下宿で、一人きりでドキドキしながら夜を過ごした。


難関校といわれる三大学、ハーバード、イェール、プリンストン。その合格発表を一人で見るのは精神的にかなり辛かった。



第三志望のプリンストン大学からまず見ることにした。結果は合格。

ふぅん、という感じだった。いい学校だよ、有名だよ、といわれたから出願しただけで、日本での知名度は低く、特に思い入れがなかったのである。



第二志望のイェール大学は残念ながらウェイトリスト。次点、ということで、もしイェールを蹴る人がいたら、繰り上げ合格ということになる。



第一志望のハーバード。

すこーーーーん、と落ちた。

ウェイトリストでも何でもなく、綺麗に落ちた。



しばらく涙も出なかった。

親に結果を報告して、協力してくれた先生にメールを送っているときにようやく実感がわき、狂うように泣いた。

あんなに支えてくれたのに落ちてしまってごめんなさい、その気持ちしかなかった。



ここから地獄の1ヶ月が始まった。

アメリカの大学は、5月まで、入学するかしないかを選ぶ期間が与えられる。


東大をやめてプリンストン大学に進むか、東大に残るか。正直、東大の生活は最高に楽しかった。入学式よりも前に授業が開始されるのだが、すでにクラスのみんなの仲が良く、刺激的な日々だった。一方で、プリンストンを蹴るなんて、という声も、先生や先輩からたくさんあった。



豪華で贅沢な選択のはずなのに、毎日親と電話で大げんかし、毎日部屋では泣きながら過ごした。


ハーバードに受かっていればこんなに悩むことはなかった。落ちた自分を責めに責めた。



そんな中、東大の入学式の前日に、一通のメールが届いた。