こんにちは。和久田ミカです。
16日(土)から、こちらの募集を始めます!
さて。
今日は、私が教師2年目のときに書いたものをご紹介します。
当時は 今みたいにブログというものがなく、ホームページを作って 日々の出来事を発信していました。
下は、20年以上前に書いた文章です。
ヨシオは小学2年生。
ひょろっと背が高く,ちょっと気の弱そうな八の字眉。
私が話をしていても,手遊びをしていて自分の世界に入っている。
友人が少ないようで,休み時間はあまり外に出たがらない。
新学期からまもなくして,母親からお手紙をいただいた。
「うちの子は気が弱く,言いたいことも言えません。学校での様子はいかがでしょうか。」
という内容だった。
私は,「え?」と不思議に思った。
ヨシオは,始業式の日に 隣の席の子と 取っ組み合いのけんかを したのだ。
でも,確かに 普段の様子を見ていると,自分の意見を伝えるのが 苦手で,
嫌なことがあっても 我慢してしまう傾向が あるようにも みえる。
「元気に過ごしています。お掃除を一生懸命にしていました。
雑巾がけが上手なので,おうちでも お手伝いを されているのでは?
これからも,ヨシオ君の生活を 気をつけて 見ていきたいと 思います。」
というような返事を書いた。
4月中旬,家庭訪問があった。
ヨシオの母は,若く,おっとりとしていた。
部屋には手作りの小物が目立つ。
手作りのケーキでもてなしてくださった。
やはり話題は, ヨシオの気弱な性格についての 心配が 主になった。
「実は,カツヤ君にいじめられているようなんです。」
同じクラスの 甘えん坊かつ暴れん坊将軍のカツヤである。
「先日も,ポケモンカードを欲しいと言われて,嫌だと言えずにあげてしまったんです。
返してほしくても,返してほしいと言えないみたいで・・・。
暴力を振るわれるから,逆らえないって。
だから,最近はヨシオが帰る時間に 近くまで迎えに出ることにしたんです。
どうしたら,この弱虫が 直るでしょう・・・。」
隣で ヨシオが 申し訳なさそうに 聞いている。
わたしは なんだか ヨシオが かわいそうに なってしまった。
そこで,ヨシオの お掃除のときのがんばりや 図工の時間の集中力など,良いところを話して
「子供には それぞれ個性がありますから,長所を伸ばして 自信を つけていきましょう。」
と答えた。
しかし、母親は にこやかな顔を しながらも,心は 晴れないようだ。
「そうですね…。でも,心配になっちゃうんです。
うちは転勤で 引っ越してきたんで 近くに相談できる人もいないし,初めての子だし。
それに,早生まれなので,どうしても他の子と比べてしまって。
もっと,ヨシオも他の子みたいに,はっきりと ものが言えたり,
大きな声で 発表したりできたらいいのに って 悩んでしまうんです。」
隣に座るヨシオは,ますます 小さくなっていった。
その後,カツヤとも 話し合い,いじめは ある程度おさまった。
ある程度というのは,今でも ヨシオは カツヤの毒舌の ひとつひとつに 傷ついてしまうからだ。
「なんだよ,お前なんて すぐ泣くくせにぃ。」
と 言われただけで 本当に 涙ぐんでしまう。
2人は 近所なので,行き帰りは 一緒。
ヨシオの顔はいつもユウウツなのだった。
・・・・・・・・・・・
家庭訪問から 1週間ほどして,ヨシオの母親から 電話が かかってきた。
「相談にのっていただきたいんですが・・・」
放課後は忙しく,なかなか時間が取れないため,土曜日に 学校に 来てもらうことにした。
(当時、まだ土曜日は登校日だった)
学年主任にも 話し,同席して もらうことにした。
土曜日,ヨシオの母は 手作りのクッキーを 持参して 学校に来た。
そして,心に積もる 心配事を 話し出した。
内容は,だいたい 家庭訪問のときに 聞いたことと 同じだ。
私はまた,ヨシオの良さを認めてもらおうと 長所を話そうとしたが,学年主任が それをさえぎってこう言った。
「ご心配でしょう。
子供には,ハキハキと元気に生活してもらいたいですものね。
明るく 大きな声で 発表してくれたらいいな,
クラスのリーダーに なれるような子に 育ってくれたらいいな,そう願いますよね。」
ヨシオの母は,パッと顔を輝かして言った。
「そうなんです。そうなんです。」
やっとわかってもらえた,という表情をし 泣き出した。
「心配なんです,このままでいいのかなって。 わたしは,ヨシオに何をしてあげられるのかなって。」
そっか,ヨシオの母は共感してもらいたかったんだ。ごめんなさい。
私も一緒に泣き出してしまった。
・・・・・・・・・・・・・
でも,本当にヨシオは弱虫なのか?
日がたつにつれて,私は そう思うようになった。
ヨシオは自分から手を挙げたり,発表したりするのは 苦手なのだが,国語や道徳のノートには結構いいことを書く。
発表させると,照れながらも うれしそうに 発表する。
本当は目立ちたがり屋の素質があるんだけど,ちょっとだけ自信が足りないだけなんじゃないかな。
いろんな人に弱虫って言われて,自分でもそう思い込んでいるんじゃないかな。
まず,一番の目の上のたんこぶ,カツヤを乗り越えさせなければ,そう思った。
放課後,2人に残るように言った。
「ヨシオ,カツヤとはどう?けんかはもうしない?」
「うーん,・・・」
ヨシオが 答えに困ってると,すかさず カツヤが 口を挟んだ。
「ヨシオ君の お母さんね, 帰りに 迎えに 来てるんだよ。
だから,最近 あんまり けんかは しないんだー。
でも,ママ~,ママ~,って,ヨシオって 赤ちゃん みたい。」
ヨシオは顔を真っ赤にしながらも,何も言わない。
「ヨシオ,今 カツヤの話を聞いて どう思った?」
「・・・・イヤだなって思った・・・。」
ヨシオは 今にも 泣き出しそうだ。
「じゃあ,はっきり嫌だって言わなくちゃ。
カツヤのほうを向いて,『イヤだ!』って言ってごらん。」
「ぃゃだ・・・。」
「それじゃ,伝わらない。『イヤだ!!』」
「ぃやだ。・・・」
「ダメダメ,『イヤだ!!』」
「イヤだ!」
「そう,その調子,ちゃんと相手の目を見て『イヤだ!!』」
「イヤだああ!!」
カツヤは きつねに つままれたみたいに,真ん丸い目をして 呆然としていた。
そんな 出来事も きっかけのひとつ だったのか,少しずつ ヨシオは 変わりはじめた。
音楽の時間に伴奏を したり,たまに 授業中に 手を挙げたり できるようになってきた。
そうこうするうち,3学期には ヨシオは クラスのリーダー的存在に なっていた。
まだ 少し線の細い感じは するが,もともと 頭の切れる子だ。
ヨシオは,自分は弱虫だと思い込んでいただけなのだ。
生活科で 地元の人を呼んでお祭りをしたときに,ヨシオが作文を 読む機会があった。
ヨシオが 自分からやりたいと 申し出たのだ。
そのときの様子が 地元の新聞に載った。写真付で。
拡大してコピーをし,お家の人に渡した。
次の日の連絡帳には,「家宝にします!」というお手紙が入っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・
子供は 小さいうち,母親の目を通して 社会を見る。
母親がどうしよう,どうしよう,と思えば,子供もどうしたらよいか わからなくなる。
弱虫と言われれば,そうなのかな,と思ってしまう。
でも,反対に 笑顔が少ない子に
「あなたが笑うととってもステキ。まわりがパッと明るくなるね。」
と毎日言い続ければ,少しずつだが笑顔の数が増えていく。
ヨシオは 今も 新聞のコピーを 持っているのかな。
それを 見たときに,どんな思いが よみがえるのだろう。
ふと,ちょっと 黄ばんだ紙を 想像した。
当時のアツい(暑苦しい?)教師ぶりを 思い出すわ。
あの頃は、スキルは未熟だったけど 情熱だけは、ひと一倍あったから。
昨日のブログに書いた「バカにされやすい子」のひとりは、ヨシオです。
カツヤからよく からかわれて、泣いてました。
このエピソードを思い出したのは、こちらのツイートから。
Dominique Apollon@ApollonTweets
It's taken me 45 trips around the sun, but for the first time in my life I know what it feels like to have a "band-… https://t.co/ooVmTTgziL
2019年04月20日 01:27
黒人であるドミニクさんが、45歳にして初めて、自分の「肌色」のバンドエイドを付けたときの ツイート。
「涙をこらえている」と表現されています。
バンドエイドは、こちら。
外国でも、まだまだ高価なのだそう。
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そういえば、日本のクレヨンも「肌色」がなくなって いつからから「ペールオレンジ」になった。
バンドエイドの「肌色」には 気づかなかったなあ。
んで。
本題に戻ります。
私たちは、相手の心の傷を治そうとして、つい
「こうしたらいいですよ」
「こんないい面もありますから」
「こう考えてみたらいかがでしょう?」
そうやって、その人の「心の色」とはちがう バンドエイドを押し付けがちです。
当時のわたしのように。
また、子どもたちにもそう。
「もっとこんなふうに育ったら、あなたは幸せなのに…」
というバンドエイドを貼ろうとするときがあります。
ええ、私もそういうときあります。
うちは思春期なので、見事にベリッとはがされますけどねん…。
小さい子だと、違和感を持ちながらも、自分を「お母さんの色」に染めようとするかもしれません。
1学期初めのヨシオのように。
だから、私たちは 自分の色を知り、相手の色を知ること。
心の色は見えない。
だからこそ、よく観察し、感じる。
自分の思いと、相手の思いを区別する。
ヨシオとそのお母さんとの出会いで、私は教師として ぐんと成長できたように感じました。
ああ、なつかしい。
いっぱい失敗して、失敗した数だけ、少しずつ「先生」にさせてもらったような気がします。
















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