最近、あの人の様子がちょっとおかしい。
口数が少なくなった。
以前は、仕事のこと、子どものこと。
何でも話してくれたのに、
今は「ああ」とか
「君に任せるよ」とかしか
言ってくれない。
困ったことがあっても、
いつも「大丈夫だよ」と言ってくれた。
その笑顔に何度も助けられたのに。
何があったのだろう。
そういえば、
数週間前にこんな会話をした気がする。
あの日、私は子どものことで
頭がいっぱいだった。
学校でトラブルを起こして先生に謝って。
自分のキャパはとっくに限界だった。
そんな時に、
あの人が急に、重いトーンで話し始めた。
「最近、ちょっとしんどい。」
だけど、
いつもの軽い愚痴かなって思って、
無意識に言葉を返してしまった。
「考えすぎ。」
「気にしすぎじゃない?」
もっと気楽にいこうよ、
という私なりの
励ましのつもりだったのに。
あの人は一瞬、言葉に詰まったような
気がしたけど、すぐにいつもの笑顔で
「そっか、平気」と言ってくれた。
その後、今日学校でこんなことがあった
と延々と話しちゃったけ。
その時もいつもの笑顔で
「大丈夫」って言ってくれたし。
でも、それ以来、
あの人は私の前で、
本当の顔を見せてくれなくなった
気がする。
今もあの人は、
相変わらず優しいし、
家族に気遣ってくれる。
けれど、その言葉には、
どこか心がこもっていない。
どうしてだろう。
「大丈夫だよ」
今日もそう言って笑うあの人の顔を、
どうしていいか分からず、
ただ見つめている。
「大丈夫。」
その一言に、
安心したこともあれば、
安心してしまったこともある。
大切な人の声も、自分の心の声も、
聞き逃さないために。
