私とチアキにはもう一人、小さい頃から一緒に遊んでた子がいたの。アキラっていう男の子なんだけど、やっぱり家が近くで、まあ、その子と遊んでいたのは小学校4年生ぐらいまでかな?女の子二人に男の子一人だと体裁が悪くなったのかしらね?あまり遊ばなくなっていったわ。もちろん、仲が悪いわけじゃないから、会ったときは仲良く話もするし、うん、その頃でも他の男子よりは仲良くしてたの。
チアキも同じように、というよりチアキは男子が苦手だったから、唯一普通に相手できるのがアキラだったわね。でもやっぱり、人を避けるようになってからは全然、お話すらしてなかったみたいだけど。
「藤原と最近、また仲がいいんだね」
「えっ?ああ、うん。同じクラスになったしね」
お昼休みにチアキの言うところの「外でボールをおっかけまわしてる」そんな時だったわ。たまたま一緒になって遊んでて、そんな時に突然聞かれたの。
「いつからかわからないけど、ずっと一人だったよね。気になってたんだ」
「気になってたんなら何とかしてよ」
「いや、そうは言ってもさあ、おっと」
遊びの最中だったからお話は途切れ途切れ。アキラが言うには、女子の事情だろうから下手に男子が入らない方がいいと思ってたみたい。それは正解ね。女子とは、もちろん避けられてるからってこともあるけど、でも全然付き合いのない子が特定の男子とだけ話をしていれば、それはそれで変な目で見られるわ。
アキラは特別女子から人気があったわけではないけれど、その頃の中学校ではね、男子の髪型は丸坊主って決まってたの。可笑しいでしょう。まあ、決まりは決まり、だからね、人気があったのはスポーツマンね。ただアキラは、どちらかといえば運動は苦手だったけど、容姿端麗というわけではなかったけど、とにかく頭が良かったの。テストではいつも一番。だから目立つ存在ではあったのよ。
「チアキが気になるの?」
「うん。なんかおとなしすぎて、昔からほっとけないところがあるからね」
「ぷっ、確かに」
「沢村は…ほっといてもしぶとく生きていくんだろうけど。」
失礼よね。私は仕返しに、何でそんなにチアキが気になるの?他に理由があるんじゃない?ってからかってやったわ。アキラは真っ赤になってたけど、本当のところはどうっだったんでしょうね?
「理由はもうわかってるの?」
「何?チアキのこと?」
「うん。無視されてる理由」
「そうね、アキラが想像してるのとはちょっと違うかもね。理由はわかってるんだ」
「聞いてもいいかな?」
私はまた茶化そうと思ったんだけど、アキラの顔を見てやめたの。真面目な顔だったのよ。それでも、飛んでくるボールには対応してたけど。
「私からは言えないんだ、ごめんね」
私ね、その後すぐにチアキに伝えたの。アキラが気にしてたよって。そうしたらね、なんとチアキも顔を赤くして、
「え…?アキ…ラ…君が…?」
って、うつむいちゃって。でも、嬉しそうだったのよ。私はピンときたの。わかるでしょう?だから、これはアキラも仲間にいれなくっちゃ、そう思ったわ。
「ねえ、チアキ。アキラにも相談してみたら?」
「えっ!な…何で?」
「アキラ、頭いいじゃん。それに…ムフフっ!」
「ちょ、カナっ!」
「あはは!多分、や、絶対力になってくれるよ。アキラなら何かいい方法を考えてくれそうだし」
その時の私はね、二人のキューピット、というようなことも一応考えにはあったんだけど、でもそれより、仲間が増えるというか、チアキが普通にできるお友達が増えることの方が嬉しかったの。全然知らない人を紹介するわけでもないし、それに、アキラは本当に物知りだったから、きっと頼りになると思ったの。
でも、チアキは拒んだわ。やっぱりね、人に知られたくないんですって。ずっと、二人だけの秘密にしときましょうって。でもそうなったら、もしかすると一生チアキの友達は私一人になっちゃうかもしれない。チアキはそれでもかまわないって言うんだけど、そういうわけにはいかないわよねえ。
「ダメだよ、そんなんじゃ」
「うう…でも…」
「でもじゃないよー。私だって多分人生設計があるんだから、ずっとチアキと一緒ってわけにはいかないんだよ」
「ぷっ、多分って。どうしてもアキラ君じゃないとダメなの…?」
「他の人がいいの?」
「…他の人はもっと無理…です…ううー…」
チアキが一人だった理由について、アキラはしつこく聞くようなことはなかったけど、それでもその日を境によく声をかけてくれるようになったわ。クラスは違ったけど、教室移動のときに会ったらちょっと立ち話をしたり。
だんだんね、休み時間はチアキと廊下で話をするようになったの。私がさりげなくそうし始めたんだけど、そしたらね、アキラが時々参加してくれるのよ。チアキも嬉しかったみたい。そしてついに、アキラを図書室に誘ったの。お昼休み一緒にどう?って。まあ、チアキは「えっ?」って顔をしたんだけど、私が誘っちゃったのよ。
「ずいぶんマニアックな本を読むんだねえ」
「うん、最近ね、興味あるんだ」
「何か調べ物?」
チアキったら、その日に限って普通の本を選んできてるのよ。可笑しいでしょう?おかげで私の趣味かと思われちゃったのよ。
ちょうどそのとき私が持ってきてたのはある科学雑誌。怪奇現象や超能力を特集していたんだけど、実はアキラもこういうの好きだったの。チアキには悪いけど、話が弾んじゃったわ。あ、もちろん、チアキも話には入ってきたわ。といっても、最初は私が引っ張り込んだんですけどね。
「調べるって言うよりは、ただ読んでるだけなんだけどね。不思議なことって、結構あるもんだねえ」
「そうみたいだね。でも、この本って随分前のやつみたいだけど、今ならもうトリックがわかってたりするかもね」
「トリック?」
「うん、全部ってわけじゃないんだろうけど…意外とウソが多いみたいだよ」
「大掛かりな手品みたいなもの?本当の話はないの?」
「うーん、どれが本当の話なのかは僕にはわからないけど…でも、僕はほとんど信用してないよ」
「でも、結構詳しいよね?」
「うん、信用はしてないけど、例えばこの本みたいに超能力が使える人が実際にいたら面白いなあって思うじゃん」
「…面白い…かなあ…?」
チアキは不満そうとも不思議そうとも見える顔で、そうつぶやいたの。私もアキラの意見には賛成だったわ。でも、チアキは身近にそういう人がいたら怖くない?って言うの。
「もちろん、その人が悪い人だったら大変だよね。うん、怖いと思うよ。そういう能力を使える人は正義の味方みたいな人がいいな」
「それはそうよね」
じゃあ、もしアキラがそういう能力を持っていたら、とか、こんな能力が欲しいよね、なんて話をしてたんだけど、チアキがね、聞いちゃったの。
「もし…もしもだよ。私…が、そんな力持ってたら…どう?」
急な質問に私は固まってしまって、アキラも「へ」だか「ほ」だかわからないような声で返事をしたわ。私はまさか、チアキがそんなこと言い出すとは思ってなかったし、アキラにとってもチアキがそういう冗談を言うのが意外だった見たいね。
「藤原が超能力者ならそれこそ全然怖くないよ、ははっ」