先日、ある競技の元全日本代表選手と話していて、何気ない一言が気になった。
「練習は勝つためにやるのではなく、自分のためにやる」
一見、勝負の世界とは相反するように感じるこの言葉。
しかしよく考えると、この一言の中に“本物の強さ”の本質があるように思う。
勝つためではなく、成長のために
多くの人は、勝つために練習をする。
勝利という明確なゴールがあるからこそ努力できる。
それは決して悪いことではない。
しかし、勝敗は外部の評価にすぎない。
自分の力ではコントロールできない要素も多く含まれている。
だからこそ、勝敗という結果だけを目的にしてしまうと、負けた瞬間に練習の意味を見失ってしまう。
一方「自分のため」に練習する人は勝っても負けてもブレない。
練習そのものが“自分を高めるための道”になるから。
主体性が生む「強さ」
「自分のためにやる」とは、自己中心的になることではない。
それは“自分で決めて自分でやり抜く”という、主体的な姿勢の現れである。
「コーチに言われたからやる」
「周囲がやっているからやる」
そうした“他律的な練習”では、いつか限界が来る。
一方で「自分の弱点を克服するため」「昨日の自分を超えるため」と目的を自ら定めて動く選手は、練習の吸収力がまるで違う。
練習を“やらされている時間”から“自分を創る時間”へと変えられる人が最終的に強くなる。
継続を支えるのは「他人のため」ではなく「自分の意思」
勝つための練習には終わりがある。
しかし、自分のための練習には終わりがない。
だからこそ、「自分のためにやる」という意識は継続の原動力になる。
試合に負けても、メンバーから外されても、環境が変わっても、練習を続けられる。
それは“誰かに勝ちたい”のではなく“自分を高めたい”という動機があるから。
チームのために、自分を磨く
この言葉は、チームスポーツにも深い意味を持つ。
「自分のためにやる」ことは、決して“わがまま”ではない。
むしろ、自分を高めることがチームの信頼を生み、全体のレベルを押し上げていく。
自分がベストを尽くすことが、結果的にチームへの最大の貢献になる。
だからこそ、「自分のためにやる」という姿勢は、チームの一体感の基礎でもある。
「勝利」は目標、「練習」は人生
勝敗は一瞬。
練習は日常。
人生においても同じことが言える。
仕事も、学びも、誰かに勝つためにやるのではなく、自分を成長させるためにやる。
その積み重ねが、結果として人を大きくしていく。
だからこそ、この言葉はアスリートだけでなく、すべての働く人に響く哲学なのだ。
勝利は結果として訪れるものであって、目的ではない。
そう思える人こそが、どんな状況でも成長を止めない“真の勝者”なのだと思う。