最近、倒産が増えている。
コロナ融資(ゼロゼロ融資)が返済期間を迎えてそれに耐えられない企業はこれからも出てくる、今年の倒産件数はさらに増えていくであろう。
倒産の原因は融資の返済ができないだけではなく、売上の減少や原材料の値上げなどさまざまではあるが、最近注目なのが「人材不足」による倒産や休業である。
倒産までいかなくても、人不足で閉店、休業している飲食店は増えている。
麹町でも「休業」しているお店を見かけるようになった。
店主に聞いてみると「お昼に働いてくれる人がいない」とのこと。
ランチの時間はアルバイトに頼っているお店は多い。
アルバイトの人がいなくなってしまうと昼夜自分たちでやることになる。
それはさすがにしんどい、ランチをやめて夜だけ営業にする判断も仕方なし。
そういうお店が増えている麹町界隈は「ランチ難民」が多発している。
キッチンカーも増えているが、ピーク時はそれらも行列ができる始末。
そんな中、仕事終わりに馴染みのお店に顔を出してみると結構な繁盛ぶり。
このお店がランチ営業をやめたのはコロナ禍真っ只中。
夫婦二人で切り盛りする「ビストロ」スタイルのお店。
ランチもかなり繁盛していたが、二人の体調も考えて夜だけの営業に切り替えた。
旦那さんがシェフで奥様が接客担当。
フランス帰りのシェフの料理はワインとの相性もバッチリでいつ行っても楽しめる。
そして接客担当の奥様(ママ)が良い。
愛想も良いし、機敏でサービスも行き届いている。
会社帰りのグループ、カップル、親子、そして自分のような一人客まで全ての層にウケが良い。
当社でも毎年の納会やグループ会食でもお世話になっている。
「最近随分と繁盛してるじゃない?」
「なんかね、最近お客さんが増えた気がする」
忙しい中でも元気なママである。
「周りのお店はここまで繁盛してない気がするよ」
「そうなの?私たちはよくわからないけど、他のお店はどうなの?」
「ここまで盛り上がってないんじゃない、そう言えばプリンス通りにあったイタリアンのお店最近やってないみたいだけどね」
「ああ、あそこはね、ピザを焼く人が辞めちゃってね、それでお店閉めてるらしいわよ」
「え、イタリアンのお店でピザ出せなかったら洒落にならんね!」
「そうなのよ、コロナの時にお店を閉めてたりしてたからみんな辞めちゃったみたいよ」
「給料が出なかったり減ったりすれば辞めざるを得ないもんね、そういえば近くのイタリアンも休業してたね」
「あそこも人手不足らしいわね」
「それにしてもそんな中で繁盛してるこのお店はすごいね、秘訣は何よ?」
「そう?シェフの腕が良いからかな?」
「おやおや、ご馳走様!」
こんな他愛もない会話が楽しめるお店が減ってしまった。
昔はこういうお店がたくさんあった気がする。
大手のチェーン店では人手不足解消のために、注文の端末化が進み、行き過ぎた感染防止によってマスク姿で手袋着用、とてもではないがコミュニケーションなどできる状況ではない。
食事というのは味も大切だが、雰囲気や会話も大切なのだ。
大切なものが失われてしまった飲食店からはお客さんも去っていくし、スタッフも辞めてしまう。
同調圧力が大好きな日本人は時に大切なものを見失いがちである。
そろそろ「自ら考えて行動する」ことが大切なことだと気づくのかもしれない。
社会が変化する時には「個人の判断」で良くも悪くもなる。
まさに「個人店」が生き残る時代が到来している。
そろそろ目覚めるべき。
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