出典 こんなによくなる!糖尿病
鈴木吉彦 著 朝日新聞出版から引用連載
こんなによくなる!糖尿病 驚きの「インクレチン」新薬効果
GLPー1の優れている特徴は様々あります。GLPー1は、知れば知るほど優れた働きをする物質であることがわかりますが、ここでは、特に重要な四つの特徴を紹介したいと思います。
第 一に、何といっても重要なのは 「血糖値に合わせてインスリンを分泌する」という特徴です。 GLPー1はインクレチンなのでインスリンを分泌させますが、血糖値が上が ったときだけ、膵臓 のβ細胞に 「インスリンを出してください」と働きかけるのです。
逆に、血糖値が正常なときは何 も働きかけず、インスリンの分泌を促すようなことはしません。GLPー1を、「臨機応変な対処 が得意な、インスリン製造工場のマネージャー」に喩えることができます。
ブドウ糖が食べ物から 取り込まれていないときは、β細胞に指示は出ず、ブドウ糖がたくさん取り込まれたときは 「これ は大変。インスリンをつくる準備をしてください」と指示を出します。しかも、小腸から膵臓へという 遠隔指示 です 。
次に、二番目として 「グルカゴンの分泌を抑制する」という特徴もあります。先ほど紹介したように、グルカゴンは、インスリンと正反対に血糖値を上げるホルモンです。
GLP-1は、膵臓の α細胞に対して 「グルカゴンをつくるのを抑えてください」という働きかけもします。この働きか けによって、無用な高血糖を抑えることができます。
GLP-1というマネージャーは、インスリンエ場を管理しているだけでなく、グルカゴンエ場にも指示を出しているというわけです。
三番目として 「β細胞を増生する」という、たいへん興味深い特徴もあります。GLP-1というマネージャーは、β細胞にインスリンをつくれという指示を出すだけでなく、なんとβ細胞というインスリン製造工場そのものを ′′建て増し′′しているかもしれないのです。
これを私は 「増生」 という言葉で表現しています。β細胞が増生するということは、つまリインスリンを分泌する細胞 が増えるということですから、もちろん血糖値を下げるのにプラスに働くことは言うまでもありません。
実際、GLP-1を働きやすくさせるようにし向けたラットで、β細胞の量が多くなってい ることを確認した動物実験も報告されています。
最後に四番目として 「腹人分日で抑える」という、これまたとても興味深い特徴があります。GLP-1が、脳の 「食欲中枢」という部分に 「もうお腹いっぱいですから」という情報を伝えてい る可能性があるといわれています。
食欲中枢は 「お腹が空いたぞ」という感覚を生み出す脳の司令室のようなもの。この食欲中枢に対して、GLP-1が 「いや、もうお腹いっぱいですから」と伝 えているのです。
実際にGLP-1は、腸の下の方から出るので、食べ物が十分に届いていること を脳に知らせていると考えると納得ができます。その結果、′′腹人分′′で食事を抑えることができ るようになると考えられています。
つまり、GLP-1が働けば、苦労しないでも自然にダイエッ トができるようになるわけです。臨床の研究でも、GLP-1を働きやすくさせるようにし向ける と体重が減ったという報告があります。
以上をまとめると、GLP-1は 「血糖値に合わせてインスリンを分泌する」「グルカゴンの分 泌を抑制する」「β細胞を増生する」「腹八分目で抑える」という特徴を持っていることになります。
GLP-1は、β細胞に指示を出すだけでなく、工場を建て増し、さらにα細胞や脳にも連絡をするという、本当に有能なマネージャーであることがわかってきました。
いずれの特徴にも共通するのは、「糖尿病を治すという点でプラスに働く」ということです。インスリンの分泌を促したり、グルカゴンの分泌を抑えたりすることは血糖値を程よく維持することにつながります。
β細胞が増生することももちろん同じです。さらに、太っている人では、体中の脂肪細胞の量が多いために、このことがインスリンを効きづらくさせていることもわか っています。
自然にダイエットをする働きで痩せれば、体中の細胞はインスリンに対して敏感になります。これ も、糖尿病をコントロールするのにプラスに作用しているわけです。

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