大学卒業後3年間ブリヂストンで働いたので懐かしいと思い東京駅の八重洲口から銀座まで昔の馴染みの地域を今回来日中に散歩してみました。よく昼休みに時間をつぶしたブリヂストン博物館も立派になり高層ビルになっていました。更には周りにも高層ビルが次々と立ち並び一見日本経済が上海のように高度な成長をしているという錯覚を持ちます。但し、日本のGDPも人口もそこまで増えていないという実態があり、?が頭に出てきます。
東京の都市開発バブル
調べたところ、2016年から現在までに虎ノ門ヒルズ40棟分の事務所スペースが足され、更にビル開発が進んでいるそうです。2023年には麻布台ヒルズ、東京八重洲だけでなく、日比谷公園周辺、パレットタウン、六本木南、新宿駅西、渋谷駅南、品川駅西、中野サンプラザ跡地、等あちこちで開発が進み、これらは100年に一度の大開発だそうです。金利が安く、他に魅力的な投資先が日本国内で見つからないのでビル投資にお金が流れることはわかります。でも一体誰の何のためにこれらをやっているのでしょうか?海外の企業や人に好まれる都市づくりだそうですが、なぜ海外の人や企業がわざわざ東京に来る必要があるのでしょうか?どの企業が何のために東京に事務所を置くのか聞きたいです。開発をしている一方ビルの空室率はコロナ以降のリバウンド以外は増え続けています。更に円安で日本のバーゲンを買いあさっている外国人観光客や投資家がタワマンを買っています。彼らが、そのまま東京に長期的に残り経済に貢献するといったことは一切想定できないのです。ビジネスや労働関連の規制が多く、税金もそれなりに高い日本は海外企業からみて事業所を開くのには魅力的には見えません。海外から企業を誘致したいのであれば、ビル開発で見た目をきれいにするより、日本は規制緩和、減税などを実施する方向に行くべきです。
今から15年ほど前、たぶんブログにも書いたと思うのですが、CVSの卒業生で三井物産に就職した卒業生に招待され新築の高層ビルを見たことがあります。丸の内から皇居に面する場所に高層ビルを建て、ホテル以外のオフィススペースのMarketingをやっていました。「誰がこんな場所に事務スペースを必要とするんですか?」と聞いたところ、「外資金融」や「IT企業」だと言っていました。私は当時多くの外資金融が中国資本を意識してシンガポールなどにアジアの本拠を移転していたこと、更にはIT企業はネットワークを活用したリモート型の労働環境開発をしていたので「意味がないのでは?」と言ったら、卒業生は「そうなんです。でも上に売れと言われて…」と答えていました。そしてその上には上がいて、バブルの時と同様にその責任は政府にまで遡ると思います。まるで1985年に低金利で不動産バブルが起き、バブル崩壊で日本の経済の繁栄が終わってしまった状況の繰り返しになります。当時は金利引き締めでバブルに歯止めをかけましたが、今回は日銀が多額の政府負債を購入しているので金利を上げれない状況、更には円安による海外からの投機目的の資金流入がその背後にあります。つまり、その経済にファンダメンタルな需要と供給は存在していないのです。タワーマンションもそうです。一部の富裕層以外に海外からの投資、特に中国からの投資があります。それらは市場価格が落ち始めた際には一気に売りに出ます。住居として住んでいる人とは状況が違うのです。だから住宅ローンを組んでそのような物件を購入した人はバブルの時と同じように被害者となるか、Defaultが多発してサブプライムローン危機のような金融危機が起きます。
バブル経済の再燃、アベノミクスの大失態
ビルなどの大型のプロジェクトは莫大なコストとかなりの下準備が必要になります。恐らく10年~30年はかかるでしょう。莫大な資金を市場に注入させるアベノミクスは当時東京オリンピック開催決定などで盛り上がり、更には六本木ヒルズの成功などで沸いていた開発ブームを生み、その結果として今これだけのビルが東京に立ち並んでいるのだと思います。私の住むロサンゼルスやハワイも同様に開発が進みましたが、ロサンゼルスではスタジアム、大学や学校、役所、住宅といったエリアが中心で、ビルスペースはそこまで増えていません。ホノルルでは老人介護施設や外国や本土からリタイヤする人々向けのコンドなどが次々と立ちました。但し、これらは需要があるので民間資本での開発が進んだというのがわかります。しかも金利が高いのでリスクも大きくなります。アベノミクスではマネーサプライを増やしたことによる円安により輸出産業が伸びると想定していました。実際には格安になった日本に外国人観光客が増えたこと、割安になった株式市場や不動産市場に外国資本が投入された以外あまり恩恵がありません。むしろインフレと相対的な低所得で人々を貧困化させたにすぎません。つまりアベノミクスは円を安くしただけで、外国資本による買いあさりを起こし、全体としてただ日本国民を貧困化させた大失敗の政策であったのです。
バブル経済の政府責任
自民党を中心とした日本政府の一番の問題は、アメリカ寄りの自由主義を主張する一方で、経済面では中国共産党のように極端に政府がそれに関与している点です。アメリカなどではタブーとされる中央銀行の政府国債の買い入れ、政府による為替の市場介入、極度な労働関連の法律、産業規制に至るまでかなりのレベルで政府が介入しています。それらの問題は平和な世の中で、人々の興味の中心が経済にある中で、選挙活動で政治家が経済活動をもけん引するイメージを出していることです。経済の基本は「神の見えざる手」であり、自然な経済活動の流れの中にあります。人工的に何かをしようとすると大きな破壊が起きます。バブルが崩壊したのが極度な金融緩和による不動産価格高騰であり、その責任が日本政府にあったこと(本来大蔵省―金融庁が、極度な不動産投資に対する金融機関の融資を監査監督する必要があった)、更にはバブルを政治的に後押ししていたこと(日本の国力増大のイメージを与えた)を忘れてはなりません。結局日本の豊かな経済水準は今では世界の中のバーゲン国とまで落ち込んでしまったのです。ちょっとした金融引き締めでバブルは一気に崩壊していきました。今回も低金利に支えられたバブルに見えます。もう一度バブルを作って人々に錯覚を与えるのではなく、人口問題、教育問題、といった国民の生産性を上げるためのファンダメンタルズにフォーカスするべきです。生産性は世界レベルで比較され、経済の原動力になります。ここまで為替が落ち込んでしまうと、労働人口補填の為の移民さえ集めることができない可能性が出てきます。なのに財政赤字対策に関してどの議員も何も言おうとしていません。(まずは国会議員数を減らすべきです。)
歴史的な都市化の意義と時代の流れ
東京中心型の日本経済は過去それなりに意味がありました。江戸時代は江戸を中心とした経済構造を構築することで地方経済を江戸に依存させることで徳川幕府を264年も存続させることができました。明治以降も首都依存型の経済構造を拡大させ、生産拠点の集中化により高度経済成長を成し遂げ、それは第二次世界大戦の後も続き今に至っております。但し、ITや特にインターネットの普及により、リモート面で経済構造が大きく変わる中、企業や実質的な経済活動はグローバル化し、都市集中型のモデルは時代遅れになろうとしています。私の住むハワイでも、リモートでメインランドの会社で働く人は少なくありません。企業にとっても都心の高いビルを持ったり、高いリース代を払う意味はないと思います。社員だって何時間も無駄な通勤時間、そして通勤費用を支払う必要がなくなるわけです。世の中がそのような流れになる中でなぜ莫大な費用を投資してビルを建て続ける必要性があるのでしょうか?
高層ビルのリスク
9-11の際にデロイトの入っていた事務所はロックダウンになり、当時の状況から大きなビルにトラップされ仕事ができないリスクが語られました。なので、それ以降色々な地域に小さな事務所がサテライトとして開設し、それらをインターネットで繋ぐことで生産性、社員に対する便宜性、リスク分散が一気に上がりました。大都市、更には大型ビルには色々な危険があります。津波が来て東京が水浸しになり、電気が何週間も止まってしまったらどうでしょうか?犯罪者やテロリストによってトラップされたら、燃料不足で発電機が止まってしまった後、タワマンの上層階に住んでいたらどうなるでしょうか?台湾紛争が起き、日本に飛び火して、ミサイルが飛んできたら、火事が起きたら、地震や洪水だけでなく、実は都市にはそれなりのリスクがあるのです。第二次世界大戦の間、都会の人々は疎開したり、地方に食べ物を求めて移動しました。今の日本は相変わらず地方経済を弱体化させ、意味もなく都市開発、都市集中を続けています。私にはそのメリットがまったく見えません。