不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会(3) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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2020年2月から2021年3月にかけて国土交通省の「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討が行われ、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は2020年11月11日の第3回の検討内容についてです。

■第3回検討会(2020年11月11日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00015.html

(1)ちんたい協会(全国賃貸住宅経営者協会連合会)からのプレゼン

1)事故物件になった場合の対処法の実際

①賃料値下げ
・この対処法が多くみられる
②告知しても拒否されない方に借りてもらう
・仕事上、人の死と接する機会の多い医療機関・介護施設、葬儀関係者や宗教観の違う外国人など。
③一定期間、従業員や知人等を住まわせ、次の入居者には告知しない
・告知義務逃れとも捉えられる
④一定期間、貸し倉庫や貸しスタジオにする
・破損が大規模な場合は住宅を解体して、駐車場にする
・住宅でないため告知義務は不要

2)原状回復費用や未収家賃等の精算

●現状
〇原則
・連帯保証人
〇身寄りのない居住者の場合
・居住者が加入した家財保険や家賃債務保証で精算
・家主加入の損害保険も利用されている。

●法定相続人が存在する場合の事例
〇状況
・60歳男性の孤独死の場合
・賃料:8万円
・発見までの期間:死後1ヵ月経過
〇損害額
・現状回復費用:654万
・工事期間等:約1年間。臭気発生元を調べるためにスケルトンにする必要があった。
・空室による家賃収入損失:8万×12か月=96万
・原状回復後の家賃減額による損失:2年間は8万から6.3万に家賃減額
 (8万-6.3万)×24ヵ月=40.8万
・合計:791万が法定相続人に請求

●法定相続人が存在しない場合の事例(上記と同じ状況の場合)
・家賃債務保証を利用:本来入るべき家賃分(8万×12か月=96万)
・家主加入の損保を利用:減額分の損失家賃(40.8万)
・家財保険のオプション(上限100万):原状回復費用654万円のうちの100万
・残った損失:原状回復費用の残った分の554万は家主が負担。

(2)議論・検討

●宅建業者による説明について
・消費者からすれば、心理的瑕疵については契約前の比較段階で説明してほしいもの。不動産事業者は、売主・買主が伏せたい情報、個人情報をどのように収集し、収集した情報をどこまで消費者に開示すればよいのか、ということも大きな課題。
・殺人事件等、報道され誰もが知っている状況では、宅建業者が知らないということは許されず、告知すべき。一方、人知れず自殺した、孤独死したという事案はプライバシーに関わるものであり、売主から告知されなければ、宅建業者も把握できない。

●宅建業者による調査方法について
・近隣住民からの聞きとり情報はあくまで伝聞であり、確たる根拠がない。また、インターネットサイトには誤った情報も多く掲載されている。
・マンションの場合、専有部分は管理会社の管理の対象外であり、専有部分に関する情報は、宅建業者から売主へ確認するべきである。また、宅建業者は、共用部分に関しては、管理会社からの情報提供が必要で、管理会社が把握していない場合や、管理組合から情報開示の承諾が得られない場合があることにも留意が必要。
・売買契約において、物件状況等報告書において、心理的影響があると推定される事実について告知する必要性に言及し、売主の適切な告知を促している。

●心理的瑕疵に関する相談内容の傾向について
・物件外の事件・事故等、心理的瑕疵があると言い切れないような事案に関する相談が多い。
・自然死した借主の保証人・相続人に対し、貸主・管理業者が、これまでの裁判では認められていないような、多額の逸失利益・過剰な原状回復費用を請求している実態は問題ではないか。
・心理的瑕疵に関する告知の基準が明確になれば、到底認められないような主張は減ってくるのではないか。