孤独死等、入居者死亡後の残置物の処理等について | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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残置物の処理等に関するモデル契約条項
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000101.html

(1)孤独死等、入居者死亡後の残置物の処理等における問題点

・居室内にある残置物と賃貸借契約は相続の対象になるので、独断で処分してしまうと、後に現れた相続人との間でトラブルとなる可能性がある。

・相続人の有無や所在が分からなかったり,相続人との連絡が付かなかったりすると,賃貸借契約を終了させ,また,物件内に残された動産(残置物)を処理することが困難になってしまう。

(2)残置物の処理等に関するモデル契約条項の策定

・上記問題点への対応として、国土交通省と法務省が、入居者が亡くなってしまった場合の円滑な賃貸借契約の解除と残置物の処分を可能とするモデル契約条項(死後事務委任契約)を公開した。
 
・モデル契約条項の対象の契約は、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除と残置物の処理を内容とした死後事務委任契約等となる。

・モデル契約条項は、その使用が法令で義務づけられているものではないが、モデル契約条項を利用することにより、合理的な死後事務委任契約等が締結され、残置物を円滑に処理することができるようになる。

●モデル契約条項を利用する際の注意点
・単身の高齢者(60歳以上の者)が賃貸物件を借りる場合を想定。

・入居者の財産の管理に一定の負担をかける面があるため、家主の契約関係や残置物の処理への不安感が生じにくい場面で利用した際には、民法や消費者契約法に違反して無効となる可能性がある。
※モデル契約条項が無効となる可能性がある入居者の例:若年層、60歳以上の二人世帯、遠方でも保証人が確保できる場合(保証人に残置物の処理を期待することもできるため)

・入居者と受任者がモデル契約条項の内容を十分に理解したうえで同意していることが必要。

(3)モデル契約条項を利用した契約等の手続きの概要

1)契約方法

・賃貸借契約の締結前に入居者と受任者との間で、①賃貸借契約の解除と②残置物の処理に関する死後事務委任契約を締結し家主と入居者の間の賃貸借契約に①②に関連する条項を盛り込む。

①賃貸借契約の解除事務の委任に関する契約
・家主との合意によって入居者の死亡時に賃貸借契約を解除する代理権を受任者に与える。

②残置物の処理事務の委任に関する契約
・入居者の死亡時における残置物の廃棄や指定先への送付等の事務を受任者に委託する。
・入居者は、『廃棄しない残置物』(相続人等に渡す家財等)を指定するとともに、その送付先を明らかにする。
・受任者は、入居者の死亡から一定期間が経過し、かつ、賃貸借契約が終了した後に、『廃棄しない残置物』以外のものを廃棄します。
 ただし、換価することができる残置物については、換価するように努める必要がある。

2)受任者のなり手

・入居者の推定相続人
・居住支援法人
・管理会社等の第三者
※推定相続人が判明している場合は、推定相続人のいずれかが受任者の第一候補となることが望ましい。
※家主は入居者と利益相反の関係にあたるため受任者となることができない。

3)委任者(入居者)が行うこと

・自分の死後、廃棄する家財と"指定残置物"として廃棄しない家財を入居中に整理。
・廃棄しない家財については『リストの作成』『目印となるシールを貼る』『受任者に示した一定の場所(金庫等)に保管』など、廃棄しない家財であることを受任者が認識できるようにする必要がある。
・家財を渡す相手の住所等の送付先についても受任者が分かるように準備。
※廃棄しない家財として指定されていないものは、原則として廃棄される。

4)受任者が行うこと

●賃貸借契約の解除
・把握できている相続人が、引き続き居住することを希望するかどうか等の事情を確認したうえで、賃貸借契約を継続する必要がなければ、家主と合意のうえ、賃貸借契約を解除することができる。

●残置物の処理
イ)廃棄する家財
・入居者の死亡から一定期間(少なくとも3か月)が経過しかつ、賃貸借契約が終了した後に廃棄することができる。

ロ)廃棄しない家財
・入居者から指定された相手に送付。

ハ)換価した又は居室内に残された金銭
・入居者の相続人に返還。
・相続人が明らかでない場合には供託する。

※指定されているかどうかにかかわらず、残置物を廃棄、送付、換価し又は別の場所に保管するための搬出は、入居者が事前に指定した通知先に通知後2週間が経過したら行うことができる。

5)家主が行うこと

・入居者が亡くなったことを知ったときは、死後事務委任契約の受任者に通知する。
・受任者が物件内に立ち入るために、開錠などの協力を求められることがある。
・受任者が残置物を廃棄、送付、換価し又は別の場所に保管するために搬出する際は、受任者以外の第三者の立会いが必要であり、家主(管理会社)が立会いを求められることもあり得る。

(4)モデル契約条項の概要

1)全体の概要

以下の3つのまとまりからなる。

①解除関係事務委任契約
・賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に,賃貸借契約を終了させるための代理権を受任者に授与する委任契約の条項

②残置物関係事務委託契約
・賃貸借契約の終了後に残置物を物件から搬出して廃棄する等の事務を委託する準委任契約の条項。

③賃貸借契約に上記(準)委任契約に関連する条項を設けるもの
・賃貸借契約の一部であるから,賃貸人と賃借人との間で締結される。

※解除関係事務委任契約と残置物関係事務委託契約は委託される事務の内容が異なることから異なるまとまりとして条項案を示しているが,同一の受任者との間で締結する場合には,その形式も1通の契約書として差し支えない。

2)解除関係事務委任契約のモデル契約条項

〇解除関係事務委任契約とは
・賃貸借契約の存続中に賃借人が死亡した場合に,合意解除の代理権,賃貸人からの解除の意思表示を受ける代理権を受任者に授与するもの。

〇受任者
・賃借人が死亡すると賃貸借契約上の賃借人としての地位は相続人に相続されるため,これが解除されると相続人がその地位を失うこととなる。
→この契約に基づく代理権の行使は相続人の利害に影響するため,受任者はまずは賃借人の推定相続人のいずれかとするのが望ましく。
→推定相続人の所在が明らかでない,又は推定相続人に受任する意思がないなど推定相続人を受任者とすることが困難な場合には,居住支援法人や居住支援を行う社会福祉法人のような第三者を受任者とするのが望ましいと考えられる。

〇第3条(本契約の終了)
以下の各号に掲げる場合には,本契約は終了する。
② 受任者が委任者の死亡を知った時から【6か月】が経過した場合

・②は,例えば委任者の相続人が委任者の賃貸借契約上の地位を承継することを希望しているため,受任者が賃貸借契約の終了に関する代理権を行使しないこととした場合を想定した規定である。
 このような場合には終了に関する代理権を存続させる意味はないが,解除関係事務委任契約が当然に終了するわけではないため,一定の期間の経過により契約を終了させることとしたものである。

・すみ付き括弧内には,受任者が委任者の死亡を知ってから解除関係事務委任契約や残置物関係事務委託契約に基づく委任事務を処理するまでに要するであろう期間を参考に,ある程度余裕を持った期間を記載することを想定している。

3)残置物関係事務委託契約のモデル契約条項

〇第4条(指定残置物の指定)
3 本物件内に委任者以外の者が所有する物が存するに至ったときは,委任者は,第1項及び第2項の規定に従い,遅滞なく,これを指定残置物として指定しなければならない。

4 委任者が,本物件又はその敷地内に存する動産を遺贈し,特定財産承継遺言をし,又は委任者の死亡によって効力を生ずる贈与をしたときは,委任者は,第1項及び第2項の規定に従い,遅滞なく,その目的である動産を指定残置物として指定しなければならない。この場合において,委任者は,指定残置物の遺贈又は特定財産承継遺言について遺言執行者を指定し,又はその指定を第三者に委託したときは,その遺言執行者又は第三者をその指定残置物の送付先としなければならない。

・第3項及び第4項前段は,他人物が本物件内に存するに至った場合や特定財産承継遺言,遺贈,死因贈与をした場合には,その目的物である動産を指定残置物として指定しなければならないこととした。

・遺贈の履行は,遺言執行者がある場合には遺言執行者のみが行うことができることとされている(民法第1012条第2項)ため,第4項後段は,委任者が指定残置物の遺贈について遺言執行者又は遺言執行者の指定を第三者に委託したときは,その者をその指定残置物の送付先にしなければならないこととした。

〇第6条(非指定残置物の取扱い)
1 受任者は,委任者の死亡から【3か月】が経過し,かつ,本賃貸借契約が終了したときは,非指定残置物(保管に適しないものを除く。)を廃棄するものとする。ただし,受任者は,換価することができる非指定残置物については,できるだけ,換価するように努めるものとする。

2 受任者は,委任者が死亡したときは,非指定残置物(保管に適しないものに限る。)を廃棄するものとする。

3 受任者は,廃棄若しくは換価のため又は第9条第3項に基づき非指定残置物を本物件から搬出する場合は,搬出するに当たって,第三者(賃貸人,本物件に係る管理会社又は本物件に係る仲介業者等を含む。)の立会いの下,非指定残置物の状況を確認・記録しなければならない。

・残置物の処理に関して事後的に紛争が生ずる可能性があることも否定することができないことから,これを可及的に防止するため,委任者の死亡から非指定残置物を廃棄等するまでに一定の期間をおくこととした。この期間は,仮に3か月としているが,具体的な契約においては実情に応じて当事者において合意によって定めることになる。もっとも,上記のような趣旨に照らし,3か月を下回る期間を定めることは避けるべきである。

・非指定残置物の廃棄等を行うのは,死亡から3か月が経過しているだけでなく,本賃貸借契約が終了している場合である。賃貸借契約が終了していない時点では,この賃貸借契約が相続人に承継される可能性が残っており,その場合には残置物が必要となる可能性がある(例えば家電など)からである。また,賃貸借契約が終了していなければ賃料も発生するため,残置物が存置されていても賃貸人の被る損害は小さい。
 保管すべき3か月の期間の起算点は死亡時であるから,死亡から3か月が経過していれば,本賃貸借契約終了後直ちに廃棄等に着手することができる。

・第2項は,非指定残置物のうち保管に適しないものの取扱いに関する規定である。食料品など3か月間保管することができないものがこれに当たる。これについては,委任者が死亡したときは,直ちに廃棄することができることとしている。

・第3項は,受任者が,第三者の立会いの下,搬出前の非指定残置物の状況を確認・記録すべき旨を規定している。本物件内にどのような動産があったか,その処分方法が適切であったかなどを巡ってその後紛争が生ずることもあり得ることから,これに備えて廃棄等・搬出前の状況を確認・記録することとしたものである。この確認・記録は,例えば,写真撮影等によることが考えられる。立ち会う第三者としては,相続人,委任者死亡時通知先などが考えられるが,上記の趣旨に照らして,括弧書きのとおり,賃貸人や管理会社,仲介業者等が当該第三者となることが妨げられるわけではない。

4)賃貸借契約におけるモデル契約条項

〇第2条(賃借人の死亡等の場合の通知義務)
1 賃貸人は,賃借人が死亡したことを知ったときは,速やかに,解除関係事務委任契約の受任者(これと同内容の契約が後に締結された場合にあっては,当該契約の受任者)に対し,その旨を書面又は電磁的記録により通知しなければならない。

・賃借人が死亡しても,解除関係事務委任契約の受任者はこれを知るとは限らないため,賃貸人がこれを通知することとしたものである。最初に締結された委任契約が解除されるなどして新たな委任契約が締結されているときは,その受任者に対して通知を行う。