標準管理規約・管理計画認定制度の見直し等の検討状況(1) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ(2023年8月)」にもとづき、標準管理規約・管理計画認定制度の見直し等が国土交通省が設置したワーキンググループで検討されています。検討状況の資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令和5年10月30日の第1回の検討内容についてです。

■第1回(開催:令和5年10月30日)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000142.html

(1)管理計画認定制度のあり方について
1)マンションの管理計画認定制度の現状
2)管理計画認定制度のインセンティブ
3)新築マンションを対象とした認定の仕組み(予備認定)
4)管理計画認定制度等のあり方に関する検討の方向性
5)意見

(2)マンション標準管理規約の見直し
1)デジタル技術の活用
2)EV用充電設備の設置推進
3)意見


(1)管理計画認定制度のあり方について

1)マンションの管理計画認定制度の現状

●認定実績
・令和5年9月末時点の認定実績は212件。(国交省が把握しているもの)
・認定マンションの築年数別の割合は「築10年未満」が約3割、「築10~20年未満」が2割であり、築20年未満のマンションが約半数を占めている。一方で、築40年以上の高経年マンションにおいても12%の事例がある。

●マンション管理適正化推進計画の作成動向
・県庁所在地の市区、政令指定都市及び特別区では、すべての市区において推進計画の作成意向があり、中核市では、ほぼすべての市において作成意向あり。
・この結果、令和5年度末時点では9割超のマンションが認定制度の対象となる見込み。

2)管理計画認定制度のインセンティブ

〇フラット35及びマンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ
・フラット35:当初5年間、-0.25%/年
・マンション共用部分リフォーム融資:全期間、-0.2%/年

〇マンションすまい・る債における利率上乗せ
・10年満期時の年平均利率(税引前):0.475%→0.525%

〇マンション長寿命化促進税制(固定資産税額の減額)(期間:2023年4月1日から2025年3月31日まで)
・長寿命化に資する大規模修繕工事※が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額を減額する。
・減額割合は、1/6~1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で市町村の条例で定める。
※長寿命化に資する大規模修繕工事:外壁塗装等工事、床防水工事及び屋根防水工事の全ての工事を実施する必要がある。

3)新築マンションを対象とした認定の仕組み(予備認定)

・新築時点から適正な管理がなされるマンションを市場に供給する観点から、法律に基づく管理計画認定制度の施行と併せ、一定の基準を満たす新築マンションを対象とした認定の仕組みを創設。
・令和5年9月末時点の認定実績は928件。
・2022年度の予備認定取得マンション戸数と分譲マンションの供給戸数を比較すると、2022年度に供給されたマンションの約半数が予備認定を取得している。
・2022年4月より開始した予備認定においては、認定を取得したマンションの大半が「段階増額積立方式」を採用している。

〇長期修繕計画に関する予備認定基準
・長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
・長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
・長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない
・計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている

4)管理計画認定制度等のあり方に関する検討の方向性

・管理計画認定制度及び予備認定制度では、長期修繕計画の期間全体での修繕積立金額の平均額に係る基準を定めており、計画期間を通じた増額幅は基準とされていない。
・修繕積立金の安定的な確保に向けて、段階増額積立方式における適切な引き上げ幅に関する基準。
・認定マンションの資産価値向上や、認定マンションが市場で評価されていくための更なる仕組みの検討が必要ではないか。
・修繕積立金の積立計画などは、新築分譲時の初期設定が非常に重要であり、このように新築時に一定の管理水準を確保していくことは、将来の管理不全化の予防に特に有効と考えられるため、新築のマンションの管理水準を確保していく更なる仕組みの検討が必要ではないか。

5)意見

〇認定基準の明確化
・認定基準に定められていない内容で自治体の判断により認定が下りないケースがある。自治体の独自基準に沿っている指摘ならよいが、そうではない場合もある。このような場合の自治体とのやり取りに非常に時間がかかり、事前確認を担当するマンション管理士の負担となっている。また、長期修繕計画に変更が生じるような指摘があった場合、再度総会で決議を取る必要があり、管理組合の負担も大きい。
・特に多いのが、最終年度における修繕積立金の収支が黒字になっていないという指摘である。神奈川県などの一部の自治体ではこの考え方をホームページ等で公開している場合もあるが、公表もされていないにもかかわらず指摘されるケースがある。
・修繕積立金の値上げ以外にも、予定していた工事の延期等、長期修繕計画通りに進まないことは多々ある。認定を行う自治体が長期修繕計画を確定計画という認識で審査してしまうと、認定のハードルが非常に上がり制度の普及を妨げてしまうのではないか。また、認定を取った後に工事の延期等の長期修繕計画の変更があった場合、変更手続きが必要かどうかも具体的に示されていない。変更申請が必要かどうかの判断基準も整理していく必要性があるのではないか。


(2)マンション標準管理規約の見直し

1)デジタル技術の活用

・閲覧対象となる資料が電子データで作成・保管されている場合において、利害関係人から電子メール等を用いた閲覧の要望があれば、電子メール等により提供することができる規定を追加。

2)EV用充電設備の設置推進

・EV用充電設備の導入にあたっては、使用上のルールや費用について明確にしておくことが望ましいことから、使用細則の必要性等を追加。
・EV用充電設備の設置工事の決議要件については、これまで明らかになっていなかったため考え方を追加。
・購入希望者がEV用充電設備に関する情報を把握しやすい環境となっていないため、宅建業者等への情報提供様式にEV充電設備に関する項目を追加。

3)意見

〇滞納管理費等のうち一部が支払われた場合の充当処理の問題
・法的には①民法第 488 条第 1 項の規定に則り、滞納していた区分所有者から支払の際に弁済者側の指定充当として、指定されるか、②区分所有者からの指定がない場合は、民法第 488 条第 2 項の規定に則り管理組合から充当する費用を指定する意思表示を行うことになる。
・実務においては、滞納発生時の管理費から充てたり、使用料については特定継承人に請求できるかが曖昧なため使用料に優先して充てたりしているほか、裁判で滞納管理費の請求を行い和解する場合、管理組合が任意に充当できる条項を入れる場合もある。
・このため、実態に即して、管理規約において充当の合意を定める改正ができないか。
・おそらく民法第 490 条の合意充当の定めが適用されるかと思われる。具体的な改正内容としては、標準管理規約第 60 条第 5 項後段において、「弁済額が管理費、修繕積立金、使用料、違約金及び遅延損害金の滞納債務を消滅させるのに足りないときは、管理組合は任意で弁済の充当の順序を定めることができる」としてはどうか。このような規定を置くことで、管理組合はその時の状況に応じた充当処理をすることができる。

〇違約金としての弁護士費用の請求
・違約金としての弁護士費用を請求することができる規定があるが、実務では違約金としての弁護士費用だけ残されるケースがある。具体的には、違約金も含め管理費の請求をしたが管理費等に充当するよう指定されてしまい違約金が残るケースや、規約違反の是正のために違約金の請求もあわせて提訴した場合に、規約違反のみ是正され違約金を回収できないケースがある。
 前者のケースについては合意充当ができるようになれば解決できるが、後者のケースについては違約金を回収するために強制執行の手続きを行うことになり、更に弁護士費用がかかる。
・違約金を回収するための弁護士費用を、違約金として請求することができるのか、という点が現状の標準管理規約では、請求できるという趣旨だとは思うが、一義的に明らかではない。
・この点を明確化するため、例えば標準管理規約第 67 条第 4 項「違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用」の後ろに(違約金を回収するための弁護士費用及び諸費用も含む)という記載を追加できないか。

〇修繕積立金の変更予定
・マンションの購入希望者が修繕積立金の変更予定を把握しやすい環境となっていないとされているが、区分所有者も全員が修繕積立金の変更予定を把握できている状況ではないため、まずは、区分所有者に知らしめることを第一義とし、購入希望者はその次ではないか。

〇長期修繕計画、修繕積立金値上げの議決
・総会において長期修繕計画を決議する際はどこまでを対象とするのかは、実際の総会でもよく質問される。例えば、今回の値上げには賛成するが、5年後の値上げには反対という場合や、長期修繕計画は認めないが、値上げには賛成という場合もある。今後30年間の値上げまで決議できるのか、もしくは総会開催時点の値上げしか決議できないのか、という点が非常に曖昧である。今後のワーキンググループにおいてご意見を伺いたい。