法制審議会区分所有法制部会の検討内容(13) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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令和4年10月から令和6年1月にかけて法務省の法制審議会区分所有法制部会において、決議要件の緩和、所有者不明の課題等、広範な検討が行われ、見直し要綱がとりまとめられました。部会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令5年11月9日の第13回の検討内容についてです。

■第13回会議(令和5年11月9日開催)
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00221.html

(1)共用部分に係る"修補に代わる損害賠償請求権"と"当然分割説"について(中野幹事)
(2)建替え決議の多数決要件緩和等
(3)共用部分の変更決議の要件の緩和の対象、省エネ改修工事
(4)出席者多数決議



(1)共用部分に係る"修補に代わる損害賠償請求権"と"当然分割説"について(中野幹事)

●マンション共用部分の瑕疵/契約不適合につき、買主側の選択肢
①売主に追完請求権を行使し、現実の修補をさせる。
②売主に修補に代わる損害賠償を請求し、回収金で別業者に補修させる。
③売主から回収した賠償金を(補修に充てず)区分所有者間で分配する。

●総会決議で①が選択された場合、譲渡済の元区分所有者(原始取得者)は、修補に代わる損害賠償を請求(いわば③の単独行使)できるか?
・修補請求権と修補に代わる損害賠償請求権は選択債権であり、両立しえない。かつ、総会決議は反対者も拘束する(東京地判平成28年7月29同旨)。

●"当然分割説"への疑問
・現実の紛争事案では、デベロッパーへの不信感等から、②が選択されている。修補は、瑕疵あるマンションの販売主ではなく、それ以外の信頼できる業者に行わせたいという区分所有者の意向は、社会通念上、十分首肯できるものであり、②を選ぶ権利ないし利益を保護する必要がある。
 ところが、当然分割説を前提にすると、区分所有権が一戸でも譲渡されたマンションでは、十分な損害賠償金が確保できず、事実上、③しか選択の余地がなくなってしまう。
・そもそも転売で区分所有権を失った元区分所有者にも修補請求権が分属し、保有し続けている、という事態を想定すること自体、不自然極まる。
・また、修補請求か修補に代わる損害賠償かは管理組合総会で決定され、反対者も決議に拘束されるにもかかわらず、総会に加わることもできない元区分所有者が単独で損害賠償請求を行使できるとすることは背理ですらある。

●譲渡時の減額
・マンションに瑕疵があるということが分かって、私はもうこんなところにいたくないからというので、出ますといって譲渡した際、譲渡した人が果たしてこのマンションを幾らで売るのか、特に瑕疵が発生していると、瑕疵があるということが分かった段階で幾ら減額されるのかということについてだって、そもそもその段階でははっきりしない。ですので、その損害賠償請求権の価値を見積もって減額するなどということはおよそ現実的ではないし、逆に一旦見積もってしまったけれども、裁判所などとか、ほかのいろいろな関係でその額がずれてしまった場合、では、そのずれたお金は誰がどう負担するのか、お返しをしなければいけないのかどうかみたいな、そういうような関係になるということも非常に不都合な話だと思う。
 ですので、それらを全て後続の譲受人に譲渡し、譲受人の中で瑕疵修補をきちんと求めるのか、瑕疵修補は求めないで損害賠償金でどなたかにきちんと修補をしてもらうのかということを考える、ないしはそこで判断してもらうということの方がより現実的で、かつ紛争解決にも資する、そういうようなものだと思っている。
 もう一つだけ言うと、瑕疵が発生しましたといって売却してしまった原始所有者は、代金減額したとかというのはいろいろな方法があると思うが、その段階でマンション管理組合の方で直してくださいといって修補してもらったとなると、元々損害はもう発生していないはずなのですよね。にもかかわらず、損害が発生したということで減額をするということが発生してしまっているわけです。それもまたおかしな話で、であればその分、損害が発生していないということだったので、新しい譲受人にお金を下さいみたいなことも言うことになるのですかとなると、全くこの法律によって紛争を発生させてしまっているようなことにもなるわけなので、そのようなことがないような取扱いを、きちんとこの段階で規律、制定していただくべきではないかと思っている。

(2)建替え決議の多数決要件緩和等

・所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの対象とすることを前提とある。所有者不明土地問題に対応するために民事基本法制が改正されたが、その前提となる国土交通省の地籍調査においては、最終的に所有者の所在が不明となるケースが全体の0.4%程度にとどまるという結果が示されている。それを考えると、区分所有法においても所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの創設が、多数決要件の緩和にそこまで大きな影響を与えるということはないのではないかと思われる。
 次に、決議の母数から除外する仕組みの利用においても、また、客観的事由の認定においても、多額の調査費用等が発生することになろうかと思う。その場合に、容易に利用できることになるのかという懸念がある。そうすると、提案の多数決要件だと、建替えについて結局はこれまでと同じような状況で5分の4の決議に頼らざるを得ないのではないかと思われる。

(3)共用部分の変更決議の要件の緩和の対象、省エネ改修工事

・建築部門の省エネのための改修というのは、マンションの場合には具体的には、窓は二重にするとか、玄関扉は交換するとか、あるいは躯体の外側に断熱材を張り付けていくといった工事になると思うが、効果がイメージしにくくて管理組合員の積極的賛同が得られにくい傾向にあるのだろうと思う。しかし、実際にやってみると冷暖房の効きが非常によくなったということで、夏は涼しい、冬は暖かくなりましたということで、やってよかったという声が多いのも事実だと聞いていて、省エネについても緩和対象に加えることが適切かなと思う。
・目標の一つにもなるという意味では、政策誘導的な意味もあるので、省エネ対策、特にSDGsの視点から、こういったものを入れたらどうかなと思う。外国の条文を見ていても、こういう項目が入っている国もあるので、決してこういうところに入るのはおかしくないのかなと思っている。

(4)出席者多数決議

・管理会社に協力いただき、最近1年間の総会をされた議案で確認した。1,085の管理組合を対象に管理をされているところで、1年間で議決が幾つあったかといったら3,314議案あった。そのうち特別決議を要する議案が687で、5分の1ぐらい、そのうち否決されたのが19議案であった。もし今回の提案のとおりに変われば可決されたであろうというのが、そのうちの6で、全体の中の0.18になる。このように、数が少ないから無視していいのだという議論ではなくて、その中身を見ると、多くはお金の値上げに関する議案で、修繕積立金が足りないから値上げしたい、一時金を集めたいということで、なかなかここには賛成が得られないということ。こうした問題は、決議をすることも大事だが、決議後にお金を払っていただくという重要性からも議決権行使書や委任状を含めても少ない人数で決めるということは今後の管理組合の運営上、望ましくないと考える。議案が通るような丁寧な説明、理解を促すことが必要。また、この問題は究極、議決権の要件の問題ではなくて、当初から修繕積立金をしっかり立てておかないことが問題かと思う。
 2点目、更に管理組合や管理会社にヒアリングしたところ、皆さん、総会となったらとても大変で、委任状集めや議決権行使書を集め、どのぐらい集められるかというと、普通決議しかないときは集まったまま催促もしない、特別決議があるときは4分の3以上集めなければいけないという意味では8割を目指しておられると言われる。そうすると、アンケートとか説明会をして関心を高めて、特別決議のあるときの総会に向かわれているということだと思うので、これが出席者多数になってしまうと、当然目標値が下がってしまうので、それが当たり前になるということで、だんだんそういうふうになっていって本当にいいのでしょうかということかと思う。私たちが恐れている管理不全マンションを生み出していくことにならないのか。決議はゴールではなくスタートとしたら、どの状態で決議をするかということを十分管理組合の方々は理解していただけているように思う。ですから、易きに流れるところもあるという意味では、現段階ではまだ慎重な考えを持っている。

・まず、出席者の多数決の仕組みを採ったときにどうなるかということです。その場合には、賛成の方の票も価値が上がるが、反対の人の票の価値もまた上がるということは確認しておく必要がある。出席しない人が多い中で反対する人が多いと、決議が成立しにくくなるという関係にある。そのため、こういう仕組みを作ったときには、欠席者が多い状態で放置しておくと、少数の反対により決議が成立しないおそれがあることになるので、決議を成立させたい方々は、皆さん賛成票を投じてください、現場に来られないのであれば、議決権は書面で簡単に行使できますので、書面投票で賛成してくださいと呼びかけることになり、結局、今までと同じように、できるだけ多数の賛成が得られるように努力をしていかれるということになるのではないかと思われる。

・上記について具体的な例では、団地内建物の建替え承認決議の多数決要件の緩和で、承認決議を出席者多数決の規律の対象とするというのがある。これというのは、当該建替えをしようという建物については、区分所有者はもちろん賛成するのだろうけれども、ほかの建物の承認を求められるだけの人たちはどうかというと、自分の棟に関係ないので基本、無関心であると。そうすると、放っておいたらどういう人が出てくるかというと、反対の人ばかりが出てくるのではないか。そうすると、この出席者多数決の規律の対象とするというのは、案外、承認決議を得にくくなる方向にだって場合によっては働くのではないか、というようなことを心配していたが、そのときにどういう話になったかというと、だからこそある意味ではみんな一生懸命説得して回って、集会に出てくれと。最終的にはそれは集会でのどういう投票行動をするかは自由だけれども、賛成を入れてくれというようなことで頑張るのではないか。それが本来やはり在るべき姿というか、各議案について関心のない人もその集会に出てくるようにみんな働き掛けて、そこで決めていく。それでも出てこない人についてはどうかというと、もうそれはしようがないよね、というのがこの案なのだろうと思う。
 ですから、少数で決めるというのは、確かに結果的にそうなることはあるのかもしれないが、少数だから決まらないということもあるわけで、それをてこにして、日常からきちんと参加してくださいねということであり、かつ、周知の必要性というか、それをしていかなければいけないということが書かれていて、これがセットになっているというか、当然の前提になっているというふうには考えている。