区分所有法制研究会の検討内容(7) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

ワンルームマンション7部屋所有するサラリーマン大家。セミリタイアを見ざし、管理組合理事としてのマンション管理の勉強、賃貸の自主管理に向けての勉強を行っています。

令和3年3月から令和4年9月にかけて「区分所有法制研究会」において、法律専門家、都市工学者等のほか、実務・実態的な側面からマンション関係団体、法務省、国土交通省等も参加して、決議要件の緩和、所有者不明の課題等、広範な検討が行われ、報告書がとりまとめられました。検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令和3年11月2日の第7回の検討内容についてです。

■第7回(令和3年11月2日開催)
https://www.kinzai.or.jp/legalization_manshon.html

(1)決議を円滑化するための新たな仕組み
1)相対多数決の仕組みの導入の是非
2)集会に出席した区分所有者の一定割合による決議の仕組み
(2)建替え決議がされた場合の賃借権等の取扱い
1)借地借家法による対応
2)区分所有法制における対応の検討
(3)質疑
1)所在等不明を除外
2)建替え決議がされた場合の賃借権等の取扱い


(1)決議を円滑化するための新たな仕組み

1)相対多数決の仕組みの導入の是非

・所在等不明区分所有者は,一般的に,区分所有建物を利用しておらず,集会における決議については,利害や関心等がないと考えられるため,その決議における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねることとしても,所在等不明区分所有者の合理的な意思に直ちに反することはないとも考えられる。
 また,賛否不明区分所有者は,一般的には,区分所有者の集会における意思決定を他の区分所有者の判断に委ねていると評価することが可能であるとも考えられる。

●民法における取り扱い
・近時,いわゆる所有者不明土地問題を契機として,所在等不明又は賛否不明の共有者がいる場合における共有者間での意思決定の困難さを踏まえ,所在等不明又は賛否不明の共有者がいる場合に,裁判所の関与の下で,これらの共有者を母数から除外し,他の共有者の同意によって意思決定を行うことができることとする相対多数決の仕組みが設けられた(新民法第251条第2項,第252条第2項)。
・新民法においては,賛否が不明である共有者を意思決定から除外する手続は,共有物の管理に関する事項についてのみ設けられており(新民法第252条第2項第2号),共有物の変更行為については設けられていない(新民法第251条第2項参照)。
 これは,共有物の変更行為については,その重大性から全員同意が要求されているが,賛否不明共有者を変更行為の意思決定から排除するとすれば,同意していない賛否不明共有者を同意したのと同様に取り扱うことになり,全員同意を求めた趣旨と齟齬すると考えられたためである。

2)集会に出席した区分所有者の一定割合による決議の仕組み

・近年,建物等の管理について無関心な区分所有者が増加し,区分所有者が集会の決議に参加せず,そのために意思決定が困難になりかねない状況にあることを踏まえれば,団体的な意思決定の仕組みを更に強化し,会社法等の他の団体法制を参考に,集会への出席の概念を導入して,出席区分所有者の一定割合による決議の仕組みを整備することが考えられる。
 これにより,建物等の管理について関心のある区分所有者間で適切な管理を行うことが可能になるとともに,決議事項について消極の意思を有している区分所有者に集会に出席するインセンティブを与え,集会における議論を活性化させる効果を期待することができるとも考えられる。

(2)建替え決議がされた場合の賃借権等の取扱い

1)借地借家法による対応

・借地借家法を改正して,建替え決議の成立をもって正当の事由があるものとみなすべきとの意見が,継続的に見られた。

・しかし,これに対しては,次のような指摘があり,慎重に検討する必要があると考えられる。
①現行の借地借家法の下でも,建物の老朽化や耐震性の不足を理由とした建替えの必要性等については,正当事由の有無を判断するに当たって個々の具体的事例に即して適切に考慮されているものと考えられる。
②借地借家法が私人間の法律関係に一般的に適用される民事基本法であり,同法における正当事由の制度が,借家契約全般について賃貸人及び借家人間の適切な利害調整を図るものであることからすると,その規定は,規範的・抽象的にならざるを得ない。
③その正当事由の判断に当たっては,個別具体的な事情を検討する必要があることから,建替え決議の成立をもって,一律に正当事由があるとすることについては,慎重な検討が必要になると考えられる。
④期間の定めのある建物賃貸借契約については,少なくともその期間の経過が必須となるため,正当事由があるとみなすだけでは問題の解決にならない場合がある。

2)区分所有法制における対応の検討

・借地借家法における正当事由制度を見直すのではなく,区分所有法制において,区分所有建物の建替えの円滑化を図る観点から,建替え決議がされた場合に専有部分について設定された賃借権を消滅させる仕組みについて検討することが考えられる。

(3)質疑

1)所在等不明を除外

・課題としては,所在等不明の定義をやはり明確にしておかなくてはならない。民法のように,ある一定の戸籍調査をしなくちゃいけないとなると,一般の区分所有者が取り寄せられず,専門家をわざわざ使わなくちゃいけない。戸数も多いので,煩雑になってはいけない。
 そこで,こういう形式的要件とは別に,実質的要件として,所在等不明を戸籍調査によって証明できた場合には,それもまた所在等不明として扱えるとして,利用する側が選択できるシステムとすることが一つ考えられる。

・実質的要件に関しては,本当に所在等不明かどうかを審査しなくてはならず,やはり第三者の関与がよい。一番利用しやすい手続としては,非訟事件。対象となる決議にも関連してくるが,裁判所を利用して,それで決議から除外できるという決定が得られた場合には信頼性・安定性のある決定だと思うので,実際に出現するまでの間は,その決議の効果が持続し,それが長期的に使える制度が,所有者不明の管理制度とのバランスとの関係からもよいという意見があった。

・会社法の考え方を一つの参考として取り入れることによって,形式的に処理していくということが選択肢として考えられるなという意見がある。通知や催告が一定期間到達しない場合には所在等不明として扱う。ただ,そうはいっても,5年以上となると長期間待たなくてはならず,建替えでそんなに待てないというケースもあると思う。
→会社法は,5年というところまで参考にするわけではないということか。
→年数まで議論したわけではないが,3年とか4年とか。特定郵便で保存しておいて。形式的な要件として設ける。
→3年,5年で,形式的に,所在等不明という判断がされた場合に,何年か続いて,いよいよ建替え決議というときは,その判断がされている方については,不明者だと扱ってよいという意見が大方の意見なのか。

・第三者の関与については,第三者の関与は基本的に求めないこととすることが適当と考える。理由は,今後現状以上に事例が増加していくことが予想される中,裁判所や行政機関等の第三者の関与を求めるとした場合,処理しきれず時間ばかりかかってしまう恐れがあることによる。また一定の専門家に依頼する場合も,コストがかかりすぎて実際に機能しなくなる恐れもある。もとより管理組合等が勝手に判断してどんどん手続を進めてしまうことにも問題があるので,公告,掲示等の一定の手続は必要と考える。

・改正民法では,過半数の決議について,所在等不明共有者を母数から除くことが認められている。この規定の趣旨は,集会の決議についても,当てはまりそうである。そうであるとすると,一般法・基本法である民法の規定が改正されたことに伴い,区分所有法の規定もこれに合わせて改正するという方向性は,十分に考えられるであろう。

2)建替え決議がされた場合の賃借権等の取扱い

・円滑化法では,要除却認定を受けたもので,かつ補償金制度がある。類似する再開発の制度でも,補償金の制度がついている。そのこととの兼ね合いから,建替え決議をもって終了するというのは考えにくい。補償金とはセットで考える必要があるのではないか

・法律上の問題とは別に,建替えするということで,経済的事情から資金が出せないという高齢者の方々は,今は賃貸市場かなり制限されており,入居が断られるケースが多い。その辺を拡げて,利用しやすくする制度を作っていただく必要がある。

・所有権があって,売渡請求がされると,賃貸借が承継されるのはそうだと思うが,この場合の売渡請求は,壊すために,消滅させるためにやる。法的には正当化されていて,それでいて,消滅させるために取得する人に,承継させて,賃貸借の義務に拘束させるのは,論理として通っているのかなと。もう一つは,保護の問題かもしれないが,居住の利益の保護かもしれないが,区分所有者であればそこは保護されない。当該区分所有者との関係ではなく,決議に賛成した区分所有者との関係で,保護されるというのが,本当によくわからない。

・私もちょっとよく分からないのだが,先ほどおっしゃった売渡し請求は,法形式こそ所有権の移転という形を取っているけれども,実質は所有権消滅請求である。そうすると法的に所有権が消滅するという制度なので,およそ客体が消えてしまうということで,賃借権もむしろ当然消えるというか,そして実質判断としては,その程度の保護だと言わざるを得ないのかもしれない。
 マンションというのはもともとが一つの所有権で所有者が好きなようにできるというわけではなくて,団体的な拘束にもなっているし,この居室がどんなに立派で使えるものであったとしても,全体で老朽化しているということであれば,やはり取り壊して再建ということをせざるを得ないような,そういう客体としての性質がある。

・配偶者居住権もとても疑問に思っている。遺産分割で区分所有権を取得したら,他の区分所有者の多数での決議に拘束される。遺産分割で取得する権利が配偶者居住権にとどまりますとなったら,配偶者居住権が消えるまで,出ていかなくていいというのも,およそバランス取れないんじゃないかと思う。