みなさん、こんにちは ビートママです🐾
Cancer X は、がんと言われても動揺しない社会の実現を目的として設立されました。
今回は、2021年2月に行われた、自治体における啓発活動を考えるセッションの内容をお届けします。
登壇者は、横浜市の副市長城博俊氏、消化器外科医で、日本うんこ学会の会長を務める石井洋介先生、そして緩和ケアクリニックを開業し、早期からの緩和ケアの重要性を訴える横山太郎先生。がんについての啓蒙活動のあり方を、ユニークな視点から話してくださいました。
Cancer X セッションレポート⑨
自治体「医療漫画大賞を実施する横浜市の
がん啓発活動から考える」
なぜマンガ大賞なのか?(城博俊氏)
病気になるまで、医療のことを考えない人は多いと思います。横浜市では、市民にちゃんと医療を知って欲しいと思い、医療広報のあり方を考え直しました。
どうすれば伝えることができるのか。それを考えた時、「伝える」のではなく、「伝わる環境をつくる」ということが大切だと気づきました。無関心層にも届く情報を発信するためには、そうした環境が必要だと気づき、「マンガ」という、より多くの人に届きやすいツールを用いたこの企画にたどりついたのです。
2020年度に第2回を迎えた横浜市の医療マンガ大賞では、まず医師監修によるエピソードがいくつか提供されます。それにもとづいて患者の視点、あるいは医療者(医師、看護師、あるいはそれ以外の医療者)の視点からマンガを描いてもらう仕掛けになっています。
応募作、受賞作などはホームページから見ることができます。ぜひ、目を通していただき、さまざまなケースを、いろんな視点で描いたマンガを、医療を考えるきっかけとして役立てていただきたいと思います。
行動変容へ導く方法は、ひとつではない。(石井洋介先生)
★石井先生は、高校時代に潰瘍性大腸炎を患ってドロップアウト→19歳で大腸を全摘して人工肛門に→その後人工肛門を閉じる手術を受け、おおいに感銘を受ける→偏差値30からの大チャレンジで消化器外科医になりました。『19歳で人工肛門、偏差値30の僕が医師になって考えたこと』という書籍も出版されています。
スマートフォンゲームの「うんコレ」、ご存じですか?舞台は腸内とおぼしき世界。敵を見つけ、早期に撃破するゲームです。メディウムと呼ばれる巫女たちは、ある種の細菌を身にまとって変身することで敵と闘います。多くのゲームと同じように課金することでアイテムが手に入るだけではなく、このゲームでは、毎日自分のうんこの状態を報告することで闘いに有利な菌を増やすこともできるのです。つまり、エンターテインメントに医療を溶け込ませた試み、とも言えると思います。
たとえば、糖尿病の患者さんに「身体にいいから歩いてください」とアプローチしても、面倒だからと歩かないかもしれません。しかしその人が、ポケモンGOがしたければたくさん歩く。結果的にたくさん歩いてくれるなら、どちらでも同じ効果を生むことができる、という例です。これを「行動変容へと導く方法はひとつではない」ととらえます。
無関心期を関心期にもっていき、準備期を経て実行期にもっていくにはどうしたらいいか。「うんコレ」ゲームでは、新しいキャラクターをゲットするためには課金してもいいし、自分のうんこの状態をレポートすることでもゲットできる仕掛けになっています。ゲームの構造を利用した試み(ゲーミフィケーション)には、期間的な限界はある程度あります。つまり、あきてしまう、ということはある。それでも実行期から維持期へとつなぐ助けにはなるのではないでしょうか。
患者さんに寄り添う、伴走者を育てたい。(横山太郎先生)
アメリカ・アラバマ州には、レイナビゲーター制度、というものがあります。これは医療者だけでなく、一般の市民も参加して、がん患者とともに進む、つまり伴走するというシステムです。
まずはがんの専門家が、市民にがんという病気について教えてくれ、さらに患者との関わり方も指導してくれます。このトレーニングを修了した市民が、実際にがん患者に付き添ってケアをします。たとえば、検査の日は前もって待ち合わせ場所と時間を決め、そこで落ち合ってから一緒に病院へ行く。言ってみれば「おせっかいをする人を、一対一で患者につける」ということ。これだけのことですが、予定を忘れて行かなかったり、覚えているけれども気乗りがしなくてなんとなく行かなかったり、というようなことが防げるようになります。
このレイナビゲーター制度は、市民のボランティアによって支えられているものではありません。日本円にして300万円という年収が保証された「仕事」なのです。200名ほどが従事しているので、年間6億円の費用がかかる事業、ということになります。
しかしこのレイナビゲーター制度のおかげで、緊急入院が減り、患者の満足度も上がりました。おかげで医療費は年間20億円節減できた、というデータがあります。こうした工夫を、日本にも導入することはできないか、模索中です。
治療中の患者が、先生が言うから「これでいいか‥‥」と治療に臨むのではなく、自らの意志で「これでいいのだ!この治療法を選ぼう!」と思えるようになれたら。その時、治療の中心は医師ではなく患者本人ということになるのです。この意思決定支援についても、あわせて考えていきたいと思っています。
(2018年の記事)
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無関心層に、たとえばがんのことを「自分ごと」としてとらえてもらうためには、どんな方策があるでしょうか。さまざまな立場の人が、いろいろな方法を模索していることがわかりました。医療広報、啓発活動に工夫をこらしてアプローチすることで、無関心層にも行動変容をもたらせる社会ができたら。そんな希望を感じるセッションでした。
では次回もお楽しみに🐾🐾
病気になって、山あり谷あり。
入院が長引けば、いつも食べられるはずのラーメンが、たまらなくいとおしくなります
今までだったら、ありふれた日常
がん患者になると
ありふれてなどいない
日常がかけがえのないものだとわかる
そんなことをみんな言わなくてもわかる仲間たちの集まりです。