訃報 ~希望と絶望 | NPO法人 肺がん患者の会 ワンステップ

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2024年4月、10年目突入。肺がん患者・家族の「いきる勇気」につながればいいなと思っています。

みなさん こんにちは
 
 
 
今日は、突然入った訃報のことを書きたい。
偶然なのか、この治験にも関わりの深い人だ。
ここではAさんとする。
 
 
 
Aさんと私が出会ったのは、ワンステップの立ち上げ当時のこと。EGFR陽性の患者さんで大企業にお勤めのAさん。その顔の広さと、もともと社交的な性格からか、ワンステップの活動を社会にもっとしらせよう。困っている人、不安な中にいる人たちはたくさんいる。隠れていて、見えないだけ。そんな人たちをもっともっと元気づけたい。何が自分にできるだろう・・・居場所作りならできるかな・・・そんなことをよく話してくれる人だった。
 
 
 
本音も少し話してくれた。
「正直言うとね、仕事がつまらなくなってしまって・・・」
 
 
 
会社の配慮で、異動になったそう。がん患者でもできる負担の軽い部署に移ったそうだ。本人としては不服。でもしかたない。今までの人生とこれからの人生を考えているように見えた。なんだか偉そうに書いているが、私自身も同じだ。病気前の自分と、現在の自分を比べてしまい、複雑な気持ちになる。本当のところ、Aさんがどう思っていたのかはわからないが、ちらりちらりと仕事の話が出てきたのは覚えている。
 
 
 
最初のEGFRの薬は、1年ほどで効果がなくなった。
 
 
 
効果がなくなりと、その耐性の種類を検査で調べるのだが、半分ほどの人にT790M変異が現れる。その耐性変異があるとタグリッソは使用可能。効果があることが証明されている。
しかし、T790M変異がなしの場合、効果はわかっておらず、タグリッソは使えない。通常の抗がん剤となっていく。
 
 
 
AさんにT790M変異はなかった。
 
 
 
そのあとはアリムタ+プラチナへ。
 
 
 
こちらの効果は絶大だった。
最初に使ったEGFRの薬よりも長く効く。
 
 
 
「ほぼ消えているんです。俺はずっと生きていく気がする。悪くなる気がしないんですよ。」
 
 
 
笑顔でそういっていた。
 
 
 
やがて、その効果にかげりが見えてくる。
 
 
 
再度、耐性の種類を調べてみる。
T790M耐性変異はなし。
タグリッソは使えない。
 
 
 
次の薬へ移っていった。
 
 
 
そんな時、タグリッソの適応拡大が起こる。
現在、この適応拡大により、EGFR陽性の患者に対して、一次治療からタグリッソは使用可能であり、標準治療のど真ん中となっている。副作用は軽く、薬の効いている期間は18か月(PFS)。全生存期間が36か月(OS)。とてもいい。
 
 
 
ただ、残念なことに、T790M耐性変異がない方には使えないルールはそのまま残ることになった。
 
 
 
一次治療から使えるようになったのは、2018年8月以降の話。それまで病気にかかったEGFR陽性の患者さんは、2次治療でしかタグリッソを使用できない。しかも、「T790M耐性変異があれば」という条件付き。
 
 
 
なんで使えないんだろう。。。。
そんな空気感が患者を、いや医療者も含め、肺がんに関わる人すべてに漂っていると思う。
 
 
 
 
効果があるという報告はある。
・20%ほどに奏功する
・脳転移には効果があるだろう
というもの。
 
 
 
患者としては、効果がある場合があるのなら使いたい。しかも、効果の持続する人もいると聞く。
効果があるかもしれないのに、使えないのはおかしいのではないか・・・
でも、保険適応のハードルを越えるほどの科学的根拠ではないようだ。
シンプルな一つの結論が導き出される。
 
 
 
 
科学的根拠がないから使えない。
ならばその科学的根拠を作ればいい。
 
 
 
 
 
こうやって、私たちは、主に2018年8月以前に肺がんにかかったEGFRの患者さん。最初の薬が効かなくて、T790M変異が現れない人に対して、第三世代EGFR-TKIの治験をすることを決意した。
 
 
 
 
この決意に、Aさんも喜んでくれるだろう。そう思っていた。
 
 
 
でもAさんは、私たちと距離を置くことになる。
 
 
 
 
なんでだろう。
Aさん。そしてAさんのように薬が使えなくて苦しんでいる人は、この日本にたくさんいる。その人たちのための治験の計画なのに・・・・不思議だった。
 
 
 
 
ばかげている、と思ったのかもしれない。
患者が治験を計画することなど、今までないし、これからもあるとは思えない。
無謀なことに自分の時間を使うのはやめたい、そう思ったのだろうか・・・・
 
 
 
 
そういえば、この計画の話だけ聞きにきて、かかわりを持たないと判断する人もいた。
その人の意見はこうだ。
ゴールまでの道筋が見えない。
どうゴールにたどり着くか示してくれないと、判断できない
というもの。とても真っ当だと思う。
この当時はHPに記載されているような、プロセスが一つもなかった。
ただ、やるぞ!と高ぶっているだけ。
もちろんゴールは示したいし、そのプロセスも明示したい。
でも、わからないものはわからない。
そして、わかないままやることに、私はそれほどの抵抗を感じない。
価値観が異なるのだろう。
 
 
 
 
Aさんもそういう方だったのかもしれない
 
 
 
 
もう一つ
希望を持ちたくない、ということもあるかもしれない。
 
 
希望を持った途端、絶望が生まれる。
希望を持たなければ絶望しない。
そういうことだったのではないか。
 
 
そういえば、Aさんは会うたびに、あの治験のことはどうなったんですか?と聞いてきた。
そのくらいの位置がいいのかもしれない。
 
 
 
 
 
そして、Aさんの訃報を最近知った。
結局のところ、Aさんがどう思っていたのかはわからないままだ。
 
 
 
 
この文章を書く前には
最後まで書いていけば、おのずと寄付してね!という結論におちつくと思っていた。
だけど今はそういう気持ちになっていない。
それでもいいかと思う。
結論のないこのような話に付き合ってくださり、ありがとうございます。
 
 
 
 
 
 
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