みなさん こんにちは
肺がん患者の会 ワンステップ!がお送りする企画モノ。
ザ・インタビュー「万里一空」と題して、患者さんの体験を聞いていくコーナーです。万里一空とは…遠く離れたところにいても空は一つで、つながっていること意味しています。
このコーナーではさまざまな肺がん患者さんが登場し、その貴重な経験をお伝えしていきますよ。
今回は「ステージⅣから完治!生涯のパートナーと出会い、ブックカフェをオープン!? 盛りだくさんすぎる肺がん体験者」 田中 勇さん(56)のパート2です
5年たった後、主治医から肺がん患者会をつくらないかと言われました。今回は奥様のインタビューも載っております!こうご期待!
—これまた新たな展開に!
そう。「五十肩になって病院に行った」のも、つながりだったような気がします。
ネット検索で長谷川さんの「ワンステップ」や神戸の古川さんが立ち上げた「肺ゆう会」を見つけて、コンタクトを取りました。「それなら肺癌学会においでよ」と誘われて。行ってみたらたくさんの患者会があり、いろいろと勉強させてもらいました。
そのころから、ブックカフェも作ろうと考えていました。図書館のシステムなど、本に関する仕事をしていたので、僕らしいかなと。
—場所は岡山大学病院の目の前ですよね。
この物件は、病院のがんサロンに参加した後、この辺りを歩いていたらたまたま見つけました。これも呼ばれたんでしょうね(笑)。
ブックカフェの名前は「栞日(しおりび)」。今年8月にオープンしました。
患者さんはみんな、ドキドキしながら病院に行くじゃないですか。「何を言われるだろう」と思いながら。そこで「大丈夫でした」と言われてホッとする、そんな時のご褒美としてコーヒーでもお酒でも飲んでもらえたらいいと思います。
僕もがんの体験者だし、「同じ病気をした」というだけでも仲間意識というか、なんとなく通じるものを感じてもらえるような。そんな“街ナカがんサロン”のようにしていきたいですね。
●「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」人ってやっぱり、出会いとつながり
—邦子さんと会われたのもそのころですか?
彼女とは高校が一緒で、当時お付き合いをしていたんです。住む場所が離ればなれになり、自然と疎遠になっていました。それがフェイスブックをきっかけにつながりました。昨年(2016)の11月です。
邦子さん:フェイスブックの写真を見ても、あまりにもおじさんになっていて最初は分からなかったんです(笑)。写真をいくつか見ていたら面影があるものが出てきて「あ、この人だ!」となりました。それが治療を終えて間も無くの写真で。
—やつれていた時の写真に面影があったと(笑)。
邦子さん:そう。すぐにメッセージを送ったら、「大病をして人生観が変わったから、次のステージの準備をしているんだ」とのことでした。
まさかそんなに大変な思いをしていたとは思わなくて「ふ〜ん、そうなんだ。生きているうちにもう一度会いたいね」なんて気楽に言ってしまって。今考えると、すごく失礼なことを言っていましたよね(笑)。
—まだ再会から1年も経っていませんよね。
新潟にいた彼女を、こちら(岡山)までひっぱってきてしまいました(笑)。ブックカフェも相談しながら一緒に始めました。8月にオープンしたので、再会からまだ9ヶ月の時ですね。
—ほかにも人のつながりを感じることはありましたか。
岡山で治療をすると決めた時は、職場の部下が医師を紹介してくれました。その医師は小さな病院の内科医だったため、治療自体は大学病院ですることになったんです。すると、「医療関係者は専門用語しか使わないから通訳する」と言って、本当に一緒に診察室に入ってくれました。
ステージⅣだと言われた2010年9月29日、大学病院の病棟医と、その医師と、僕の3人でお話をしました。いつから治療を始めるかという話になった時「じゃあ、切りのいいところで10月1日から」と言ったら、彼は「1日でも早く治療を始めた方がいいのが分かるやろ。明日から始めろ。(病棟医の)先生、それでいいですよね?」って言ったりして(笑)。考える余地を与えずにポンポンと間に入ってくれました。
—普通、医師がついてきてくれたりしないですよね。
そうですよね。何かシンパシー感じちゃったのかな(笑)。
—ご自信でも、医療者とのやりとりで気を付けていたことはありますか。
医師って、コミュニケーションが下手な人が多いような気がします。自分の体のことだから、「どうしたらこの人の知恵を引き出せるだろう」と考えていました。すごく質問をしましたし、その都度メモをとりまくって、最終的にはノートが4〜5冊くらいになりました。
—それにしても、ステージⅣといえば深刻な事態です。それでも治ると思えたきっかけになった人はいましたか。
病院や姉が力になってくれたほか、職場の仲間が毎週月曜日にメールをくれました。しかも「病気どう?」というのではなくて、まるで報告書のように会社の状況を教えてくれたんです。
それが、「あなたはここに帰ってくる人だから」と言ってくれているように思えました。毎週のジョギングでも、途中にある神社で必ず「田中さんが帰ってこられるように」と願ってくれていたそうです。
病棟医とも“縁”を感じました。彼は文京区の病院から来たばかりの人でした。そのころ僕のいた会社から、文京区の図書館にシステムを導入することになっていたんです。「先生のいた文京区の図書館だから、その稼働に間に合うように治療を終わらせてくださいね」なんて話をしたりして。
全てが「帰ってこい、帰ってこい」と言ってくれているようで。「ああ、帰れるな」という気がしました。ある意味、周りに恵まれていると思います。
—いろいろな出会いや出来事がいい方向へとつながっているようですね。
病気についても同様です。会社勤めのころは、とてつもなく仕事をしていました。毎日終電で帰るような忙しさです。それが、がんが見つかったことによってストップしました。
「これ以上、今の仕事の仕方をしていたら死ぬぞ」とでも言うように、本当にヤバイ状態になるのを病気が止めてくれたんじゃないかと思います。
—かなりスパルタな止め方(笑)。でも、病気が命を助けてくれたとも言えますね。
今後はどんなことをしていきたいですか。
ひとつは、栞日を会場に、イベントをしたいです。ドクターと患者と医学生が一緒に参加するイベントです。このカフェが、人と人がつながる場になればと思っています。
また、各地にある拠点病院の前に、患者さんが仲間と一緒に働けるようなカフェなり食堂なりをオープンさせたいですね。
例えば障害者のための就労支援があるように、「がん患者のための就労支援」があってもいいなと思うんです。「私は料理ができる」「私は経理ができる」など、フルタイムでなくていいから働いて、お金をもらう喜びがあるとか。「あそこに行けば、仲間と一緒に働ける」とか、「そのためによくなりたい」とか思ってもらえたらいいなと思います。
そういったものを全国展開できたらいいですね。それにはまずこのブックカフェを成功させないとダメですけど(笑)。
それから、岡山の患者会事務局をここに置こうと思っています。会の名前は「ライオンハート(予定)」。英語では『闘う心が強い人』という意味があります。
僕は、がんを“気持ちで”治したと思っています。やっぱり治療って、気持ちが大事じゃないですか。みなさんにも強い思いで治療にあたってほしいと思ってこの名前を考えました。
「ライオンハート岡山」、「ライオンハート香川」とか、地域ごとにライオンハートを作っていけたらいいなと思います。
—ちなみに、ブックカフェの「栞日(しおりび)」の由来は。
“ブック”カフェだから「栞(しおり)」とつけたかったんですが、近所にすでにその名前のお店があったんです。それに「昔の女の名前か」とか言われそうだし(笑)。
しおりって、本に挟まって止まっているものですよね。そこに「日」という時間軸をつけたいと思いました。カフェでゆっくりとした時間を過ごしてもらいたいな、というイメージ。それが公式の話です(笑)。
—田中さんが大切にしている言葉を教えてください。
「日々是好日(にちにちこれこうじつ)」
「一期一会(いちごいちえ)」
人ってやっぱり、出会いとつながりしかない。自分だけではできないし、つながらなければここまで来られませんでしたから。
栞日では、お客さん全員に声をかけています。お帰りになる際には「いってらっしゃい」と言うんですよ。
—「行ってらっしゃい」と言われると、「帰って来ていい場所なんだ」という気がしますね。
最後に、同じ病気の方に一言お願いします。
「よくなる、よくなる、絶対良くなる!!」
最後にビックリマークを2つ付けるのが僕の著作権です。違うか(笑)。
—栞日は、岡山大学病院の目の前の通りにあります。田中さんに「行ってらっしゃい」と言われてみたい方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。田中さん、素敵なお話をありがとうございました!
●Info:
・田中さんのブログ「オヤジの休日 2010年進展型肺小細胞癌ステージ4からの今」
・ブックカフェ栞日
岡山県岡山市北区鹿田町1-6-17
(写真・文:木口マリ)
▼10月29日NEW
もっと知ってほしい肺がんのこと 2017 in 青森 〜 進歩する肺がん薬物療法を正しく理解する~
総合司会:田坂 定智(弘前大学医学部附属病院 呼吸器内科)
14:00-14:05 開会挨拶 田坂 定智
14:05-14:25 講演① 肺がんの免疫治療について
中川 英之(国立弘前病院 呼吸器内科)
14:25-14:45 講演② 肺がんの分子標的薬治療について
當麻 景章(弘前大学医学部附属病院 呼吸器内科)
14:45-15:05 講演③ 肺がんの化学療法・指示療法について
長谷川 幸裕(青森県中央病院 呼吸器内科)
地元の先生方が皆さんへのために駆けつけてくれますよ~。ぜひ。
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