★つづき↓
★学会に患者が参加して、何しているの?
学会に患者が参加する・・・なんだかピンときません。なにを目的に患者が学会に参加しているのでしょうか?
実はそれを解消するのが、「アドボカシー」というキーワードです。
アドボカシーってそもそも何?というところでリンクしたNCIアメリカ国立癌研究所・キャンサーブレティン2011年6月14日号に登場する患者さんは、学会に参加する目的をこんな風に語っています。
<知識をコミュニティに持って帰る>
「ここに来て研究を学ぶことができます。そのあとで、研究を理解したいと望む患者さんやサバイバーのみなさんを実際に助けることができるのです」と語った。
その情報が、「患者さんやサバイバーが医師と一緒に知識に基づく治療決定をするときに道しるべになる」かもしれない、とLeightenさんは言う。
フムフム。
学会に参加する目的は、「最新情報手に入れて、その情報を広く伝えていくことで、患者の治療決定に生かす。」ということのようです。
これはよくわかります。
しかーし!
どうも上記だけではないようですよ。世界肺癌学会で目にした驚きを山岡さんは語ってくれます。
★山岡さんの驚き その3
通常、学会のプログラムは、治験の結果などが発表されていると思います。しかし、世界肺癌学会ではアドボカシー専門の会場が用意されて、期間中ずっとアドボカシーをやっていたそうです。
アドボカシーの発表・・・どんな内容なんだろう?
ちょっとちょっと、今から書くこと、かなりびっくりするよ。山岡さんは、患者がじゃんじゃん医療に食い込んでアドボカシー活動をしている例を紹介してくれました。
★びっくりアドボカシー活動3つ
① コミュニティーホスピタルセンター構想
アメリカの病院の地域差は大きい。きちんとした専門総合病院は50くらいなのだとか。じつは肺がん患者の80%は地域の病院に通院している。その病院での治療のレベルアップが必要だそうです。そこをあげていく作業を患者が医療者と組んで行っている。先ほど紹介したボニーさんという方。志ある医師と協力し、レベルアップさせたい病院に、専門のエリートチームを派遣してネットワーク化させるそう。パイロット版である病院で活動した結果、その病院がレベルアップしたそうです。
なに???
言っていることがよく理解できなくないですか?病院の医療レベルを上げるという点は理解できます。しかし、患者が行うってどういうことなんですかね?ちょっと想像つきません。でも、こういうことが実際にアメリカで行われているということです。
② 臨床試験の設計段階から患者が参画する
扁平上皮がんで、個別の遺伝子異常に基づく治療が始まっており、その試験の設計段階から患者が入っているようです。LUNG-MAPというプロジェクト。
臨床試験に人体実験のイメージを持つ方もいますが、その最初から患者がかかわっているということで、患者の安心感にもつながるのかもしれませんね。変な臨床試験がチェックされているのかもしれません。
でも「患者が臨床試験をチェックする」
そんなことできるのか?
実際の設計段階の話ではありませんが、NCIアメリカ国立癌研究所・キャンサーブレティン2011年6月14日号にはこんな文章が。
乳癌アドボケイトであるAdvancedBC.org(進行乳癌の団体)のMusa Mayerさんは、卵巣癌の臨床試験で、「高リスク」と称された女性たちはあらかじめ患者群として組み込まれていたかどうかといぶかった。その試験結果は抗癌剤アバスチン治療によって高リスク患者の生存期間が延びることを示唆していた。しかし、事前にこの特定の患者群解析が計画に盛り込まれていなかったとしたら、米国食品医薬品局(FDA)による規制判断に極めて大きな影響を与える可能性があるのではないかと注意を促した。
スローンケタリング記念がんセンターのDr.Andrew Seidman氏は明らかに感心していた。
「ウォールストリート・ジャーナルやCNN、ブルームバーグなんかの記者よりいい質問をされますね」とも。
そして・・・別の意味も含んでいるようです。
患者が臨床試験の設計段階に食い込むと、臨床試験自体があっという間に終わる、ということも現実に起こったそうです。患者団体がその試験の意味を広めるため、臨床試験に人が集まったそうです。これを日本にあてはめたとしたら、問題になっているドラッグラグ解消にもつながるのかもしれませんね。
③ 学会で患者はすべての情報にアクセスできる
学会にいかれた経験のある方はご存知のとおり、日本では、患者が入れる場所と入れない場所があります。世界肺癌学会では、オールフリーだそうです。患者が見たければすべてのプログラムに参加できる状態がありました。
山岡さんは、患者に情報を出さない部分があるとすれば、それは患者を子ども扱いしているかもしれないとも感じました。
山岡さんからアドボカシー活動3つ紹介したわけですが、おしゃべり会に参加してくれた岐阜市民病院の澤先生もいろいろな事例を教えてくれました。澤先生は、アドボカシーに対して日本で非常に詳しい先生です。
▼アメリカのアドボカシー事例 その1
肺がん患者がよりよい医療をもとめて、アポなしでオバマ大統領に会いに行った。100人規模。もちろん会えないけど、そんな活動した。
▼アメリカのアドボカシー事例 その2
患者が「こんな治験をやってください」とお願いする組織があります。名前は忘れました。でもその組織は、お願いするだけじゃなくて、ファンドでお金集めるんだって。1年10億円くらいで、もう100億円以上あつまっている。実際に患者が治験を動かしている、という実例です。
この行動力。
そしてこんなことが実現してしまうという社会。
日本人と根本が異なるのかしら?なんなんでしょうかね。
さて、
山岡さんの講演も終盤に入りました。
とても感銘を受けた言葉があったそうです。
ご紹介します。
ePatient(イーペイシェント)
ePatientとは
「Equipped(ストレスなくインターネットを使える)」
「Enabled(患者力をもつ)」
「Empowered(周囲に啓発して分身をつくる)」
「Engaged(周囲との絆を大切にする)」
「Equal Partnaership in the care(医療者も含め、関係するすべてのステークホルダーと対等な立場で治療を進める、そのためにはリテラシー(知識や理解力)が求められる)」
です。
山岡さんは、患者が目指すべきはこの「ePatient」と感じたそうです。
そんなこんなで山岡さんの講演は終了です。
みなさんはどう感じましたか?
まだ続きますよ。
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