彼はなぜか友人二人とともに自衛隊と戦っており、丸腰で作戦指揮をとっていました。
もちろん、というのも失礼ですが、彼の作戦はあっさり看破され、目を点にしながら降参のポーズを取っているのがとても可愛かったです。
『鬱金の暁闇1』で彼を初めて目にしたのは、文章ではなくイラストからでした。
章タイトルの下にラフに描かれた浮城及び紅蓮姫奪還チームを見て、特に左下の男性が気になりました。思えば、その時から既に好意はあったのでしょう。
「私はきっと彼を好きになる」。その予感は当たっていました。
本文を読んで、スラヴィへの塩対応や、適度な口の悪さなどから、最初はもっと強気なキャラだと思っていたのですが、読み進めるにつれ、「随分と自尊心の低い男性だな」という印象に変わっていきました。
ターラに殴られても怒りもせず、最後まで人間を苦しめた元凶に対しても、恨み言ではなく彼女のためを思っての苦言に止め、しかもそれを一切恩に着せることはなかったのには驚かされました。
彼は常に他人を気遣って生きており、一度たりとも私欲らしきものを覗かせたことはありませんでした。
努力はしないが私のことを好きになって欲しい、もしくは人からの好意を当然の事として受け止めている人物が多い中、彼のキャラ性は善と呼ぶにはあまりにも儚く、報われないものでした。
ポニーテールにしたり刺青を彫ったりと陽キャっぽく振る舞っていますが、実は根っこの部分はそれほど明るくなさそうなところにも惹かれました。
彼がなぜあそこまで自己犠牲的な精神を抱くようになったのか、その半生が作中で語られることがなかったのは惜しまれます。
もう二度と会うことは出来なくても、マイダードがいつも幸せであるように願っています。
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