ノボの生き活きトーク 686号: 小沢征爾と江戸京子への感慨(その5) | 生き活きノボのブログ

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 小沢指揮のMCOのリハーサルは、緊張感というより、自由な雰囲気に満ちていました。水戸芸術館での演奏のため、団員には諸外国から駆けつけた人が多く、勿論小沢もその一人です。演奏会の曲目が決まれば、団員は事前に譜読みして、演奏できる状態にあるのは当然でしょう。演奏会前のリハーサルでは、まず一度曲の全体を通して、それから細部の検討に入りますが、シロウトの小生が見ていても、小沢の指示はなるほど、と思えました。パート間の音のバランス、クレッシェンドやデクレッシェンドの付け方、弱音の響き、繊細な歌い回しなど、次々に指示して音を出し、直すのです。団員は仲間の位置付けですからざっくばらんに話しており、高度なレベルを楽しんでやっています。時には、小沢はユーモラスな態度と表情をして、大指揮者の風貌など感じさせず、愉快な人間であることを屈託もなく見せます。ノボは、リハーサルを見て、その日に本番を聴いたことが何度もありますが、小沢の音楽が裏表なく、リハーサルでの響きをさらに越えて、完璧に響いていると感じましたね。

 さて、水戸芸術館の建設に合わせて、ノボは二人の娘を授かりました。二人の娘にはピアノを習わせたいというのがノボ夫婦の希望でした。ところで、水戸には桐朋学園の子供のための音楽教室があることを、水戸市在住のF先輩家族から教えていただきました。そして、何とF先輩のお嬢さんがそこに通っており、江戸京子からも教えを受けていることを知り、驚きました。小沢との関連で江戸京子の名前を知っており、あの江戸京子からピアノを習っているとは。長女が4歳になって、その音楽教室に入れました。K先生についてピアノを習ったのですが、ピアノ科の主任教授は江戸京子(以下、江戸先生)であり、K先生の計らいで、時折レッスンを受けることになりました。その時は、勿論親もレッスン室に入りました。江戸先生は、キリリと筋の通った風貌で、若々しい口調と身のこなしです。しかし、レッスンとなれば、4歳の子供でも子供扱いではなく、一人前の人間として遠慮のない口調でレッスンされました。ノボは、これが一流のピアニストの姿かと、妙に感心しました。レッスンが終わると、ノボ夫婦にも丁寧に会釈されます。次女がレッスンを受けた時、江戸先生は次女の手を取って、手の形がいいわね、と言われたのが印象に残っています。

 娘達の年齢が上がっていくと、江戸先生から受けるレッスンが最後になることがあります。その時は、ノボの車で水戸駅までお送りしました。後ろの座席では、江戸先生とK先生がお喋りをされ、ノボは運転しながら興味を持って聞いていましたね。K先生はドイツ留学帰りのピアニストであり、娘たちは、江戸先生とK先生に師事したことになります。江戸先生の訃報に接した時、江戸先生の元気な姿と車で水戸駅まで送ったことが、ついこの前の出来事のように思えましたね。まあ、小沢と江戸先生を思い出しながら、一杯やりますか。 おわり。 (令和6年2月26日)